第24話 護衛任務2日目⑶

俺は魔法を斬りながら、女の子勢、というよりこの世界の人たちが一体どんな戦い方をするのかを見ることにしていた。

この世界での、対人戦は一体どんな戦い方をするのかを見るために。


しかし、現実はかなり酷かった。というよりか、俺の比較対象が悪かった。

俺が比較していたのはゲームだ。


血が飛び散り、首が飛んだり、体に槍が刺さったり、手を切られ悲鳴や怒号が飛び交う。

吐きそうだった。

地面に散らばる死体や血の海、返り血を浴びながら戦う人達。


俺は思った。ゲームと現実はこんなにも違うものなのかと。当たり前だが、今までゲームやモンスター狩りなどをしてきて、まあ知れているだろうと思ってこの戦いをしていたが、酷すぎたのだ。

俺は魔法を斬って気を紛らした。もちろん、ただの気休めという事は分かっていてもするしかなかった。

斬って斬って斬りまくった。もう、面白さというよりか恐怖が上回っていた。

そうしていると、騎士がサリナに対して


「黙れ!獣人風情が調子に乗るな!」


自慢じゃないが俺は耳がいい。

おかげで学校では噂話が入る入るで男子や女子の情報屋になってたぐらいだ。

だから、この言葉が聞こえた。

俺はイラッとした。

差別意識が俺は嫌いだ。

というより、今回の場合はサリナやミイナ、かえりん(竜人族だが)に対して言ったことに対してだ。


「俺、ああいうの嫌いだな」


「仕方ないんだよ。あれが現実だ。自分と違う種族をさげすみ差別する。これはどの種族でも同じだ。人族が異種族を差別するように猫人族が人族などの異種族を差別する事だってある。もちろん、こんな事は昔の話で、今は差別なんてそうそうあるもんじゃないが、町などによってはまだ残っている。思想ってのはそうそう抜けるもんじゃない」

とジエルが説明してくれる。


確かにな。黒人と白人みたいに、今ではあってはならない差別が多少残っているとこもある。接客態度に差があったりな。

皮肉なもんだよな。


そのあと、サリナとミイナが怒って敵を焼いて斬り殺して無双状態だから若干引いたというより怖かったがスッキリした。


「サリナやミイナは多分差別がキツいとこの町が近かったんだろうな」


ほっと(?)していると、地面が変形し、手足を地面に埋められ大の字の状態でみんなが貼り付けられた。


「獣人風情が。ねぇ。俺達からしたら異人風情がだね。庶民で異人の分際でいい気になるんじゃねえよ」


あぁ?今、あの野郎なんて言いやがった?

異人風情?庶民で異人風情?


「おい、真城。大丈夫か?」


手に魔剣のジエルにも分かるぐらいの力がかかり、ジエルが真城の異変に少しびっくりする。


「貴様ら、それでも本当に帝国軍人かっ!ぐはっ!」

スミレが蹴られる。


「・・・めろよ」


「お、おい真城?お前、手から血が出てるぞ大丈夫か」


真城の手から血が出てジエルの柄を濡らしていく。

魔剣ジュエンダル、契約者と血で結ばれる理由。それは、契約者からジュエンダルに流れた血の量によって力を契約者に与える。そのままでもかなり強い魔剣が契約者の血で契約者に力を与えるいわば諸刃の剣でもある。

ジエルはこの時、自分に付与された能力でもあり、呪いでもあるこの力を改めて実感していた。


地上で騎士は続ける。


「てめぇ、誰に口聞いてんだぁ?まあいい。道具ぐらいには役立ちそうだからな」


「おいおい、こいつ鱗の尻尾なんてありますぜ。売ったらいい金になるんじゃなねぇか」

と騎士の一人がかえりんの尻尾を指差しながら言う。


「止めて、私の尻尾に触らないで!ぐはっ」


かえりんは口で抵抗するが騎士に蹴りを加えられる。


真城は手に力をもっとこめる。

痛みなんて関係ない。

痛みより怒りの方が断然上回っているからだ。


「あのクソ野郎ども。絶対に許さねぇ」


「おい、真城。あんま・・・もう、無駄だな」


ジエルは諦めた。

ジエルからは赤いオーラが発生し、真城を包んでいく。

赤いオーラ。契約者の怒りが具現化し、誰も止める事が出来なくなる。

ジエルはこれ以上何も言わないことにした。

このあと、あの騎士達がどうなるのか悟ったからだ。

それでいて、喜びも感じていた。自分が初めて出会った契約者が自分の能力を存分に解放させてくれることに。


「だ〜か〜ら〜誰に口聞いてんの?異人風情は黙ってればいいんだよぉ!」

そう言って騎士はかえりんの膝を思い切り踏む。


パキッ!


