第23話 護衛任務2日目⑵
「リーゼルさん、何故時間を早めて出発したんですか?」
俺はそれが気になりリーゼルさんの竜車に乗っていた。ジエルとシンカも一緒だが二人とも寝ている。ジエルが俺の肩に頭をのせているが本音を言うと女の子にして欲しかった。
シンカは当然俺の頭の上だ。
リーゼルさんは最初は驚いたがすぐに慣れたようだ。さすがである。
「まあ、真城君から伝えた方がいいだろう。今回運んでいるものについてはアミナから聞いているな?」
「はい、一応。って、何で俺がアミナさんに聞かされていた事を知ってるんですか!?」
「伊達に皇帝の懐刀と言われている訳ではない。あの声の大きさで聞こえてないと思わぬ事だな」
怖!絶対敵に回したら行けないやつだ!
まあ、そんな気はありませんが。
それはともかく、今回リーゼルさんが運んでいるもの。それは悪徳貴族の不正や賄賂の記録だ。アミナさんから、もしかしたら人を殺すことになるかもしれないからメンバーに伝えておいてくれ、とも言われていた。
しかし、まだ伝えていない。
というより、伝えきれないのだ。
だって、人をだよ?
もしかしたら、みんなは別に大丈夫なのかもしれないが、日本から来た俺からしたらとても恐ろしいことである。
「そのことで、実は騎士団が動き出しているという情報を手に入れてしまってな」
「騎士団?」
「ああ、帝国軍の準貴族と通常軍の熟練戦闘員で構成された部隊。特殊作戦団だ」
「また、何でそんな部隊が動き出しているんですか!?」
まずいぞ。いくら、リーゼルさんがいるとはいえ、こちらの戦力はリーゼルさん以外といえば護衛に付いてきたリーゼルさんのわずかな私兵と俺達イージスのメンバーだけだ。
無謀だ。
「悪徳貴族だよ。騎士団に準貴族がいると言っただろ?それで悪徳貴族派の準貴族を
うわ、怖!
『掃除』って、身分剥奪とか最悪処刑かな。
さすが異世界。
いや、元の世界でもあったかな。
「と、とにかく、今はその騎士団の対策をしましょう。帝都に着く前にやられたら元も子もないですし」
「ああ、そうだな。恐らく騎士団は何らかのでっち上げられた事件の解決を目的として来るだろう。アナマス家が関連している事なら恐らく6~8割の騎士を投入するな」
「6~8割!?一体それはどのくらいの人数なんですか!?」
「ざっと、140って所か」
「140!?」
この人、何言ってんの?
十数人で140人を相手にしようってか?
いやいや、バカなの?
レベルが平均して5ぐらいの俺達が出来る訳ないじゃん!
そういえば、リーゼルさんのステータスはどんなだろか。
・・・・・
高ぇ!レベル80で全剣術最高ランクって、一人で十分じゃないのか?
俺よりチートポジションじゃん。
俺達ってもしかして、邪魔な感じ?
「安心したまえ。真城君達なら出来るさ」
うん、この人は一体何を言ってるのかな?
確かに、あなたならできるかもしれませんが、常識的に考えたらほぼ負け確定なんですよ?
「いやいや、さすがにむ」
「真城ぉ!魔法が来るよぉ!あと1分でぶつかるよぉ!」
「なん!?」
急にシンカが起きて警告してきた。
魔法が飛んでくるだと!?
