第6話

「……rain? 」


 2人は、1度顔を見合わせ、もう一度私の顔を見ると、


「えええええええええ!! 」


 ありえないくらいの声量で驚いてくれた。というか、梅染くん、そんなに大きな声出るんだね……。


「あの曲も、この曲も、昨日歌っていた歌も浅葱さんが……!? 」

「一応。全部私が……」


 パソコンの画面と私の顔を交互に見ながら言う蘇芳くん。ものすごく目が輝いてる。


「rainって歌ってるの自分じゃなかったっけ? 」

「そうだよ。今までだましだましやってきたけど、そろそろ限界を感じてて……。

ボーカルをやってくれる人を探してるんだけど……。」


 自分の荷物を漁り、ある物を取り出す。そして、

「2人にやって欲しいなって……。 」

 ダメかな。と小さくて呟きながらそれを差し出す。


「これって、マイク? 」


 蘇芳くんの問いかけに首をちぎれんばかりに縦に振る。


「恋、どうする? 」

「俺はやりたい。」

「奇遇だね、俺も。」


 にやりと笑う2人の姿が、ほんの少しだけ上げた視界に映った。


「浅葱さん、これからよろしくね。」


 2人がマイクを取る。


「ていうか、のぞむでいいよ?

 これから一緒に活動するわけだし、もっと仲良くなりたいしね。」

「俺も、れんでいい。」

そんなことを言ってくれる人はいつぶりだろうか。

「じゃあ、私のこともゆめとお呼びください!! 」


 嬉しさの余り、勢いよく頭をあげると、ガンッと鈍い音がした。


「痛った!! 」


 どうやら、後ろに置いてある鉄製のラックにぶつけたようだ。

 そんな私を見て、思わず吹き出す2人。

 いつもなら、恥ずかしいだけの行動なのに、なぜか今は、一緒に笑い合えた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る