第7話 ラッキーウルフ討伐

恥ずかしい気持ちを切り替えて!


「よし、ではまず、サリナ、ミイナ。ラッキーウルフの捜索を頼む!」


「アイアイサー」

「了解です」


笑顔でそう言うと、サリナとミイナは木々をつたってラッキーウルフの捜索を始めた。

木々に飛び移る際、とんでもない跳躍力だったが。


サリナたちが見えなくなり、俺は周りの探索を始めた。

歩き始めて約10分。俺もラッキーウルフが出ないかなと思っていた。


「それにしても、この森、静かだなぁ」


そうだ。森が静か過ぎるのだ。普通森って鳥の鳴き声など、何かしらの音が聞こえるものなのだが、この森はその音がしないのだ。


「不気味だな」


そう言った瞬間、横から何かが『ウォォォ!!』と吠えながら飛びかかってきた。


********************


その頃、サリナとミイナは。


「ねぇミイナ、この森少し静か過ぎない?」


立ち止まってミイナに話しかける。


「たしかに、静か過ぎます」


どうやら、ミイナもサリナと同じくこの森に異変を感じている。耳のいい彼女達でさえ、小さな音しか感じられないのだ。しかも、真城と別れてから今まで、動物たちにも遭遇していない。


「明らかにこの森おかしいわ。一旦真城のところへ戻りましょ」

「そうですね。この事を真城さんには報告した方がいいかも知れません」


そう言い合った瞬間。


「ウォォォ!!」


大きな咆哮が森の中に響いた。


「真城!!」

「真城さん!!」


彼女達はとっさに真城の危険を感じ、咆哮が聞こえた方向へ飛び出した。


********************


俺は何とか咆哮の主の攻撃をかわした。

一応、反応速度には自信がある。


咆哮の主は白い体長3メートルくらいの狼だった。


「お前がラッキーウルフか」


俺は両腰に差していた二本の剣を抜く。

ラッキーウルフは初心者向けのわりにはけっこう強そうに見える。


「さあ、ラッキーウルフさんよ。俺の初狩の相手になってもらうぞッ!」


一応、異世界に来る前から俺は自他共に認める中二病患者でした。まあそのおかげで死んじゃったんだけどね。

しかし、中二病で強くなりたいが為に柔道や剣道のやっていたから多少の自信はある。


俺は剣を構え飛び出し距離を詰める。剣を縦に横に斜めに振りラッキーウルフにダメージを与える。

そして後ろに飛び距離をとる。

ラッキーウルフは顔と体から血を流している。

これならいけると思ったが甘かった。

ラッキーウルフがとんでもない速さで向かって来て、下敷きになる。

そして大きな口で噛まれそうになった瞬間。


ラッキーウルフが横に吹っ飛び倒れた。

そしてそのまま立ち上がることは無かった。


「一体何があったんだ?」


俺は立ち上がり剣を収める。

横を見ると、サリナとミイナが涙を浮かべて立っていた。


「サリナ、ミイナありがとう」


そうお礼を言うと


「バカ!何で1人で闘ってんのよ!死ぬところだったじゃない!」


サリナが涙を流しながらそう言ってくる。

たしかにそうだ、何のためのパーティーかをしっかり理解していなかった。助け合い、お互いが死なないようにするためだ。


「ごめん・・・」


「心配したし、あんたが食われそうになったのを見たとき心臓が止まるかと思ったんだよ!」

「そうですよ!」


サリナとミイナが泣きながら言ってくる。

俺は、こいつらを心配させてしまった。

とてつもない罪悪感で押し潰されそうだ。


「本当にすまん!」


「これからは偵察も、なるべく私たちは遠くには行かない。だから、あんたも1人で闘うのはだめ。分かったら約束しよ」

「絶対に約束です」


「分かった。約束だ」


そして俺はもうこいつらを一生守って頼っていこうと固く誓った。

い、いや結婚じゃないからな!


その後ラッキーウルフの毛皮を剥ぎ取り、その場を後にした。


10分くらい歩きもう一匹出たので連携して難なく倒したがまだあの静けさだ。

ラッキーウルフを倒しても消えないこの森の静けさについてサリナたちに聞いてみる。


「なあ、サリナとミイナはこの森が変だとは感じないか?」


「あんたも感じてたの?実は私たちも、感じていたのいくら何でも静か過ぎだって」

「そうなんです。耳がいい私たちでさえあまり音が聞こえないんです」


やっぱりか。何か嫌な予感がする。早くラッキーウルフと遭遇し、この森から撤退しよう。

そう思った瞬間。

前の木々がなぎ倒されて、何かが向かってくる。

そして、俺達の前に立ちはだかる。

白い毛の狼型のモンスター。ただ、大きさが今までのラッキーウルフと桁違いだ。

4~5メートルある。


「大き過ぎないか」

「おっきー!」

「大きいです」


どうやら運悪く、俺達はラッキーウルフの親玉と遭遇してしまったらしい。

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