視認しないとろくにコントロールできない魔法を遠くから放つなんて。
想像以上の強敵かもしれないな。
「さすが騎士団、早いな。竜車停止!各自散開せよ!」
瞬間、竜車が急停止し、リーゼルさんは竜の背中に乗りまるで騎馬兵の竜バージョンみたいな風格になっていた。
「急げ!あと30秒で来るぞ!」
女の子勢が、何がなんだかわからないという顔で竜車から出てきた。
「おい!みんな!走って来い!」
かえりんは魔力探知の範囲に飛んでくる魔法が見えた様で顔色を変えてみんなを連れて道の端にある林の中に入っていった。
「おい、ジエル!何してんだ!早く来い!」
ジエルは何を考えているのか竜車の屋根の上に立っていた。
「真城、我に身体を預けよ。全て破壊させてやるぞ」
「何を言って」
「するのかしないのか」
ジエルが俺の言葉を遮って言ってきた。
どうやら本当に出来る様だ。
ま、何もしないでリンチにされるより、何かをした方がいいだろう。
仕方ないか。
「分かったよ。シンカ、ミイナ、一応俺に防御魔法付けてくれるか?」
「分かったよぉ、真城を守ってあげてぇ」
「はい、分かりました。ディフェフ!」
精霊魔法と通常魔法が合わさって防御力が体感できるぐらいアップした。
俺は跳躍攻撃のスキル使って屋根の上に飛び乗った。
「本当に出来るんだろうな」
俺は、飛んでくる魔法を見ながら、ジエルに言った。
「ああ、目をつぶって感覚に身体をゆだねれば俺が身体を動かす」
ジエルはそういうと剣に変わり俺の右手に乗ってきた。
俺も一本の鉄の剣を左手に持ち、双剣の構えをして目をつぶる。
感覚にゆだねるイメージをして力を抜く。
すると、突然身体が跳躍攻撃を発動させて剣を振るいだす。
わかる。包丁で根菜を切っている時のような感触。
これが魔法を斬っている感覚か。
なるほど。気持ちいいな。
魔法を斬った後に爆発している感覚もこれまたいい感じだ。
「ふっ、ははははは!面白い。面白い!もっと、もっとだ!この感覚はいいぞォ!ははははは!」
「お、おい真城。俺の制御を無視して勝手に動くなよ。なんか当たってるし。楽しんじゃってるし。仕方ない、俺は数を数えてるか」
(下で見ている人達は)
「ね、ねえミイナ。真城が狂っちゃったわよ」
と若干引き気味なサリナ。
「真城さんってあんな人だったでしょうか」
同じくミイナもサリナと同じ反応。
「魔法を斬る感覚がたまらないんだろうな。ああ、我もやってみたい!今度練習しておこう」
と願望をあらわにするスミレ。
「私なら出来るかも、今度スミレと一緒に確かめて見ようかな」
と自信がわいてくるかえりん。
リーゼルさんの護衛兵達は口を開け、ぼーぜんと真城の戦いを見ていた。
リーゼルさんは
「ラナから言われてはいたが、本当に困難なことがあると力が解放されていくのかもしれないな。まあ、あの笑いはただ単に面白いだけかもしれないがな」
と呆れながらもラナから言われたことを目の当たりにし受け止める。
「さて。間もなく騎士団が来るだろう!それまでに準備を整えろ!」
「「「「え?騎士団?」」」」
と口を揃えてイージスの女の子勢。
「あれ、真城君から聞いてなかったのか?まあ、気持ちは分かるが。今回襲ってきたのは帝国軍騎士団だ。数は」
「130だよぉ。あと2分でくるよぉ」
「という事だ。私が騎士団本陣まで行くまで耐えてくれ。頼む」
と、リーゼルさんが頭を下げる。
「えぇぇ!?いやいや頭まで下げる必要ないですよ!?」
「そうですよ!私達は護衛の為に来てるんですから」
「我はむしろ、こういう展開が欲しかったのだ。存分に実力を発揮してやるさ!」
「私の実力が、騎士団にどこまで通用するのか試すいい機会です」
女の子勢はやる気で溢れている。
「すまない。では頼む!皆も持ちこたえておいてくれ!」
そう言ってリーゼルさんは竜に乗って走って行った。
「さーて、皆さん!どこまで通用するかやってみますよ!」
「「「おー!」」」
「みんなぁ。もうすぐ見えるよぉ」
シンカがリーゼル側の人間に報告する。
すると土煙をあげて騎馬兵が走って来るのが見え始めた。
「では行きます!スミレさん!」
「分かったぞ!兵士で騎馬兵相手なら、あれだな。土の下へいざなえ!」
「「フィールドダウン!」」
すると騎馬兵の足下に穴が開き、半数が落ちて行った。
おそらく最後に落ちた人以外はあとから落ちて来た馬と人間の重さで全員死んだだろう。
「隊長!竜車は無傷です!」
