第26話 シルギ・シダン
少女が鼻歌混じりに廊下を歩いている
「そんなに上機嫌でどこへ行くんだい??」
中年男性が声をかける
「あの子が来てるんでしょ??挨拶でもしようかと思って」
「本当に挨拶だけかい??」
「あら、信用がないのね。さすがの私も眠っているモノを殺したりしないわよ」
少女の黄金色の瞳が男性をとらえる
「君と彼女はワケありだろう??」
「そうね…でも今のあの子覚えてないかもしれないんでしょ??」
「あくまで噂だけどね。面倒な事をしてくれたものだ」
ヤレヤレと手をあげている
『ん…』
ぼんやりとする頭と視界
必死に体を動かそうとする
"ルビー!!!!"
『!?そう…だ』
意識が無くなる前にイキに呼ばれた事を思い出す
『った』
頭がガンガンとする
フッと自分の腕を見ると腕輪が付いている
『これ…は??』
触れようとすると
「あら、気が付いたの??」
少女がこちらへ向かってくる
『!?貴方は…イキの』
「この体はね……でも貴方は私を知っているはずよ」
『……知らない…ここは一体どこなの!?みんなはどこ!?』
捕まったわりには拘束はされておらず
唯一、付けられているのは腕輪のみ
「あら、ホントに忘れちゃっているみたいね」
『忘れている…??』
その言葉に反応する
「貴方、自分のことどのくらい前まで覚えているの??」
『どれくらいって…貴方には関係ないでしょ!?』
少し大きな声が出る
「ムキになっちゃって…ホントはあまり分からないくせに」
『!?』
図星だった
ルビカーフィンの記憶はユウと出会う少し前からしかないのだ
自分がどんな子供だったのか、コウといつ出会ったのか
ハッキリと記憶にない
『記憶なんて…曖昧なモノに過ぎない』
「そうね。貴方の記憶は都合よく出来ている」
『どう言うこと…??』
自分の事を自分以上に知っているかの口ぶり
「最初から言っているでしょ??貴方は私を知っている…姿形じゃなくて、私を知っているのよ」
少女はグイっとルビカーフィンに近付く
『貴方を…知っている…??』
「そう。私を知っているわ」
ズキッ
『!?』
急に痛む頭
まるで何かを思い出す事を拒んでいるように
『やめて!!!!』
頭を抱えて叫ぶ
「どうして??私は貴方の事を思ってやっているのに」
少女の言葉を聞くと痛みが増す
頭の中に白いモヤが出てくる
それがとても怖く感じ
『お願い…や…めて』
弱々しく言うと
頭に誰かが触れる
『!?』
「あまりいじめないで欲しいな」
男性の声が聞こえたと思ったら
白いモヤが消え、痛みが無くなる
「あら、別に意地悪するつもりは無かったわよ??」
「彼女は目覚めたばかりだ…少し休ませてあげて。分かったね??」
そう言う男性の目はとても鋭く
「わ、分かったわよ」
と少女は何処かへ行ってしまった
『…貴方は??』
「この姿で会うのは初めましてかな」
『この姿??』
目の前の男性をマジマジと見てしまう
「今の君には私との記憶はないみたいだね」
まただ
また記憶が無いと言われた
「まぁこんな姿になってしまったからね。
分からなくとも仕方ないか」
残念そうにする男性
『貴方は…一体』
「あぁ。自己紹介がまだだったね、私は
シルギ・シダン」
『シルギ…シダン…!?』
ズキッ
その言葉を口にしたのと同時に襲ってくる頭痛
(私はこの人を…知っている…??)
何故だか以前に会っているような気がした
「まぁあれだ…アルケミストをしている者だよ」
男性はニッコリと笑う
『!?アルケミスト!?』
ルビカーフィンはベッドから飛び出て
男性と距離を取る
そして
(コウ…私はここにいる)
そう呼びかけるも
「無駄だよ」
男性もとい、シルギが言う
「今、君の力は封じさせてもらっている。いくら彼らに呼びかけても伝わらないよ」
シルギの言うとおり
誰1人として反応をしなかった所か
どこに居るかさえも感知出来ない
『この腕輪か!!!!』
乱暴に言い放つ
「メディウムの力を使われるとアルケミストの私でも少々不利だからね」
『貴方の目的はなに!?メディウムの力なら私を殺して奪っていたはず』
「私はメディウムの力になんてこれっぽっちも興味ないよ??私は君に会いたかったんだ」
『私に??』
メディウムの力を自分のモノにしようとする者は山ほどいる
アルケミストがもっと力を手に入れるために
メディウムを殺すのはよくある話しだった
だが、目の前の男性はメディウムの力よりも自分に興味があると言ってきた
ルビカーフィンは混乱する
「悪いようにはしないよ。現に先ほど彼女から救ったのは私だ……ただ、君が大人しくしていたらの話しだけど」
シルギはルビカーフィンを見つめる
『あいにく大人しくジッとしているのは性に合わないの!!』
そう言い走り出す
「そうか…そうだったね。君はそうだ」
パチン
シルギが指を鳴らすと同時に腕輪から電流が走る
『!?あ"あ"あ"あ"あ"』
ルビカーフィンはヘタリ込んでしまう
体全体が痺れ、立ち上がれない程の電流だった
「少し強くし過ぎてしまったかな??
メディウムは強いからね。でも悪い事をしてしまった」
そう言いながら頭を撫でてくる
『触らないで』
「……貴方には全てを思い出す義務がある」
シルギはルビカーフィンの額にそっと触れる
『!?』
ルビカーフィンは何かに吸い込まれるように意識を手放したのだった。
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