第22話 護衛任務2日目⑴
「はっはっは。お主は相変わらず、元気そうじゃな」
「神さま!って事は頭を連打し過ぎて死んだんですか!?」
「いやいや、大丈夫じゃよ。気絶して、そのまま睡眠に入ったからの。これは夢の中じゃよ。気にする必要は無い。しかし、お主も思春期じゃのう。かえりんであんな、」
「はい、ストーップ!やめて下さい!もう、思い出したくないんです!」
「はっはっは。冗談じゃ」
俺にとっては、冗談になってないんですよ。
「はっはっは。わしにとっては冗談じゃ」
「神さま、相変わらず心読んでますね」
「はっはっは。ある意味、わしの趣味じゃからな。さて、ここからは真面目な話じゃ。お主にステータス視認と精霊を与えることにした」
「ステータス視認と精霊?」
一体どういう事だろうか。
「そのままじゃよ。ステータス視認は、相手のステータスを見たいと思ったときに視認できる能力じゃ。精霊は、おーい」
「はぁい。なんですかぁ?神さまぁ」
神さまが誰かを呼ぶと、手のひらサイズの背中から光の羽が生えた女の子が現れた。
「この男の子をこれから護ってやってくれるかのう?」
すると、小さな女の子は俺の方をじっと見ながら。
「分かったよぉ。今見てみたけど悪い奴じゃないようだしぃ。なんだかぁ、不思議な男の子だからねぇ、ボクの方からお願いするよぉ。これからよろしく頼むよぉ」
と笑顔で飛んで来て頭の周りをクルクル飛んでから頭の上に乗ってきた。
なんかぽわーんとしてるな。
癒されるぞこの精霊ちゃん。
「はっはっは。不思議なのは仕方がないじゃろうな。なんせ、お前を見ても怯えたりしないんじゃからな」
「えっと、どういうことなのか、さっぱりなんですが」
怯えたり?一体どこで怯える要素があるんだ?むしろ、求めるんじゃないか?
「こいつは、全属性精霊。すべての属性を司る精霊。まあ、精霊とは無縁の世界から来たお主だから、怯えたりしなかったんだろう。しかし、この世界で全属性精霊は恐れられているのじゃ。怒らせたら何があるか分からない、という事がでな」
「そうなんだよぉ。だからぁ、ボクたち全属性精霊は人間達に近づきたくてもぉ、近づけなかったんだよぉ」
だいたい、人ってのは全く知らないものに対して好奇心や恐怖を抱いたりする。精霊の場合は好奇心よりも恐怖の方が強いんだろう。
「あと、こいつに名前をつけてやってくれ。それが精霊との絆の証じゃ。ちなみに、喋る魔剣などと関係を繋ぐ時は契約と言うが、精霊と関係を繋ぐ時は絆じゃ。酷使は絆の低下を招き精霊も離れていく。そこは、気を付けるんじゃよ」
「はい。分かりました。名前か、どんなのがいい?」
「うーん。カッコイイのがいいよぉ」
「カッコイイのか。うーん・・・シンカ、かな。神の花って書いて
「シンカ。シンカ。うん、気に入ったよぉ。ありがとうねぇ。真城ぉ」
なんか、ほっこりするな。シンカの喋り方。
「どういたしまして。では、俺はこれで失礼させて貰っていいですか?」
「・・・ああ、分かった。では夢から覚めさせるぞ。シンカも後で行くからの。また、会うかも知れんが頑張るんじゃよ」
「はい、ではまた」
真城は神の部屋から消える。
「神さまぁ。全部言わなくて良かったのぉ?全属性精霊と魔王のことぉ」
「いづれ言うべき時がくるじゃろう。まあ、真城君は言わなくても、いつか気づいてくれるじゃろう。では、全属性精霊の最後の生き残り、シンカ。真城君を頼んだぞ」
「言われなくても、そうするよぉ。私の仲間達の為にもねぇ」
シンカも神の部屋から出ていく。
「この世界の運命と常に一体であるわしの命、どちらも真城君達にかかっておる。どうか、魔王を倒してくれんかのう」
と、一人願う神。
「まあ、何もしなくても、最低二百年は大丈夫なんじゃがな。はっはっは」
いや、罰当たりな神である。
********************
頭が痛い!
たんこぶか?
いや、頭自体が、腫れてるような気がする。
昨日の夜、思春期妄想が臨界点に達したが、当たり前のどんでん返しで壁に頭を連打し悶絶していたせいだろう。
あー思い出したくない。
朝ごはん、食べにいかないと。
部屋を出るとミイナと鉢合わせた。
「あ、ミイナ。おはよう」
「真城さん、おはようございますぅ!?頭、大丈夫ですか!?」
「え?」
そんなに腫れてたか?
「血が出てた痕に、頭が腫れすぎですよ!少し待ってください。ヒール!」
頭の痛みが引いてきた。
なんとなくだが、頭が小さくなってきた気もする。
「はあ、良くなったよ。ありがとう」
「どういたしまして。でも、どうして、あんな傷を?」
「いや、何でもないよ。たぶんベットから落ちた時に頭から行ったんだろ」
「なら、仕方ないですが」
死んでもあんな事言えるか!
