第25話 2人の少女

「あらあら、この人は大変」


「そうね。この人は重傷」


ナース服の少女2人が4人を1ヶ所に集める


「この人はもうダメね。切断しましょう」


そう言いカバンから大きなチェーンソーを取り出す


「いいの??あまり傷付けたら怒られるわよ??」


右目に眼帯をしている少女が問う


「そうね。それは困るわ」


左目に眼帯をしている少女が言う


「なら、スウはこの人の呪縛を解除するわ」


「そうね。クウはこの人の腕をどうにかするわ」


取りかかろうとする


「待って、他の人は大丈夫なのかしら」


「そうね。みんな重傷だわ」


1人は呪縛、3人重傷

1人、1人治療をしていたら助からないかもしれない


「あれをやりましょう」


「そうね。そうしましょう」


2人は眼帯を外し、向かい合って両手を合わせる


「咲き乱れろ!!桜ドーム!!」


2人がそう唱えるとドーム状の球体が出来る

その中に居る4人の身体が浮く


「成功ね。クウ」


「そうね。スウ」


球体の中では小さな光の粒子が4人の身体を癒していた


「何時間かかるのかしら」


「そうね。明日の朝には終わるかしら」


「そうだといいわね」


「そうね。」


2人が話し込んでいると


ガサガサ


「「!?!?」」


「誰!?」


すっかり誰も居なくなってしまった街から聞こえた物音


「早く出てこないと串刺しにするわ。」


そう言い大量のメスを構える


「や、やめて!!殺さないで!!」


そこにはコウが助けた少年がいた


「貴方は誰??敵??」


「そうね。貴方は敵??」


2人が少年に問う


「ち、違うよ!!あのお兄ちゃんに助けてもらったんだ…大きな爆発音がしたなって思ったらそこから意識がなくて………お兄ちゃん達がこうなったのは僕のせいだ」


泣き出す少年


「敵ではなさそうね」


「そうね。敵ではないわね」


「少年、訳を話すといいわ」


「そうね。話すといいわ」


スウがそっと少年に触れると傷が治っていく


「!?お姉ちゃん達は…一体」


「いいから。早く話しなさい」


「……僕…お兄さんに雇われたんだ…成功したら自由にしてくれるって言われて…あのお兄ちゃんとお姉ちゃんと別々にさせた」


イキを指差す


「でも失敗したって言われて…殺される所をあのお兄ちゃんに助けてもらった」


今度はコウを指差す


「そう、だいたい分かったわ」


「そうね。だいたい分かった」


「ごめんなざぁーい!!」


大泣きする少年


「泣きたければ泣くといいわ」


「そうね。でも煩いわね」


クウはスウに比べると少しキツイ性格のようだ

2人とも黒髪に黒い瞳と日本人形のような容姿をしている

普段は眼帯で隠しているようだが、2人の目には片方ずつ桜の模様が入っている


「早く夜が明けるといいわね」


「そうね。早く明けるといいわね」


会話をしているようで、出来ていない2人だった。







日がのぼる


「さすがに疲れたわ」


「そうね。疲れた」


いつの間にかドーム状の球体は無くなっている

4人とも傷が癒えたようで、服はボロボロなものの傷は綺麗に治っていた


「ん…」


1番最初に目が覚めたのは


「うわぁ!?なんだこれ!?傷が治ってる!?」


ユウだった


「先ほどまで重傷だったとは思えない元気さね」


「そうね。煩いくらいね」


「??君たちが治してくれたの??」


男性にやられる前には居なかった少女達に話しかける


「えぇ、私達が治しました」


「そうね。面倒ごとは嫌だったけど主からの命令だったから」


そう言ってペンダントを見せる

青い海のようなキレイなペンダントだ


「主…??」


「ルイのことですよ」


コウも気がついたようだ


「お久しぶりです。2人とも」


「久しぶり」


「そうね。久しぶりね」


再会の挨拶を交わしている


「もしかして…ルビーの従者??」


「えぇ…私達は回復専門の従者」


「そうね。私達は闘えない」


「ですが貴方方を呼ぶにはルイの指示がなければ来れなかったはずでは」


コウが契約した時の事を思い出す


「そうね、でもこの通り呼び出されたから」


「そうね。呼ばれなかったら来ないわ」


ペンダントには血が付いていた

それはあまり表に出たくない2人にルビカーフィンが提案したもの

ペンダントに血を付け、そのペンダントを放った場所に現れると言うものだった


「ルイはあの状態でも少し意識があったのですか!?」


コウは驚く


「それは分からないけれど、連れ去られる前にやったことかもしれないし」


「そうね。主ならやりそうな気がするわ」


3人で会話をしていると


「あ、あのぉ」


と申し訳なさそうに入ってくるユウ


「なんでしょう??」


「そうね。何か用??」


「どうかしましたか??」


3人同時に反応する


「いや、自己紹介でもしようかな…と」


なんとなく気まずさを感じるユウ


「貴方とは初めましてだものね、失礼。挨拶が抜けていたわ」


「そうね。まずは自己紹介ね」


「あ、あぁ……ユウです!!よろしく!!」


2人のペースに飲み込まれながらも自己紹介をする


「私はスウ。回復治療専門の従者」


「そうね。私はスウ。戦闘には向いていないの」


「助けてくれてサンキューな!!」


ニッコリと笑って言ってくれる彼に2人の表情が緩む


「貴方はまだそれほど重傷では無かったけど、もう1人の男性は内臓がゴッソリわ」


「そうね。リウの片腕はもう使わ」


「そう…ですか」


思わず暗くなる

助かっただけでも良かったと思うのに

すぐには動く事が出来ないと思うと

なんとも言えない気持ちになる


「私達の腕があったからこそ2人は助かりました」


「そうね。私達も体力をだいぶ使ったわ」


「本当に助けて頂き感謝しかありません。2人の意識が回復するまではゆっくりとします」


「それがいいわ、私達も何度も使えるわけじゃないもの」


「そうね。正直結構キツかったわ」


全員が回復するまでルビカーフィンを探す事は中断する

それが今のコウ達にできる精一杯の事だった。

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