やや散文的+自慰史記的

「自意識の歌」あるところにすっげぇー自意識の強い少年が居ました。

少年は30を目前にして気づきました。


あ、もう少年じゃねぇ。

おれ、おっさんだ。

いつからか、おっさんなった。


おっさんはそれでも強く生きていこうと思いました。


世界はなんだかおれの自意識が心地よく泳げる形をしてないけれど、むしろ自意識を世界に合わせて、すり減らしていこう、多くのことを飲み込み、摺り合わせ、それでもやっぱダメなものにはダメといいつつ、バランスを取りながら、強く生きていこうと。コンクリートの中を泳いでいこうと。グングン岩に染み入る蝉で居ようと。


この信条はそれなりに正しく思えたのですが、人間、とくにあんまり強固じゃない人間は、信条通りに生きるのがなんとも難しく。


ついつい自意識に引きずられがちで、自意識が楽な方、楽な方、つまり、社会的には地獄の入り口をうろついていました。


今日も公園でハト見る日々。古新聞が風に乗ってゆらゆらとおっさんの足下まで流れてきたものの、おっさんは社会が怖いので、一月前の新聞すら見つめられません。


おっさんの逃げ道は主にファンシーな方向に延びていました。


もし、この星からべつのところべつのじだいべつのわたくしに逃れることができたなら。

あのハト一匹一匹が意味を持つ世界に。俺がこうしてハトを見つめているうちに蓄積している何かが活用、爆発、発揮される世界に。世界に一つだけの花が矛盾を刺し貫いて咲きまくってるワールド。


しかし、残念なことに、自意識の強さは、現実から逃げ続けることを許してくれません。

「現実」にとことん疎い自意識でしたが「逃げる」などという「なんかかっこわるい」ニオイにだけは敏感なのでした。


もっと、いい感じになりたい。

言い換えれば、成功したい。

社会的成功じゃなくても、自意識がなにかしら、満足を叩き出す形で。

成功、という程のものじゃなくても、もちなおしたい、軌道に乗りたい。


背景にかっこいい音楽を鳴らして生きたい。

汗を拭って、「今日も寝れねぇのかよぉ」などと嘯きつつ、不敵に笑ってみたい。

無駄に高い栄養ドリンクを飲んで、効率の悪い働き方を、試行錯誤と勘違いして、自己満足に浸りたい。そう、闘ってる俺、逃げない、媚びない、省みない、俺。すてき。


自意識の理想は案外単純で、ありふれたものみたいでした。

それが自意識の限界で、それは、自意識の憧れの一つである、非凡な自意識、達観した自意識、型破りな自意識の求めるもの、どれにも当てはまらない、みじめでありふれた自意識が求めるもの、に思えましたが、でも、他の自意識になる方法が自意識にはわかりません。わかりませんが、救われたい、幸せになりたい。

そんなわけでありふれたものがとってもまぶしい。

金とか、女とか、希望とか、夢とか、そんなんでいい。

自意識はファンタジーより、金が欲しいし、女が欲しい、愛が欲しい。夢が欲しい、希望が欲しい。

だから自意識は走る、自意識は飛ぶ、自意識は本を読む、自意識は書く。少年でもおっさんでも。

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