第3話~新学期~
着慣れない制服に袖を通し、鏡の前で自分をみる。少し変な風景だ。どこか懐かしくもあり新鮮で、それでいてなんか自分が大人になった気がしていた。母親も「豊も大きくなって」と涙ぐむシーンもあり騒がしい朝の始まりだった。
「ピンポーン」と家のチャイムが鳴る。
「ゆーたーかー!早く行くよー!」奈緒子の声だった。「あぁ、今行くからー」
通学路でふと感じる疑問を奈緒子に聞いてみた。「新入生って何人?」奈緒子は僕に向かってピースサインをする。「なんだ、200…い、いや、ここは田舎だから20人?」奈緒子は更に笑顔になり「2人!」と言った。
「えぇ!2年生と3年生は?」「えーっとね、2年生は3人で3年生は5人だよ!」その言葉に僕は驚いた。アニメで見るような学校を思わず想像してしまった…。
学校に着くと、想像していた小さい学校ではなく、普通のどこにでもある学校だった。
入口には「新入生!ご入学おめでとうございます」と書かれた看板もあり、わずか2人の門出を祝うには大げさなのかもしれない。これには、さすがの奈緒子も驚きよりも照れを隠せない表情だった。
新入生わずか2人の入学式に保護者・町民が50人以上、この町では運動会も含め全てが町ぐるみで動いており、この町ではこの風景があたりまえなのだ。思春期を向かえた僕にとっては嬉しくも恥ずかしい気持ちを隠さないでいいのが幸いだった。
僕と奈緒子は手を繋ぎながら町の皆で作られた人間アーチを歩きながらお互いに顔を赤らめて席に着いた。
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