第10話

「英語表記にしたら?

 俺、Re:あーるいーにするから。」

「それってメールの返信についてるやつだよね? 」

「うん。見覚えあるやつって覚えやすいんじゃないかと思って。」

「じゃあ、英語表記でKeyきーにするか。」



 案外すんなりと、ハンドルネームは決まった。


「決まったことだし、さっきのとこ合わせたい。」


 希の希望で、さっきまでやっていたハモリパートを合わせることになった。

 希の声は、歌うと少し高くなる。そして、高音も綺麗に出るから、多少高くてもしっかり歌ってくれる。

 少し前から歌い始めた歌が、ついに問題のあるパートへと入った。


 恋が奏でるメロディーの上に、迷いなく希の歌が乗った。先程までの迷いはもう無いようだ。

 この2人には、つくづく驚かされる。今まで音楽をやったことはあるのだろうか……。

 ないのだと言うのなら、ただの天才だ。


 そろそろ、動画を作らなければ。この調子なら2人の歌は来週には録音できる。すぐに投稿できるように、今私ができる作業を進めなければいけない。



 曲はそのままラスサビへと入っていく。

 逸る気持ちを抑えながら、私は空想を膨らませた。

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