第17話 予兆②
『分かっ…』
「ホントに理解しているのかしら??」
二人の会話を遮って入ってきたのは
『リウ??』
「ハロハロー!!ルビーちゃん」
そう言いながら二人の前に現れる
「俺は前に従者の事を聞いた!!なんでお前が止めるんだ!?」
大きな声を出すイキに
「まぁまぁ。そう熱くならないの〜…あたしはただ後悔して欲しくないだーけ」
「後悔なんかするか!!!!もう決めたんだ!!!!」
ますますヒートアップするイキ
「誰かに言われたから、約束したから、自分と同じような目に合う人を作りたくないから、救いたいから、そんな気持ちだけで乗り切れる程甘くないって話しよ」
いつにもないリウの真面目な声
「ルビーちゃんもそう簡単に従者を増やしちゃダメよ??貴方は知ってるはず……痛みを苦しみを」
『っ…そうだ、けど』
少し気まずそうにする
「共感するってやつだろ??」
「そうよ?でもそれだけじゃないわ。もしまた妹が目の前に現れたら貴方は冷静で居られる?ルビーちゃんが深追いしないでって言ったらそれに従える?早く解放してあげたい、助けたい、そんな気持ちにならない??」
「それ…は」
口ごもる
イキには妹を奪った少女を目の前にして
冷静でいられる自信は無かった
「貴方が先走ればルビーちゃんは痛みや貴方の心から出てくる負の感情にも耐えなければならないの。それをしっかりと理解した上で従者になるかって聞いてるの」
「………」
イキは黙ってしまった
リウに言われた事は紛れもない事実だから
『リウ…そんなにキツく言わなくとも』
止めに入るも
「キツく言うわよ!!あたしはルビーちゃんが苦しんでいるのをこの目で何度も見た。耐えているのも知ってた。もうこれ以上、貴方を苦しませたく無いの…あたしの大切なお友達だもの」
ギュッ
と抱き締められる
『リウ……ありがとう』
ルビカーフィンは幸せだった。こんなにも自分の事を考えてくれている人がいる
自負の事を思ってくれてる人がいる
「別に反対している訳じゃないのよ??もう少し考えてみなさい」
諭すように言う
「……分かった」
イキももう一度考えるようだ
「ほらほら!!分かったなら早く戻りなさい!!あ、それともこんな姿のルビーちゃんを見ていたいのかしら??」
「ち、ちげーよ!!!!」
もういつも通りのリウとイキに戻ったようだ
「そいつの事任せるからな!!」
そう言い去って行く
素直にお願いと言えないのがイキらしい
「……さて、と。何か心当たりがあるんじゃない??」
『コウ達と繋がらないの』
「あれれ??じゃあ無意識なのかな??」
『無意識??』
キョトンとするルビカーフィン
「ルビーちゃん自分から切断しちゃってるわよ??あたしは
リウからの説明で漸く自分の状況に気付いた
『無意識……でも無意識で切断したのなら…なんでだろう』
「それはあたしにも分からないわぁ〜。でもそんな状態が続いたら彼らは従者としてやっていけるのかしら??あたしみたいに自由に動けるならまだしも彼らはルビーちゃんが居ないと動けない」
『それは…』
リウの言う通りだ
コウなんて私が居るから存在する。とまで言ってくれた
そんな二人をどうしたら私とリンクせずして自由に動かせてあげられるだろうか
「だーい丈夫よ!!そんなに深く考えなくとも。今回はたまたまそうなったのかもしれないでしょ??」
『でも!!まだ繋がらないの…どうしよう…こんなの初めてだよ!!!!』
不安と恐怖に押し潰されそうになる
誰ともリンクしていないと言う事は独りなのだ。
そう、孤独
『怖い…怖いよ!!!!』
「怖い?大丈夫よ。今回だけ、たまたまよ」
慰めるように抱き締めてくれるリウ
何か分からないものが自分を取り込むようだった
ブラックホールの中に引きずり込まれそうになるような感覚
『怖い…怖いよ!!コウ……コウ!!!!』
今1番会いたい人の名前を呼ぶ
「ルイ!!!!」
『!?コウ??』
そこには息を切らしながら木に手をついてこちらを見ているコウがいた
『コウ!!!!』
ルビカーフィンはコウの元へと走って行く
会いたかった人
望んだ人
力一杯、抱き付く
「ど、どうしたのですか!?それにこの格好は一体…??」
うまく状況が理解できないようだ
「あーぁ…もーぅ!!せっかく頼れるお姉さんポジション狙ってたのにぃ」
ヤレヤレと手を上げるリウ
『コウ、コウ!!コウ!!!!』
ぎゅーっと自分に抱き付いてくる主に少し戸惑うもそっと抱き締め返す
「何か怖い事でもありましたか??」
優しく尋ねる
「うん…コウとみんなとリンクが途切れてしまって…不安で!!独りで!!怖くて!!」
まるで子供のように泣きじゃくる
「何か嫌な事はありましたか??ストレスになるような事や心配な事は??」
『分からない!!分からないの!!!!』
「分かりました…もう大丈夫ですよ。僕が居ます。ずっとずっとソバに居ますから」
そう言って額に手を当てると
力が抜けたように倒れるルビカーフィン
「歳は?」
「ちょうど21に」
「何人目?」
「103」
「そう」
淡々と交わされる言葉
これだけでこの二人には通じるのだ。
「貴方の事だから20くらいで心が壊れるかと思ったわ」
「どうでしょうね…もうそれすら分かりませんよ」
自虐的に笑うコウ
「もう慣れちゃったとか?」
なんておちゃらけて言うリウに対し
「慣れるわけないだろ!!!!」
大きな声で怒鳴るコウ
「っ。すみません」
すぐ切り替えられる所は彼の長所である
「今のは悪ふざけが過ぎたわ…そんなに経つのね」
「2000年です。長かった、20過ぎなんて久々で少し期待していましたが…これでは」
自分の腕の中で眠るルビカーフィンを見る
「まだ予兆の段階じゃない。諦めるには早いわ」
「えぇ。分かっています……所で貴方が戻って来たと言う事は何か掴めたのでしょう?」
真剣に見つける
「えぇ…ここから西の大陸に彼らが集まっている所があるみたい。でもルビーちゃんの力を使って3日かかるわ」
「!?魔導車を使うのですか!?」
「それを使わなければ10日はかかる。その間に何も起きないとは限らないし」
「っ……分かりました。明日にでも出立しましょう」
ルビカーフィンを抱え去ろうとすると
「貴方が辛ければ今度はあたしがやるわよ?」
リウが声をかける
「……いえ。これは僕の役目です。約束は必ず守る」
そう言い去っていく
「相変わらずお堅いこと…彼が先に潰れなければいいのだけれど」
いつもの彼女らしからぬ雰囲気
「あたしも人の事言えない…か」
リウの右腕は真っ黒に堕ち初めていた。
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