第6話 イキ

どこかの森の中

少年が走っていた

その少年の腕には胸元に剣が刺さっている少女がいた

胸元に刺さっているのに血の一滴も出ていない

まるで何かを出さないように刺してあるようだった。


少年は村の人々から感謝された

だが少年の表情は暗い。

少年は言った

「この村から出して欲しい」

と。

村長は少年の要求に答えた

少年は自由になれた。

尊い存在と引き換えにして…



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


夜中


『……』


ルビカーフィンが目を覚ますと

部屋の片隅にイキが立っていた


『どう…したの?』


まだ眠気があるため言葉がかすれている


「……人間は眠ったり、食べたりしないと生きていけないんだろ?そんなの初めて知った。俺や妹にはそんなの必要なかったから」


どうやらコウから色々と説明を受けたことで疑問や不安が出てきたようだ


『だから自分は人間じゃないって?』


イキが言わんとしている事を先に言う。


「あぁ…今さらなんだけど、なんか落ち着かないんだ」


そう言い胸の辺りを掴む


『イキは妹さんを助けたあとどうするの?』


「分からない…でもきっと今までと変わらず二人でひっそりと暮らしていくと思う」


『それが不安なんでしょ』


「!?」


その言葉に反応する


『アルケミストの成れの果てをどう言うモノか知ってしまった以上、貴方達はこれからも狙われてしまうから…それが不安で心配なんだね』


「どうしたらいいのか…分からないんだ!!またあいつを危険なめに合わせるかと思うと…どうしたらいいのか!!」


漸く胸のうちを話せたため思わず大きな声が出てしまう


『…一つだけ方法がない事もないよ。

もちろん条件付きだけれども…妹さんの安全もある程度は保障できる』


「本当か!?何をすればいい!?俺にできることならなんでもする!!」


余程、妹の事が大切なようだ


『これは貴方一人じゃ決められないこと。

妹さんにも関わってくる』


「どんな方法なのかだけでも教えてくれ!!」


必死に懇願するイキ


『コウやユウのように私のために力を使うの』


「それって…」


『そう、一度従者になってしまったら私が死ぬか、貴方が死ぬか、どちらかの条件が満たされない限り解放されることはない』


「……」


黙り混んでしまう


『だから言ったでしょ?妹さんにも関わってくるって』


「でも…そうすればきっと…あいつは…安全に暮らせる」


弱々しく発せられる言葉


『あくまでこれは一つの方法だよ?

ゆっくり考えたらいい』


ベッドから出てイキに近付く


『今の貴方は一人じゃない…ここには私もコウもユウもいる』


そう言いながら

自分よりも身長が高い彼の頭を撫でる


『イキは綺麗なシルバーの髪をしているね…よく見たら瞳の色もとっても綺麗』


「や、やめろ…」


その行動、言葉に照れる


「…この瞳は呪いだって言われてきた」


イキの瞳は右は赤、左は青のオッドアイ


『そう?オッドアイが呪いだなんて聞いたことないけど…私はとっても綺麗だと思うよ!!髪にも合ってる』


初めて言われた事だった

今までこの瞳のせいで色んな人間に

邪険に扱われてきた

なのに目の前の人間は

"綺麗"だと言ってくれた


嬉しさからなのか、恥ずかしかったからなのか、ルビカーフィンを抱き締める


「……ありがとう」


それは紛れもなく心から出た言葉だった。



そんな二人をドア越しに見守っている人物がいた


「全く…我が主ながら心配がつきない」


言葉では呆れているようだが

表情は優しい


「きっと彼も貴方の力となるでしょう」


各自、色んな思いを抱きながら

夜は過ぎていった


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