第21話 護衛任務1日目(後編)

「なんだ?驚くのそこか?違うだろ?斬れ味に驚けよ」


「いやいや!普通、剣は喋らないから。そもそもお前はなんなんだ?」


俺は遊び(?)で倒しに来たオークやコボルトの群れの戦利品回収をしていたところ、この喋る剣を拾い何故か、会話していた。


「なんだよ、普通、剣は喋るだろ?一応、俺の名前は魔剣ジュエンダル。ジエルと読んでくれ」


「分かった、よろしくな・・・じゃなくて!何で喋んだよ」


「だから、剣が喋るのは普通だって。気になるなら、その剣貸してみろ!」


そう言われ使っている片手剣の一つを持ってジエルと向き合わせる。


「なあ、お前も喋るよな?」

・・・。

「喋んねーじゃんか」

「そんな馬鹿な!俺が作られたところは全部喋ってたぞ!この粗悪品め!」

「おいコラ、防具合わせて(全員分で)1万したんだ。粗悪品じゃないぞ。大体、喋る武器とか普通じゃないぞ。お前の作り主はよっぽどの物好きだな」

「物好き、か。確かに否定はしないな。形が変なのもいたし、頭がいいけど戦いに向かない剣を作ったりしていたしな」

はぁ。なんなんだ?この剣は・・・

作成者も変なやつだな。頭がいいけど戦いに向かないって剣の意味ねーじゃん。剣だけの軍隊でも作るつもりだったのか?


ハッ!視線を感じ振り返ってみると。

みんなが悲しい人を見る目で俺を見ていた。


「ねぇねぇ、真城が剣とお話しているわよ」

「真城さんは頭が大丈夫な人だと思っていたんですが」

「真城はどうやら我より頭がおかしいんじゃないか?」

「「「言えてるかも」」」


やめろぉぉぉぉ!

「ち、違うんだ!この剣って喋るからただ会話していただけで!なあ、ジエル」

・・・。

「テメー!なんで喋んないんだよ!あれか、この状況が面白いから黙ってるんだろ!心の中で笑ってんだろ!ふざけやがって!」


「真城って、とうとう剣に名前まで付けだしたわよ」

「急に剣に起こり始めましたし、どうやらクレイジーボーイになりたいそうですよ」

「剣がカッコイイのは認めるが、話しかけるなんて、よほど友達が欲しいんだろうな」


「え、まさか」

「真城さんって」

「「友達が私達以外にいないの?」」


こいつら、わざとハモりやがったな。

笑ってやがる。

いや、確かに少ないよ!?だって、先週この世界に来たばっかだし、来てからもこの世界の人との交流って限られてるし。俺だって欲しいよ!でも、話す機会がないんだよ!


「ふふふ、そんなわけ無いわよね。真城は友達多そうだもん」


「あ、ああ。当たり前だ!まったく」

本当はいません。この世界には。


「ごめん、ごめん。で、何で剣と喋ってるの?剣がそんなに好きなの?」


「だから、こいつ喋るんだって。おい、お楽しみタイムは終わりださっさと喋れ」


「なんだ、もう終わりか。やあ、お嬢さんがた。俺の名前は魔剣ジュエンダル。ジエンと呼んでくれ、可愛いお嬢さんたち。今度、いっしょに飲まないか?」


その、可愛いお嬢さんがたは口をあんぐりとさせている。

あと、しれっと剣が女の子をナンパするな!

この子達は俺がハーレムを作る為に心を射止める必要があるんだ!

だいたい、お前は酒は飲めないだろ!

剣は剣をナンパしてろ!


「ま、真城さん?今、剣が喋った様に見えたんですが、これは夢でしょうか?」


「夢じゃないよ。本当にこいつ喋るんだ」


「真城!こ、この剣、カッコイイ!欲しい!くれないか!?」


「お嬢さん、俺が欲しいのか?すまないが、もう所有権はこいつだ。俺みたいのが欲しいなら俺の作成者を探すか、俺の仲間を探すんだな」


「うぅ。分かった。真城、この護衛任務をしながら剣を探すぞ!」


中二病の場合、だいたいの事を脳内変換して受け入れる。

スミレの場合は魔法が現実にあるから、尚更なんだろう。


「おい、真城とやら。お前はなぜ、片手剣を二本も使っているんだ?片手剣は普通一本だろ?」


「いやぁ、双剣スタイルだよ。なんか、カッコイイじゃん。ジエルって兄弟剣みたいなのがいないのか?あったら使いたいんだけど」


「ああ、もちろんいるぞ。弟じゃなくて妹がな。と言っても声と剣の色が蒼いだけで他はほぼ同じさ」


剣に弟も妹もあるのか?


