第5話

 やっと放課後になった。

 2人を横目でちらりと見ると、まだ、他の男子と話しているようだった。なので、いつも通りその横を通り過ぎ、第2音楽準備室へと向かった。


 鍵を開け、中に入る。

 今日は鍵をかけなくていい。知らない誰かを怖がって、1人でヒソヒソ活動しなくていい。そう思うと嬉しかった。

 いつも通りの小さな机と椅子が3つしかない狭い空間で一息つき、リュックからノートパソコンを取り出した。

 外付けHDDを繋ぎ、ファイルを開くと、そこには私がrainである証拠がぎっしりと詰まっていた。

 そのファイルの1番上にある、曲をイヤホンでもう一度聞いてみる。

 2人はどんな反応をするのだろうか。

 楽しみで仕方が無い。


 自分にこんなに行動力があったことや人と自分から関わろうとしていること、少し重いけどやめない図々しさ。自分の新たな一面を知れた気がする。しかし、これが果たして良い面なのかは分からないけれど……。


 曲が聞き終わった頃、準備室のドアが開いた。


「浅葱さん、遅れてごめんね。」

「ううん、大丈夫だよ!! あ、申し訳けど一応、鍵かけてもらってもいいかな? 」


 1人ではないと分かっていても、やはり誰かに見られるのは怖かった。いつも教室で1人でいる分、クラスの中心である2人といる所を見られるのは、私にとって大きなリスクがある事だから。


「今日、ギターは? 」

「ああ、家に置いてきたよ。その代わりに今日はパソコンを持ってきたの。」


 そう言って、パソコンに繋いでいたイヤホンを外し、rainの曲を再生する。昨日、歌ったやつだから分かるだろう。


 2人は、パソコンの画面を覗き込む。


「え……」


 蘇芳くんが声をあげる。

 きっと、動画サイトの画面を想像していたのだろう。しかし、今、私のパソコンの画面に映るのは、全く違う画面だ。


「これ、どうしたの? 」


 きっと、rainが歌を投稿しているサイト、『ユアチャン』こと『Your channel』の画面を想像していたのだろう。しかし、今、私のパソコンの画面に映るのは、全く違う画面だ。



「私が作ったの。私がrainだから。」

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