第16話 予兆

草原に少年と少女が寝転んでいる


「ねぇ…これからも一緒にいれくれる?」


少女は少年に問いかける


「当たり前だろ」


少年は当然の如く答える


「約束…してくれる?」


少女は小指を出す


「あぁ…必ず」


少年もそれに答える


二人には笑顔があった


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


『夢…??』


真夜中、ルビカーフィンは目が覚めた

みんな寝ているのか、いつものような賑やかさがそこには無い

それがどうにも心地悪く

1人窓から外に出る


『綺麗』


真夜中のため風の音、川の音、木々の音、あらゆる音が聞こえる

ルビカーフィンは前のように

ワンピースを脱ぎ湖へと入って行く

浮遊力に逆らい下へ下へと沈んで行く


(さっきの夢は…なんだったんだろう。夢にしては現実味があった…それに私は……)

『知ってる気がする……!?ごぼっ』


そう口にした瞬間、今まで無かった事が起きた

急に息苦しくなり、水が肺に入ってくる

なのに身体は浮かばない

まるでここにとどめられているよう


(苦…しい……息が…でき…な…い)


ゴボゴボと入ってくる水

意識がだんだん混濁してくる


『誰……か』


力一杯手を上にあげる


(こんな形で…みんなを解放する…なんて)


諦めかけた時

急に身体が浮上した

地上へと出る


『ごほっごほっごほ』


肺に入った水を出す


『はぁ……はぁはぁ』


今度は空気を肺へ送る


「何やってんだよ!?死ぬ気か!?」


怒る声が聞こえる


『イ……キ』


ルビカーフィンを助けたのはイキだった


「話がしたくて部屋に行ったら居なくて。探し回ったら湖に沈んでるとか勘弁してくれよ」


はぁ

とため息を付くも、彼なりに心配してくれているようだ


『ご、ごめん……あり…がとう』


「ったく……!?ってお前っ…はだ、はだ、裸!?」


先ほどは助ける事に必死だったが

今の状況に焦る


『あ…う、うん』


「これ着てろ!!!!」


耳まで真っ赤にしながらも上着をかけてくれる


『ありがとう』


「!?なんだよ…これ」


ルビカーフィンの背中には大きな印が刻まれていた


『メディウムの証だって……コウに言われた』


「そうなのか……ってか、なんでコウ達は来ないんだ?いつもならコウが1番にくるだろ」


ふと疑問に思った

いつもなら我先にとコウはルビカーフィンのソバにいる

なのに今回に限っては気配すらない


『分からない…助けを求めたのに誰も反応してくれなかった』


今までに無かったこと、不安になる


「だ、大丈夫なのかよ」


イキも思わず不安になる


『分から…ない』


そこにはいつもの元気で明るいルビカーフィンはおらず、不安そうなただの少女がいた


「なら…なら俺を!!俺を従者として使ってくれ!!!!」


本来ルビカーフィンに相談しにきた事だった


『イキを…従者に??』


「あぁ!!約束したんだ…もう俺らと同じ不幸なめに合うやつらを無くすって!!だから……だから……」


ロケットペンダントを強く握りながら


「俺を使ってくれ!!!!」


イキからの熱意を受けるルビカーフィン


『イキ…ホントにいいの??前にも従者について話をしたけど』


「あぁ…構わない!!」


イキの目には強い意志があった。




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