第13話 もう一つの

ルビカーフィン達が闘っているのと

同時に違う所で闘っているものがいた


「……ちゃん……に…ちゃん……お兄ちゃん!!!!」


「!?」


呼ばれた気がしてハッと起き上がるイキ


「良かった……お兄ちゃん!!」


そこには自分と同じ容姿の少女がいた


「いき…なのか?」


「うん!!お兄ちゃん!!やっと会えた」


少女は抱き着く


「いき…良かった。やっと…やっと会えた」


思わず涙ぐむイキ


「お前がここに居るなら…助けることができたんだな」


「……」


その言葉に無言になる


「どうした??」


「お兄ちゃん…あのね」


「なんだ??」


「あの…そのね」


もったいぶっているのかなかなか言わない


「お前はいつもそうだ。言いたいこと言わないと伝わらないぞ?」


ポン


と妹の頭に手を置く


「お兄ちゃん……そうだね」


決意したようだ


「……私はもうここには居ないの」


「どう言う事だ??」


「あの日私は拐われて…実験体としてあの人に使われた」


「!?」


「そしてあの女の子の器となってしまった

だからもう私は私として存在は出来ない」


妹から告げられた事実はあまりにも残酷なものだった


「あの女の子の身体は私その物。でも中身は違うの…今こうしてお兄ちゃんとお話しが出来ているのはきっと女の子が負傷か何かして意識が薄れているから」


「じゃあ意識がしっかりしたら」


「うん…私は消えちゃう」


「そんなのダメだ!!!!」


消さない

とでも言うようにギュッと抱き締める


「お兄ちゃん…ありがとう。そして傷付けてごめんなさい」


「嫌だ!!!!嫌だよ!!!!いき!!」


いつも少しツンツンして無表情な彼も

今は年相応に見える


「お兄ちゃん…私みたいな人を増やさないで」


イキの顔に優しく触れる


「お兄ちゃんや私みたいに悲しい思いをする人を増やさないで欲しいの…それが私の願いだよ!!!!」


ニコッと笑ってみせる


「お兄ちゃんは救う側の人になって!!

例えまた私の身体と闘う事になったとしても…もうあれは私じゃない」


「でも…」


「私は誰かのために一生懸命になれるお兄ちゃんが大好きだよ!!!!」


「…いき」


「だから悲しまないで…泣かないで

私まで…悲しくなっちゃうよ」


無理して笑っていたようで

少しずつ表情が崩れてくる


「ダメ…だなぁ。笑ってお別れしようと思ったのに…お兄ちゃんの優しさに触れてしまったら離れるのがイヤになっちゃうよ」


それでも弱々しく笑う


イキは気付いた

自分のためにいつも笑っていたこと

不安にさせないように笑っていたこと

全ては自分のために微笑んでくれていた。


力無く下がっていた手に

ギュッと力を入れる

なにかを決意したようだ


「わかったよ。いき」


「お兄…ちゃん??」


急に真面目な声色になった兄に少し驚く


「俺は救う側になる…もう俺達みたいな思いをする人を出さないようにする!!!!」


「お兄ちゃん……うん!!お兄ちゃん、大好きだよ!!!!」


兄の決意を確かに受け取った

すると

いきの身体がどんどん透けていく


「もう時間みたい……お兄ちゃん忘れないで!!!!私はいつでも見守っているから」


「忘れない…俺は絶対にお前を忘れない」


離れるのが嫌だと言わない兄に安心する


新たな決意をしたイキは現実へと

意識が戻っていくのでした。




「今日はこの辺で下がるわ…次会った時には必ず貴方を殺す」


少女はそれだけ言うと砂嵐を起こし姿を消した


「はぁ…全く物騒なモノに目を付けられたもんね〜あたしの主も」


ヤレヤレと手を上げている


「リウ、身体の方は大丈夫ですか?」


「このくらいどうってことないわよぉ」


「そうですか……ルイの力が無ければ家もない……無力だ」


コウにしては珍しくマイナスな発言をする


「無力なんかじゃ……ない」


「イキ…気が付いたのか」


「あぁ…悪かった…攻撃をして」


そう言い深く頭を下げる


今までとは少し言動が違い反応に遅れるコウ


「辞めなさいよ〜」


そう言いイキの頭を小突くリウ


「!?」


急な事に驚くイキ


「そんな顔してたら〜目覚めたルビーちゃんに毒じゃない〜」


いつものように軽いノリで言ったかと思うと


「悪いのは貴方じゃない」


真剣な声になる


「………はい」


それは紛れもなく誰かに言って欲しかった言葉なのかもしれない


ギュッと握った拳の中には

小さなクローバーのロケットペンダントがあった


『ん……』


「ルイ!?大丈夫ですか!?」


『リウ…また助けてくれたんだね』


気が付いたルビカーフィンは声をかけたコウよりも視界に入ったリウに言った


「あったり前じゃないの〜!!!!」


ギューっとルビカーフィンを抱き締める


「いつでも助けるに決まってるじゃない!!大好きなルビーちゃん!!!!」


「ありがとう」


二人がそんな会話をしていると


「あの……ルビカーフィン」


『!?』


イキが少し恥ずかしがりながら

初めて名前を呼ぶ


『話しはお家に帰って少しゆっくりしてからにしよ?』


その言葉に全員が賛成する


パチン


ルビカーフィンが指を鳴らせば

いつもの家が出来上がる。


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