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「だからとってもかなしくて」
「そうか」
コタロウはどちらかと言うと引っ込み思案なタイプなんだと思う。きっとリョータ君は特別な友達だったに違いない。
別れは辛いよな。
引っ越しをする友達を想って泣くコタロウに、自分の過去がうっすらと重なる。小学校三年になる春に引っ越した俺は、悲しくて寂しくて親にばれない様に引っ越し先へ向かう車の中で一人、涙を流していた。きっと気づいていただろうけれど。
「寂しくなるな」
これから先、きっと友達なんて何人も出来るんだろう。でもそんなこと今じゃわからないんだ。大好きな友達と離れ離れになる。しかも簡単に携帯で連絡を取り合ったりなんかも出来ないんだ。
手紙書くね、電話するね。その気持ちは絶対に嘘じゃない。でも絶対に忘れないって思っていても、どこかで思い出まで消えてなくなってしまうんじゃないかと考えてしまうんだ。だってその思い出はもう更新されないのだから。
大好きだからこそ、別れは辛い。
「明日はリョータ君に会うのか?」
「うん・・・でも」
「でも?」
「たいじょうぶ」
「ん?」
小さな手のひらで頬をグイッと拭って言った。
「あしたはなかないから。ぼくがないたら、りょーたくんこまっちゃうから」
困る? 困るから泣かない、なんて。
「さみしいけれど、えがおでばいばいするんだ」
涙を一杯に溜めてコタロウはニッと微笑んで見せた。そうか、この子は、
「格好いいな、コタロウは」
ポン、と頭を撫でると、コタロウはすくっと立ち上がった。二本の脚で、しっかりと地面を踏みしめて。その顔はしっかりと男の顔付きだった。
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