騎馬兵の一人が打ったはずの魔法が当たって無いことに気がつき自分の隊の隊長に報告する。
「は?あの数の魔法をどうやって防いだんだ?」
「上です!」
真城が魔法を斬っている真城をみる。
「魔法を斬っているだと!?まあいい。あいつは魔法を防ぐ事に必死だ。俺達は目の前の少数をさっさと片付けるぞ」
「「「「はっ!」」」」
と通常軍出身の人達はこう話し。
「ん?あいつら女じゃねえか?おい、周りの男共はさっさと片付けろ。誰か拘束魔法使えるか?」
悪徳貴族側の準貴族の隊はこんな事を話していた。
「お姉ちゃん、スミレさん、かえりんさん!やっちゃって!オーステアップ!」
ミイナは全員に全ステータスをある程度上げる支援魔法を使い、
「ありがとう!みんな行くよぉ!はあっ!」
サリナは跳躍攻撃を使って上から、
「我の力を受けるがいい!エアスラッシュ」
スミレは槍棍術の風魔法のエアカッターを槍棍に纏わせ攻撃するエアスラッシュで、
「ドラゴンを怯ませた私の攻撃。受けてみなさい!」
かえりんは細剣を片手に跳躍攻撃を使い、上から体術で攻撃をする。
「雷精霊のみんなぁ。手伝ってあげてぇ」
シンカは全員に反応速度上昇の精霊魔法を女の子勢と私兵達に使って戦いを見守る。
反応速度が上がった為に回避をしながらカウンターで敵を倒していく。
「遅れを取るな!リーゼル様の地獄の特訓を受けさせられるぞ!」
「それはやばいな!」
「この戦いよりキツいかもな」
「逆に褒め言葉を貰いに行くぞ!」
「「「「おお!」」」」
リーゼルさんの私兵達も負けじと攻撃をしている。
今いる敵の半数を削ったところで
「この野蛮人共め!全員、命に変えてもこいつらをうち取れ!」
「「「「おー!」」」」
隊長の掛け声に騎士達の士気が上昇し、少しだけ押し返されはじめた。
「おい!大丈夫か!」
「ダメだ、すまん。あとは、任せた」
リーゼルさんの私兵の一人が殺られた。
「このクソ野郎共が!ぐはっ!」
また一人。
「どうして、どうしてなのよ!私達はリーゼルさんの護衛。なのに何で帝国軍の騎士団ともあろう人達が!」
サリナがつばぜり合いの最中に騎士に問う。
「黙れ!この盗人が!アナマス家の物を盗るとは万死に値する!」
「私達はリーゼルさんの護衛。本当なのに!どうして信じてくれないの!?」
「黙れ!獣人風情が調子に乗るな!」
「ッ!!」
サリナは全力で騎士の剣を跳ね返し、首を跳ねた。
返り血を浴びながら、サリナは
「今、私に言ってはならない事を言った。獣人風情。その言葉のせいでどれだけ家族が苦しい思いをしたか。この差別者共めっ!はああっ!」
「私もはっきり聞こえました。あの言葉は私達を傷つけ、殺してきました。絶対に許さない。その身をもって懺悔して下さい。ファイアートルネード!」
炎が敵を焼き、苦めていく。
魔法は味方には当たらない。
サリナとミイナが怒り、憎しみで敵を殺していく。
スミレ達や私兵達はただ見ていることしかできなかった。
それが、油断だった。
「バインド」
地面が変形しリーゼル陣営全員を縛り伏せた。
「獣人風情が。ねぇ。俺達からしたら異人風情がだね。庶民で異人の分際でいい気になるんじゃねえよ」
「「ッ!!」」
「貴様ら、それでも本当に帝国軍人かっ!ぐはっ!」
スミレが答えると準貴族騎士は腹を全力で蹴ってきた。
「てめぇ、誰に口聞いてんだぁ?まあいい。道具ぐらいには役立ちそうだからな」
「おいおい、こいつ鱗の尻尾なんてありますぜ。売ったらいい金になるんじゃなねぇか」
「止めて、私の尻尾に触らないで、ぐふっ」
「だ〜か〜ら〜誰に口聞いてんの?異人風情は黙ってればいいんだよぉ!」
そう言ってかえりんの膝を思い切り踏むと
バキッ!
「あぁぁぁ!!」
「おいおい、傷をつけるな!高値で売れねえだろうが!」
「すまん、すまん。口ごたえするもんだからよ。しかし、こんなのを欲しがる奴がいるなんて物好きがいるもんだな」
「まったくだぜ。ま、道具にはできるんだ。せっかくだ、全員で味見でもするか?」
「そうだな」
「「「「真城ッ」」」」
そう言って全員が助けを求めながら覚悟した瞬間。
上から何かが落ちてきて、一人が真っ二つに切れた。
「おい、てめぇら。よくも俺のパーティメンバーを散々な目に合わせてくれたなぁ!」
白いオーラを纏わせた人。
真城が準貴族騎士達の目の前にたっていた。
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