第16話 日常①

「みんな!俺達は重要な事を忘れていた!」


「急に何よ?」

「重要な事って何かありましたか?」

「我の存在より重要な事などなかろう」


・・・

「俺達のパーティーの名前をまだ決めていなかった!」

「「あっ!」」

『スルーはないでしょう!』みたいな顔をしている中二病は置いといて。

そう、まだ俺たちのパーティーは結成してから名前を決めるのを忘れていたのだ。


「というわけで、パーティー名を決めようと思うんだが、何かいい名前あるか?」


「そうねぇ〜改めて聞かれると思いつかないわね。ミイナは何かいい案ない?」


「私も思いつきません。スミ・・・真城さんは何かないですか?」


「おい、何故我に聞こうとして途中で止めたのか聞こうじゃないか」


「いや、スミレちゃんに聞くと、ろくでもない案が出そうな気が・・・ああ!何で掴みかかるんですか!」

恐らくサリナも同じことを思っていただろう。もちろん、俺もだが。


「何かないもんかなぁ〜」

いっその事、日本のアイドルグループとかから名前をいただくか?

いや、さすがに気が引けるな。

さて、どうしたものか・・・


「お困りの様ですね」


「あ、かえりん。そうなんだよ、パーティー名を決めないといけないのにずっと放置しちゃってさ、パーティー名ってどうやって決めるものなんだ?」


「色々ですよ。想像からだったり故郷の地名を参考にしたり、言葉の単語だったり、夫婦のパーティーであればお互いの名前から取ったりしますね」


「なるほどね」


単語として、イージスとでもするか?神の盾って事で。

カッコイイし。


「イージスってどうだ?俺のいたところで神の盾って意味だ」


「神の盾かいいわね」

「私はこれでいいと思います」

「カッコイイな!決まりでいいんじゃないか?」


こうして俺達のパーティー名はイージスとなった。


「クエストは明日しよう。さすがに昨日のせいで俺は筋肉痛だし、サリナは休養が必要だしな」


「そうですね、いくら回復魔法でも疲れや血までは戻りませんし」

「では今日は解散だな」

「ごめんね私のせいで」

「お姉ちゃんのせいじゃないよ。そうですよね、真城さん」


「ああ、昨日のはサリナのせいじゃない。だから、気にすることはないよ」


「ありがとう、真城」


「さて、そういう理由だから今日は各自で行動!」


イージスで思いついた事だが魔力を全方位に放ってレーダーの様にしたらいいんじゃないか?それをみんなでやればかなり広範囲で安全かつ確実に相手を倒すことが出来る。

しかし、魔力の強さや、魔法が跳ね返って自分に戻った時に、位置や距離、そもそも魔力を感じることが出来るかわからない。魔力探知との組み合わせで出来そうだが


かえりんを引き止めて聞いてみた。


「なあ、かえりんは魔力探知スキルを知ってたりするか?」


「私は覚えてないけど、私の友達なら知ってるわよ。連れて来てあげましょうか?」


「すまないな」


「構いませんよ。これで貸しがまた一つ増えました」


「ははは・・・はぁ」


貸しが増えて返ってくる時に大きく返ってきそうな気がするが仕方ない。


その後、かえりんは魔力探知スキルを持っている女性を連れて来た。


「やあ、はじめまして。私の名前はスミールだ。よろしくね」


「城崎真城です。よろしくお願いします」


「おう!しかし、かえりんが人助けなんて、珍しいこともあるんだな」


そうなのか?結構人助けしてそうだけどなぁ

他の人に言ってないだけだろう。


「珍しいって事もないですよ!たまたま、助ける人がいなかっただけです」

「たまたまねぇ〜。まあいいとして、魔力探知を覚えたいんだって?」


「そうなんです。早速教えてもらっていいですか?」


「おう!いいぜ!じゃあ裏に行こうか!」


裏?まさか、『実践あるのみ!』とかいうやつじゃあないだろうな。


そのまさかである。


「ほらほら!魔力の流れを感じないと当たっちまうぜ!」


「いやいや!いくら何でも、急にファイアーボール向けられても!」


俺は、教えてもらおうと訓練場に来た瞬間、スミールさんからのファイアーボールの連射を何とかかわしていた。


「跳躍攻撃のやり方が分かってんだったら簡単だ。魔力の流れを自分じゃなくて、身の回りの空間に感じようとするんだ!」


「身の回りの空間を自分の体と同化させろ、みたいな感じですか!?」


「そうだ!ほら、口より体と神経使え!危ないぞ!」


本当に危ない!スミールさんは半分、本気で当てようとしている。

魔力の流れ、魔力の流れを自分の体で感じた時のように周りに・・・これか?

やってみるか。


立ち止まり、今感じている魔力の流れを体をずらし、避けてみると。

ファイアーボールは体のすぐ側を通り抜けた。回避成功と思ったの瞬間、直撃をくらってしまった。


「魔力探知スキルは、回避が5回成功するまで覚える事はできないぞ!」


あ、はい。

その後ボロボロになって、なんとか覚えることが出来た。


「ありがとうございました。かなりキツかったですが」


「何言ってんだ、スキルによっては覚えるのにもっとキツいスキルだってあるんだ。このくらいでへこたれるなよ」


マジっすか。

はぁ、もしかしてモンスター狩るよりスキル覚えの方が大変なんじゃないか?


先が思いやられる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る