第10話 アナマス家訪問

異世界の者よ立ち去れ、お主が存在してよいところではない。


お前は、誰だ。


俺は、魔王だ。


お前が魔王?だが、立ち去れない。サリナたちを置いては行けない。


我に逆らうか。ならば、滅ぼすまで!


********************


とっさに起き上がる。

息が詰まりそうだ。


「なんだ、夢か。しかし、なんだったんだあの夢は・・・」


異世界に来て一日、その日の夢で魔王の夢とは、何とも気分が良くないな。


ベッドから降りて、服を着替える。服は昨日宿に向かう途中で買ってきた。

二本の剣を腰に下げて、部屋を出てロビーに向かう。


「しかし、あれが本当に魔王の意思だとしたら・・・」


いや、いくら魔王でも、他人の夢の中まで入り込むことは出来ないだろう。


「色々考えても仕方ないか」


そうしていると、俺はロビーに到着していた。


「あ、真城だ!遅いじゃない!早く行くわよ!」


サリナが走ってこっちに向かって来て、ぷんぷんという可愛い音を立てそうな感じで俺の前に腰に手を当て立ち塞がる。


それにしても俺、そんなに遅かったか?


「お姉ちゃん、結構せっかちですから。あ、そんなに遅くないのでお姉ちゃんの言ったことは気にしないでくださいね」


「ムッ。ミイナ、少し聞き捨てならないわね。私より早く来ていたくせに」


「なっ!お、お姉ちゃん!そこは内緒にしようよ!」


いや別に内緒にせんでもいいだろ。

それにしてもよかった。どうやら遅くないようだ。


「そ、それにしても、そんなにあの屋敷に行きたいのか?」


俺達は宿を出て屋敷に向かって歩きながらながらサリナたちに聞く。


「当たり前じゃない。アナマス家って帝国の懐刀とも言われて権力もある上に軍のトップでアナマス家一人ひとりがかなり強いって噂よ」


「それでいてかなり穏和で政治と軍は分けていて軍は暴走しないらしいですし、人気の家系なんです」


と、サリナとミイナが気分良さそうに話してくる。


それにしても、あのおじさんが強くて、しかも権力があるなんて、思いもしなかった。

だって、あのリーゼルさんだよ!?

倹約家で色んなものに興味のあるあのリーゼルさんだよ!?

考えられんわ!


そうしていると、俺達は屋敷の前に来ていた。


「到着だ。一応サリナたちが入れるかどうか聞いてくるから少し待っていてくれ」


「分かったわ」

「わかりました」


そう言って俺は門番にリーゼルさんから貰ったペンダントを見せ、サリナたちのことを聞くとあっさりオッケーだった。

サリナたちに入ってもいいことを伝えると『やったあ〜!』と喜んでいた。


そして、俺達は門をくぐり玄関に向かって歩いていると玄関が開いてリーゼルさんが走ってこっちに向かってくる。


「お〜!真城くん待っておったぞ〜!」


サリナたちはそれを見て、驚き俺の後ろに隠れる。

そりゃあ、憧れの家に来て急に知らないおじさんが走ってこっちに向かって来るんだから驚くわな。


リーゼルさんは俺の目の前に立って


「さあさあ、早く家に入ってお主の故郷について教えてもらおうか!」


「わかりましたから!引っ張らないで下さい!」


服を強引に引っ張られ、屋敷の中に連れていかれる。

サリナとミイナも後を追ってくる。

屋敷の中に入りなんとか離される。

凄い力だな。


「そういえば、そちらのお嬢さん方は?」


リーゼルさんがサリナたちを見て聞いてくる。


「ああ、こいつらはパーティーメンバーのサリナとミイナです」


「ど、どうもサリナです」

「はじめましてミイナです」


サリナとミイナが俺の後ろから出てきてそれぞれ自己紹介をする。


「おお、真城くんの仲間であったか!私はアナマス家当主、リーゼル・アナマスだ!それにしても真城くん。さっそく女の子捕まえて来たのかい?」


リーゼルさんはサリナたちに自己紹介した後ニヤニヤしながら俺に言ってくる。


「そ、そんなんじゃないですよ!まったく」


「ハッハッハ!まあ、パーティーメンバーは大切にしろよ!ささ、早く部屋に入って話を聞かせてもらおうか!」


応接室に半ば強引に入れられ、ソファーに座らせられた。


それから、日本について1時間くらい話した。

話したあとはサリナたちとリーゼルさんから質問攻めだったな。


「いやぁ、こんなに楽しい話は久しぶりだったよ。ありがとう!」


「いえ、あのときのお礼ですから当然ですよ」


「謙虚だなぁ!ますます気に入った!あ、そうだ、お礼がいるな少し待っていてくれ」


そう言って、リーゼルさんは部屋を出る。

すると、サリナが


「はあ、アナマス家の当主があんな性格だとはね〜。なんかイメージとはかなり違ったわね」


「まあ、たしかに『名家の当主』ってイメージはないからなぁ。でも、けっこう親しみやすいだろ?」


「まあね。あんな感じの人にみんな付いていきたいだろうし」


たしかにあの人の下でなら安心出来るしな。


すると、リーゼルさんとメイドが小袋と箱を持って戻ってきた。


「これはほんのお礼だ受け取って欲しい」


リーゼルさんはメイドから小袋をもらい俺に渡してきた。


「ありがとうございます。って重ッ!」


「中に金貨100枚ある使ってくれ」


「「「100枚!?」」」


金貨100枚って100万ユナイだろ!?


「いや、さすがにもらい過ぎですよ!」


「なに、あまり使いどころがないお金だ。こういう時に使わずにいつ使えばいいかわからんのだ」


「いや、いくらなんでも・・・」


「いいから持っておきなさい。あとサリナさんとミイナさんにはこれを」


そう言ってリーゼルさんはメイドから箱をもらい中から二つのペンダントを手渡す。


「いいんですか?私達が貰っても」


「あなた達はいずれ強くなる。そのペンダントはいずれ使う時が来るだろう。持っておきなさい」


「「はい!」」


そうして俺達は門まで歩き、リーゼルさんに別れを告げる。


「では、またいつか」


「そうだ、真城くんもあの時のペンダントは持っておきなさい。今日はありがとう!また来てくれな!」


「はい!こちらこそ、ありがとうございました!」

「またくるわね!」

「またいつかお会いしましょう」


「おう!では、またな!」


俺達は礼をして、宿へ戻った。

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