たとえ、信頼できる奴でも、流石に昨日のは言えるはずがない。
「朝ごはんの時間なんでしょぉ?早く行こうよぉ。ボクもお腹空いたんだよぉ」
「ああ、そうだな。腹減ったしな」
「えっと、あのー真城さん?今別の声が聴こえた様な気がするんですが。後、真城さんの頭の上に小さな女の子がいるように見えるんですが?」
「ん?あ、そっか。まだミイナ達には話してなかったな。詳しい事は食事中に話すよ。さ、朝ごはん行くぞ」
「は、はい」
ミイナは唖然と真城の頭の上に座るシンカを見ながら、食堂に向かった。
「で、真城。その、頭の上にでご飯食べてる女の子は、一体誰なの?」
みんなの目線は、頭の上でのんびりご飯を食べるシンカの方に釘付けだ。
ジエルはどうでもいい様でご飯をさっさと食べ終わり、近くの女性をナンパしている。
剣がご飯を食べて、女性をナンパって・・・
シンカもシンカで目線なんて気にせず『美味しい』と言いながらパクパクと俺の朝ごはんを分けたやつを食べている。
結構、肝が据わるってるんだな。
「こいつは、俺の精霊のシンカだ。それでいて、俺達イージスの新しい仲間だ。かえりんと同級生みたいな感じだ。仲良くしてやってくれな」
「いや、我らが聞きたいのは」
「どうして、エルフじゃないのに精霊といっしょに居られるんですか、という事です」
と、スミレとかえりん。
この二人結構、仲良いじゃん。
「どういう事だ?」
「ねぇ真城、あなた一体どんな田舎の生まれ?田舎生まれでも、それくらいは常識よ?いい?精霊ってのは普通、エルフ族の人間にしか絆は結べない。理由はエルフの魔力。というより精霊魔法力という魔力じゃないと精霊と共存できないからよ。なのに、目の前にその現実を覆している人間がいるからねぇ。もう呆れちゃうわ」
とサリナが珍しく説明してくれた。
「サリナが説明してくれるなんて珍しい」
「失礼ね!これくらい常識よ。だいたい、エルフっていうのはね・・・」
おっと、なんだなんだ?サリナが珍しく説明というより一方的に話し出したぞ?
確かに気が強く、前に出るところがあるが、説明関係に対してはあまり前に出ないのに。
「お姉ちゃん、エルフ族に憧れていて暇さえあればエルフ関係の本を読んでるんですよ。だから、あんなに話してるんだと思います。嬉しそうで楽しそうなので、聞いておいてあげましょう」
とサリナが熱弁をふるっている時にミイナがこっそり耳打ちしてきた。
ああ、なるほど。エルフに憧れているからこそ、そのタブーは受け入れたくない的な感じなのかな?
ということは、神さまからチートっぽいのを貰っていると言うことかな?
ありがたやー。
でも、確かにこの世界に来て、速い攻撃も見える様になってきたし、力も前の世界より強くなってる実感もある。
ゲームだとか、テレビだとかインドアな生活もしていたからな、毎日外に出て歩いたり、狩りしたりしてたら力はつくか。
見切り関係はほんとに神さまが何も言わずにくれたものかもしれないけど。
「真城君達。お楽しみの所、申し訳ないが時間を早めて出発する。少し嫌な予感がするからな」
「え、あ、はい!えっと何時ですか?」
「あと、20分後だ。それまでに準備を済ませて置いてくれ。ではな」
はぁ。びっくりした。でもどうしたんだろうか。嫌な予感がするって言ってたな何もなければいいんだが。
「真城さん、準備しに行きますよ」
「あ、ああ。分かった」
とにかく、いまは目の前のことに集中しておこう。何が起きてもおかしくないのが異世界だしな。
それから20分後にアナマス家一行は次の目的地に向かった。
********************
「これより、アナマス家竜車強奪事件の討伐作戦の最終会議を始める!」
「「「「「「「「はっ!」」」」」」」」
「今回この事案の騎士隊長となったワガン・ササナリである。今回はあのアナマス家から竜車を強奪出来た事から、相手はかなり凄腕と考えられる。よって、騎士団の八割を投入し対応することになった!今回の作戦内容はまず作戦実行範囲5km圏内を封鎖し、魔法による長距離攻撃を行う!次に魔法部隊を除く全ての騎士で全力攻撃を開始し、敵を殲滅する!なお、損害予想は五割だ!貴様らが、その予想を下回ることを期待している!では、質問のある者は」
「魔法での攻撃は我らが突撃した後も続けるのですか!?」
「ああ、続ける。魔法の着弾地点は貴様らに出撃前に配布した魔道具で分かる様にしている。流れ弾にあたる事はないだろう。他にはあるか?」
「生き残りは捕縛ですか?」
「いや、この事が世間に知られればアナマス家の信用に関わる。よって、その場で処刑する!これは皇帝からの最重要命令である!他にはあるか?無いようだな。ではこれより、作戦を開始する。会敵予想時間は約5時間後だ!各自用意を済ませ、陣形を組み、待機せよ!以上だ。では、解散!」
「「「「「「「「はっ!」」」」」」」」
全員が騎士敬礼をし、散らばっていく。
この時、ワガンは自分で作戦には関係ないと思いながらも自分の娘の事を心配していた。
「アミナは無事だろうか」
アミナは帝都に向かってなくて竜車強奪もされておらず、悪徳貴族に騎士団を利用されているとも知らずに。
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