第18話 残党、ラッパー

「ねぇ、こいつ腹の中まで剥ぎ取る必要がありそうよ・・・ッ!!」

「何か来ます!数が多い!」

「雑魚か、こいつら親玉の子分たちだ!」


俺達はパワースチルの親玉を倒したあとのパワースチルの子分たちが飛びかかって来た。

それを各自、回避して体制を立て直す。


「ああ、たぶんそうだろうな。だけど、数がな」


「厄介ですね。力も防御も親玉に比べたら大した事はないですが数が多いですし」

「奴らはスピードもあるタイミングを見極めないと親玉より危険だ」


それぞれ戦闘体型に移動しパワースチルと対峙する。


「力がなくてスピードがあるのか・・・カウンターが得策か。サリナ、ヤツらに先に攻撃させてカウンターで倒してくれ」


「わかったわ。さあ、来なさい!」


しかし、なかなか襲いかかって来ない。


「恐らく、私達に親玉の血が付いているせいでしょう。死ぬかもしれないと思っているのかもしれません」


「なるほどな。じゃあこっちから行かせてもうぞ!」


俺とサリナが飛び出し、パワースチルもようやく飛びかかってきた。

動きが単調でこういうモンスターはやりやすい。飛びかかって来るのを避けた瞬間に攻撃する。ほぼ単純作業に等しい。しかし、数を生かす攻撃もしてくるので無傷ではない。避けたところで攻撃されたり、複数で飛びかかって来たりと厄介な所もある。

スミレも参戦し、混戦状態でミイナは魔法があまり撃てない。


「ちっ。いくら倒してもキリがない!」


「数が多すぎるのよ!しかもこんなにバラバラじゃあミイナの範囲魔法も出来ないし」

「数をこなすしかないだろう。ひたすら攻撃あるのみだ!」


戦いが始まってもう20分は過ぎている。恐らく15体は倒しているだろう。しかし、数が多くまだ20体くらいは残っている。


「サリナ、スミレ!こいつらを集めるぞ!ミイナ!集まったら範囲攻撃を頼む!残りは俺達が片付ける!いくぞ!」


それぞれ走って追いかけてくるパワースチルをひと塊にする。


「今よ!」

「はい!フィールエアカッター!」


「よし!残りを殲滅だ!」

「残党狩りよ!」

「さあ、我の前から消えるがいい!」


ミイナの魔法で倒せなかったパワースチルをそれぞれで倒していった。


「ふぅ。何とか終わりましたね」


「そうだな。それにしても、いくら何でも多すぎやしないか?あのラッキーウルフでもこんなにいなかったぞ?」


目の前に広がるパワースチルの死体。地面も真っ赤に染まっている。

その中でスミレとサリナは素材の剥ぎ取りをしている。

女の子二人が死体の山の中で素材採取。

少し引いてしまったが、この世界では当然の事なので目をつぶることにする。


「はい。この数は異常です。普通、親玉の周りには最高でも10体前後が子分たちがいますが、今回は多すぎます。やはり、ギルドに報告する必要がありますね」


確かにそうだ。ただでさえ生息地が違うパワースチルが、親玉まで一緒に現れ、しかも子分たちの数まで異常。何か不吉な事がおきるとしか考えられない。


「ねぇ、親玉のお腹の中からこんなのでてきたわ」


サリナがそれを手に取り、持ってきた。

それは手のひらサイズの青色の珠だった。


「なんだこれ?」


「わからないわ。スミレも分からないって。ミイナは分かる?」

「いいえ。真城さんもわからない様ですしギルドに持って行くか手元に置いておくか」


「うーん、一応持っておこう何かの役に立つかもしれないしな」


「そうね。さて、剥ぎ取りも終わった事だしさっさと帰りましょう」


帰る途中、ラッキーウルフやルビラビットに遭遇したがありがたく経験値に変えさせて頂きました。


「これはパワースチルですか!?」


森から帰ってきた俺達は、ギルドに来て受付嬢さんに討伐記録とパワースチルを見せていた。


「そうよ。パワースチルが親玉まで一緒にこの地域に現れたの」


「これは支部長に報告が必要ですね。一応、イージスの皆さんも来て頂きたいので付いてきてください」


そう言われ、受付嬢さんと支部長さんに会いに行く。支部長さんってどんな人なんだろうか?


「支部長、緊急の報告がありますので失礼します」


部屋の中に入ると・・・


「緊急とは、一体、どうしたんだyo!仕事中に告白かyo!とうとう俺のカリスマ性に惚れたのかyo!OK、OK俺はいつでも大歓迎だyo〜!」


支部長がラッパーとはな!

こんなのが支部長ってないだろうよ。

普通、頭が良さそうなインテリ系みたいな感じのひとだろ!

ぱっと見エルフ族だから美男なんだが、ラッパーって。

(注)真城はラッパーが嫌いなわけではなく、逆に大好き。この世界にラッパーがいるのにびっくりしているだけである。


「支部長、〆てさしあげましょうか?」


「すまないyo!すまないyo!何で鞭を持っているんだyo!で、本当の要件とはなんだyo?」


「はい、こちらのイージスの皆さんが森にてパワースチルと交戦したようです。こちらが証拠です」


そう言ってこわーい受付嬢さんは俺達の登録証とパワースチルの革を出す。

登録証には何のモンスターをいつ倒したのかという討伐記録が記録されている。


「パワースチルかyo。それも親玉、子分たちが多数かyo。実は最近、別の支部からも生息地が違うモンスターが現れている、なんて報告があったんだyo。君達が倒したのかyo?」


「は、はい」

「そうです。支部長さんも気付いているでしょうがこの子分クラスの数が異常ですよね」


「ああ、確かにこれは異常な多さだyo。これらは本部に報告させてもらうyo。報告は終わりかyo?」


そういえばあの青い珠の事、知ってるかな。


「あの、支部長さん。これ、なにか分かりますか?」


そう言って、パワースチルのお腹の中から取り出した青い珠を渡した。


「う〜ん、わからないyo。でも、君が持って置くんだyo。何か役に立つかもしれないからyo」


「わかりました。ありがとうございます」


「では、また何かありましたら、報告をお願いします。これが素材買取と異変調査及び報告の報酬です」


金貨2枚と銀貨3枚だった。


「ありがとうございます」


そう言って部屋を出る。

う〜ん、ラッパー支部長でも分からないか。

一体、この珠は何なんだろうか。

ま、考えても仕方ないか。

せっかく異世界に来て1週間経ったんだ。来週は楽しまないとな!


「よし、今日はもう夕方だし、みんなで何か食うか!」


「「「賛成!」」」


早速、銀貨3枚が飛んでった。

あ〜!宿のご飯の方が安いんじゃないのか!?

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