真城達に聞こえるぐらいの大きな音だった。


「あぁぁぁ!!」


かえりんの悲鳴が響く。

ジエルは、

「やっちまったな」

と呟く。


「絶対に、許さねぇッ!皆殺しだ!このゴミクズ共がぁ!!」


真城は涙をこぼしながら叫ぶ。涙がオーラに触れた瞬間。赤いオーラが白いオーラに変わった。


そして、真城の中で何かが外れた。


真城は急降下し、先頭にいた騎士を真っ二つにした。


「おい、てめぇら。よくも俺のパーティメンバーを散々な目に合わせてくれたなぁ!」


「誰だ貴様は!オーラ、魔導師か。ふっ、魔導師風情が立場をわき」


真城はジエルではなく、鉄の剣で喋っていた騎士の首を斬った。


「立場をわきまるのは貴様らの方だ。ゴミ貴族ども」


「貴様ぁ!自分が何を言ったのか分かっているのかぁ!この場で処刑してやる!おい、全員で殺るぞ!」


貴族を馬鹿にされてキレだす騎士達。

しかし、


「ゴミをゴミと言って何が悪い。俺のパーティメンバーを傷つけたことを後悔しろ!」


真城は魔法斬りの最中に覚えた跳躍攻撃の応用で風魔法を足元に発動させて飛ぶフライを使って飛びながら体を回転させて、相手を斬り刻んでいく。

途中、鉄の剣が防がれて回転が止まったが、ジエルをそのまま相手に突き刺し沈黙させる。

ジエルが相手の武器に当たると武器を破壊して体を斬っていく。


「我ら帝国軍騎士団がたった10数人に全滅だと。あってはならん。あってはならないんだぁ!ぐっ!」


最後の一人が現実を受け入れずに叫ぶが真城はその騎士に剣を刺して


「てめぇらに、そんな騎士団なんて名乗る資格はねえよ。人種差別者が」


服が返り血で赤く染まり、鉄の剣は刃こぼれして使い物にならなくなっていた。


「汚れた血だな。汚い。シンカ、お前達にかかってる拘束魔法を解除出来るか?」


低い声で、シンカに尋ねる。


「え?あ、で、できるよぉ。時間はかかるけどねぇ」


シンカは少しだけ怯えた声で答える。


「そうか、なら頼む。俺は指揮官のとこに行ってくる」


鉄の剣を捨て、ジエルだけを持つ。


「真城さん!無理は、しないで下さい」

とミイナが心配してくる。


「ああ、分かってる」


真城はフライで飛び上がり跳躍攻撃の要領で足元に風魔法を圧縮させて、一気に開放し加速した。


「ごめんな、その願いはもう破ってしまってるよ」


ジエルの柄に血を流しながら真城は呟いた。


女の子勢は真城が飛んで行くのをただ見ていることしかできなかった。


「どこだ指揮官は。あれか?」


真城が飛びながら、確認した土煙の方へ飛んで行くと、いかにも指揮部隊というように、旗をたなびかせて騎馬兵がさっきまで戦っていた場所に向かって走っていた。


「指揮官に責任とらせないとな」


「真城。お前怖いぞ」

とジエルが真城の今まで行動を見て言う。


「当たり前だ。みんなにあんな事したんだ。責任は絶対に取らせる」


俺は今までこんなに怒った事はなかった。

この世界に来て、初めて出会ったサリナとミイナ。中二病のスミレ。俺の先生の様なかえりん。神さまから遣わされたシンカ。もちろんジエルもみんな大切な人(剣)だ。

そんな人を傷つけたあいつらは絶対に許さない!


「まあ、あれは俺も見てて気分が悪かった。気持ちは分かるぞ」


「話が早くて助かる。じゃあ行くか」


「おう、相棒!きっちり責任を取らせに行くぞ!」


真城は加速し、指揮部隊との差を徐々に詰めて行く。


「あいつか?」


距離を詰めて行くにつれて騎士一人ひとりがしっかり見えだした。

その中で一人だけ腕装備が赤いやつがいた。


「間違いないあいつだ。真城、一気にやっちまえ!」


「部下の責任をしっかり果たしてもらうぞ!はあっ!」


一気に距離を詰めて、赤腕のを首を目がけてジエルを振りかぶると


キィィン!


「なっ!」


誰かに剣を弾かれ、上空に飛ばされる。

誰にやられたのかと飛ばされた場所を見ると・・・


「なんで、なんでだよ!リーゼルさん!」


騎士団に襲われた張本人。

リーゼル・アナマスがいた。

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