ヒトの天敵

「ふむ...料理には様々な調理法があるのですね」


「そして料理は更に種類が豊富なのです...」


 場所はとしょかん。お日様はまだ真上に程遠く、朝ごはんが終わっててもいい頃。博士のアフリカオオコノハズクと助手のワシミミズクはもう昼ごはんの話を始めている。


「この「野菜炒め」とやらも美味しそうなのです。今度ヒグマに作らせるのです」


「たまには「スイーツ」とやらも良いのです。これなら火を使わずに作れるものも多いのです」


 沢山の料理本を机に乗せて、美味しそうな料理を探す。早朝から読んでいるというのに未だに一冊目の半分にも満たないのは、ページを捲る度にあれこれ言っているから。

 そんな二人の机に何やら小さなものが飛んではとまる。そして、がたんと椅子が倒れる音がした。


「この「アイス」がとても美味しそうなので......博士?どうしたのですか」


 アイスのページをまじまじ見ていた助手は突然机から離れた博士に振り返る。


「じ...助手...逃げるのです...」


「わけが分からないのです、一体なに...が...」


 そして、助手は博士の恐れた相手を見つける。



「...て、てんとう虫...!?」







「まずいことになったのです...てんとう虫が机にいるのです...」


「外でならなんともないというのに、何故としょかんの中で会うとこんなにも怖いのでしょう...」


 あっと言う間にとしょかんの入り口まで逃げた二人は遠目に今まで平然と座っていた机と椅子を眺める。


「きっとこれは、ヒトの弱点なのです。元が鳥の我々は虫を恐れることはないのです」


「なるほど、ヒトの特性を得た私はヒトの弱点を得たわけですね...しかし、この状況は一体どうすれば...」


 相変わらず机に近寄ることの出来ない二人。


「仕方ないのです...私が行くのです」


「博士...!」


 大きく深呼吸をして、静かにそぉっと机に近寄る。「博士、どうですか?」


「いない...ですね」


「飛んでいったのでしょうか?いずれにせよ、一件落着なのです」


「全く、迷惑なやつなのです...さて、続きを読みますか」


 無駄だった緊張感に手を振って再び読書、言わば食の世界へ。いつもの二人ならばすぐに元のように読書をするだろう。しかし、このあとの二人はしばらくの間肩をびくんと跳ねさせたり、やたらと周りを気にするようになったのはまた別のお話......






□■□■□


 今回はギャグ(?)なお話。外の虫より家に出てくる虫はなんだか強化されているような気がします。本当は「棒にてんとう虫を乗せて外に出そうとするも飛ばれて慌てふためく二人」や「カワウソとジャガーが持ってきたてんとう虫柄のフリスビーが飛んできて驚く二人」だったり「かばんがてんとう虫平気なのを見て唖然とする二人」を書きたかったのですが、技量が足りなくお役御免に...ですが、てんとう虫にビビる二人を書けたので良かったです。

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