「あ、そうだ。もう一つ、俺の剣の能力だがな。溶断だ。物体を斬る時に、切断部を溶かして斬るんだ。だから、あんな斬れ味を作り出せるんだ。相手に熱耐性があったら少し斬れにくくなるがな」


「お前、結構無敵なんじゃないのか?」


「使用者によってはな。いくら俺が強かろうと、使用者が弱ければタダの剣になっちまう。そこは忘れないことだな」


「もちろんだ。さて、リーゼルさん達が待っているし戻るぞ」


「そうですね。待たせているのは悪いですし、戻りましょう」


********************


「おお、真城くん。おかえり。どうだったか?」


「かなり、簡単なお仕事でしたよ。戦利品はがっぽりですが」


「はっはっは!それは良かったな!さて、では、出発するとしよう。もう夕方だ、早く村に行かないとな」


竜車ではまたもや、ガールズトークのせいで俺が天井の上にいた。

次に行く村はナリ村というところで帝都へのルート上のためか、それなりに発展しているらしい。


「そう言えば、ジエル。お前、何でコボルトなんかに使われていたんだ?」


「うっ、お前それを聞くか?実はな、俺と妹が作成者によって作られてからしばらくしてから武器商人がやって来て俺達は運ばれたんだ。しかし、運ばれている途中でオークとコボルトの大きな群れに襲われちまってな。それでコボルトに持たれていたってわけよ。ちなみにお前達が倒した群れはほんのごく一分に過ぎない。妹は別の群れに連れて行かれたからな。早く見つけてやりたい。」


「ジエルって結構、妹想いなんだな。尊敬するぜ。もし、見つけたら俺の双剣の片方にしてもいいか?」


「当たり前だ。真城に使ってもらえるなら俺は大歓迎だ。兄妹で戦う事が出来るしな。まあ、妹次第だが。あ、思い出した。真城、お前の血を一滴、俺の刀身部に垂らしてくれないか?」


「え?なんでだよ」


「俺とか、喋る武器はな、使用者の血を一滴貰うことで契約を結ぶんだ。契約を結べば破棄しない限りは他の人が扱うことはおろか持つことさえ困難になるからな」


「なるほど。分かった。ちょっと待ってろ」


鉄の剣を取り出し指の先端に傷を付け血を出す。そして、ジエルの刀身部に垂らすと。

急に文字が光りだし炎が出てきた。


「おいジエル。何が起こってるんだ!?」


「俺にも分からん!うわっ!変形してきた!なんだ!?」


急に発光し、目をつぶった。

何なんだよ!早速、消えて無くなるとかないよな!?俺の血が悪かったのか?

そんなことを考えながら、目を開けると。


「誰だ?お前は?」


イケメンが立っていた。


「真城?俺は一体。まさか、人化したのか?それが、契約の証って事か。フハハハハハハハ!俺は魔剣ジュエンダル!真城の剣であるジエルだ!」


「ジエルか!なるほどな。契約の証が剣の人化か。分かりやすいっていえば確かだな」


顔と行動がなんか合ってないような。

まあ、いいか。

こうして、新たな仲間が増えることとなった。


その後は何事もなく竜車の天井でジエルの人化して何がしたいか聞いたりしていた。

『ナンパしたい』と言った時は、ほぼ成功するだろと思い、ちょっとムカついて絞めてしまった。

そうしていると光が見えて来た

「ナリ村に着いたな。はあ、たぶんあいつらびっくりするだろうな」


案の定、

「誰よこいつ!」

とサリナ。

「何でこんな人が?」

とミイナ。

「くたばれ、イケメン」

とスミレ。

「イケメンには嫌な思い出がぁぁ!」

とかえりん。


かえりんは違うがうちのパーティは血の気が多いようだ。ミイナを見習いなさい君達。

その後、経緯はしっかり話しました。


「よし、イージスのみんなとかえりんは私が取っておいた宿でゆっくり休むがいい。明日の出発は8時だ。では解散」


とリーゼルさんから言われ宿に向かっていると。かえりんが


「あ、あの真城さん少しお話があるのですが後でお部屋に伺ってもいいですか?」


「ああ。もちろんだ」



とは言ったものの。

一体なんなんだ?かえりんが俺に話?

わざわざ、俺の部屋で言う必要があるのか?

まさか、告白!?

いやいや、あのかえりんがそんなわけあるはずないし、いやでも有り得るかも。

それだったら、外でやればいいはずだよな。

まさか、そのまま・・・

うわあああああああああああ!

無い無い無い無い無い無い無い無い。

ある訳無いじゃないか、告ってその場でってある訳ないだろ!

でも、かえりん結構いい身体してるよなぁ。

と、部屋で悶絶していると。


「真城さんいますか?」


「ひゃい!い、いるぞー」


「では、入りますね」


やばい、あんな妄想していたから、目がどうしても胸に・・・


「話というのはですね、」


ゴクリ


「私をイージスのパーティに加えていただけないかと思いまして。よろしいですか?もう、他の人達とは話をして、真城さんが良ければと言う事でしたので」


「も、もちろんだ」


「そうですか!ありがとうございます!では、私はこれで」


かえりんが出ていく。


うわあああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!

この妄想バカが!

ある訳ないだろ!これ口に出して聞かれてたらとんだ黒歴史だぞ!

最悪だあぁぁ!


と、壁に頭を連打し一晩中悶絶する城崎真城であった。

そして仲間が増える。

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