第2話

 高校に入学して、1ヶ月が過ぎた。

 もう既に、クラス内のグループができあがり、私は一人ぼっちが確定してしまったようだ。しかし、そんななかでも、一人ぼっちを寂しいとも、悲しいとも思わない自分が不思議だった。


 来週には、クラスの親睦を深めるための遠足があるらしいが、班は流れでなんとかなるだろう。


 学校のこと、クラスのこと、忘れたいことは全て忘れて、今日もギターをかき鳴らす。

 相変わらず、ギターの音の上には雑音。

 自分で作った曲ですら、ろくに歌えない。なんとも悲しい作曲者だ。

 最近は、音声合成ソフトなんていくらでもあるけど、あの機械っぽさが残る声を好きになれず、使うことを未だに拒んでいた。自分じゃ歌えもしないのに。


 誰か、私の歌を歌ってくれればいいのに。


 そんなことばかり思いながら歌ってた。



「……浅葱あさぎさん? 」

 声をかけられ後ろを振り向く。そこにはクラスの中心である男子・蘇芳希すおうのぞむ梅染恋うめぞめれんだった。


 なぜだ。私は鍵を閉めたはず。

 どうやってここに入ってきた。

 というか、聞かれた……?


 色んな感情が駆け巡る。

「突然ごめんね。知ってる歌が聞こえてきたからつい……。」

 2人を見つめたまま、なにも応えられずにいると、蘇芳くんが理由を話してくれた。


「ごめんね。こんなお耳汚しな歌……。」

「まあ、上手いとは言えないね。」

 意外とズバズバいうのね、 蘇芳くん……。

「ギターも浅葱が?」

 梅染くんに尋ねられる。

「あ、うん。一応。」

「ふーん。」

 興味があるのかないのか。聞いておきながらよく分からない返事だ。


「そろそろ、私は帰るね。」

 なんだか、この空間がものすごく居づらくて、逃げ出したかった。だから、ギターをケースに仕舞い、帰ろうとした。


 ああ、この場所ももう使えないのか。せっかくだけど、鍵を返そう。そして、できれば他の部屋の鍵をもらえないか聞いてみよう。


「待って!! 」

 言葉と同時に、私の肩を掴んだ手は、思ったより力が強くて、簡単に彼らの方を向かされる。

「もう少し、ギター弾いてくれない? 」

「さっき弾いてたrainの歌でいいから。」

「「俺らが歌うから。」」


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