お別れ
遂に見つけたヒトの縄張り、それはジャパリパークの外に延々と続いていた。かばんちゃんと私、「またきてね!」と書かれた看板が上にある。かばんちゃんの方にはなんて書かれているんだろう、知るすべはなかった。
「良かったね、ヒトの縄張りが見つかって」
「ありがとう。サーバルちゃんがいなかったらきっとここまで来れなかった」
本当に、ありがとう。そう言って真っ直ぐこっちを見るかばんちゃん。まだヒトだと分からなかった頃のおどおどとした様子は感じられず、自信とそれに見合う強さがひしひしと伝わった。
「私もかばんちゃんといられてとっても楽しかったよ。またいつでもパークに遊びに来てね!」
「うん。絶対にまた会いに行くね」
日はだんだん地平線に沈んでいって、赤と青のグラデーションを作り出す。その光景はさばんなちほーで一度お別れした景色にそっくりで。
かばんちゃんの後ろには私達に優しくしてくれたヒトがいっぱい。ヒトが群れを作る習性なのは初めて知って、それをこの間かばんちゃんに話したら恥ずかしそうに、それでも誇らしげに頬を掻いた姿を思い出した。
「じゃあ...またね」
「またね、サーバルちゃん」
さっきまで二人で歩いた道を一人歩き出す。
一回振り返る、かばんちゃんが手を振る姿が見えた。
もう一回振り返る、まだ私のことを見て手を振っていた。
もう一度振り返りたかったけれど、これ以上かばんちゃんの人生を引き止めるのは嫌だと思って必死に駆け出した。
後ろ髪引かれる思いでなんとか前に走る。がむしゃらに駆けて、小石につまずいて、それでも手をつかないで森の中を進む。途中、頬に温かい雨が落ちる。水の中みたいに視界がぼやける。それでも走った。
「っうぁ...はっ......っみゃ!」
遂には地面に思い切り倒れこむ。黒い染みが二つあるのが見えた。
「うぅ...いたい...」
大丈夫?と手を差しのべてくれるヒトももういない。ただ一人薄汚れたスカートの端を握り締めて嗚咽を漏らすだけだった。
ふと、足音が聞こえた。ざっざっ、と規則正しく。
だけど私は聞く気にもならなかった。こぼれ落ちる涙をひたすらに拭うので精一杯。
「サーバルちゃん」
聞いたことある声。いつも真っ直ぐ私を見てくれて、優しい...
「えへへ、やっぱりもう少し一緒にいようかなって......あれ、さ、サーバルちゃん!?」
「か、かばん、ちゃん...!う、うぅ...っ」
すっかり辺りは暗くなって、相手の顔は見えなかったけれど間違えようもなかった。
「かばんちゃん、あのね、私、凄く悲しくて」
「うん...うん」
全然収まることのない涙が頬を伝う。かばんちゃんは私の背中を擦りながら話をきちんと聞いてくれる。
「今も、会えて嬉しいのに、なんでだろ、まだ涙が出るの、おかしいな」
「大丈夫。もうどこにも行かないよ」
しゃくりあげる私の声と小さく囁くかばんちゃんの声がどこまでも反響した。
□■□■□
アニメけものフレンズが終了するとき、かばんちゃんとサーバルちゃんが一緒に暮らす終わりが一番素敵だと思うのですが、もしフレンズがパークの外では生活出来ない体だとしたら...とても辛い別れになると思います。それでもどうか二人には幸せでいて欲しいです。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます