◆ミドル6◆ 暗躍する影

時吉:車中で話をするよ。「先に謝っておく」

シシリー:「謝るぐらいなら先に言うべきだと思うのよね、私。これだから情にもろい中年男は嫌だわ。どうせ娘に似てたとか言い出すんでしょ」

時吉:「言い訳はしない。だが……世の中色々見てきた人間がブチ込まれるのと、これから世の中を見なきゃいけねえ人間がブチ込まれるのじゃ話が違うだろ。そういうのは、ちょっとどうかと思っちまっただけだ」

シシリー:「えーっとねえ……まず、前提条件が間違っているの。あの子がそのままでいる方が世界は壊れてしまうわ、あの子のね。友人に化け物と罵られるあの子が見たい?」

時吉:無言で聞いているよ。

シシリー:「日本政府がオーダーを隔離している理由には、人間からの迫害による揉め事を抑制しているという側面もあるの。だから私たちはね、何も別に、都会に放たれた虎やライオンを捕まえているわけではないのよ」 と言いながら車を走らせます。

時吉:「俺は目撃者を一人見ただけだ」

シシリー:「白い血をした目撃者、ねえ」

時吉:「現場に白い血が残っていたことと目撃者には、繋がりはないだろ」

シシリー:「嘘が下手な男ね。で、どこまで走ればいいの?」

時吉:中村羊夏の家まで口頭で道案内をするよ。

シシリー:家の前から少し離れた場所に停めて様子を見ます。

GM:彼女の部屋の電気が消えていますね。

時吉:俺は消していない。

シシリー:寝たのかな。

時吉:さっきと同じ手順で部屋の中へ見に行きます。いますか?

GM:いません。ベッドの布団がこんもりしていて、めくると、衣服やぬいぐるみが詰め込まれて人の形を装ってあります。

シシリー:子どもの偽装だ! かわいいなあ!

時吉:そのまま車へ戻ります。

シシリー:「おかえりなさい」

時吉:「留守みたいだ」

シシリー:では車に搭載されている電話を使って調べます。

時吉:「俺が調べて伝えたところでお前は信用しないだろう」

シシリー:「そうね」警察署に電話して、中村羊夏という名前を確認してもらいます。(コロコロ)……04! クリティカル!

GM:つっよ!

時吉:まごうことなきクリティカルだ。

GM(電話口の署員):「中村羊夏、ね。いたいた。最近リスト入りした未登録オーダーだ。危険レベルが高いね。能力の対人使用の疑いがかかっている」

シシリー:「報告を上げたのは誰?」

GM:「エントゲーゲンだよ。お前も知っているだろう。オーダー犯罪対策班のやり手だ」

シシリー:「エントゲーゲン先輩、ねえ」私のコネクション相手だね。(PCハンドアウトに)同僚って書いてある。

GM:「やり口は強引だが結果を出してんだから周りは文句を言えねえよな」

シシリー:「了解ですー」と言って切ります。「もうあの子追われてるわね。捕縛対象としてリストに入ってるわよ」

時吉:(深いため息)

シシリー:「オーダー能力の対人使用の疑いがある危険人物ですって」

時吉:憮然とした顔をする。「……そうか、追われちまってんのか……」

シシリー:「みたいね」

時吉:「まあ、俺たちには俺たちの仕事があらァな…………ただ、対人使用した経緯は知りたいな」

シシリー:「本人に聞けば?」今から会いに行くんだし。

時吉:…………うん。さっきあったことを洗いざらい全部しゃべるよ。「正直に言っちまおう。自分の娘と変わらない年の女だ。そいつが行かなきゃと言っていた。それは俺の仕事だからお前は布団をかぶって寝とけと送り帰したけれど、部屋にはいなかった。もしまた何か義務感みてえなもんに駆られてるんだったら、戻ってるのかもしれねえな」

シシリー:「まあ。義務感かどうかは知らないけれど、そういう話は早めにしておいて欲しかったわ」ではエントゲーゲンについても調べておきましょう。

GM:どうやって調べますか?

シシリー:同僚に電話をかけて尋ねます。エントゲーゲン本人に直接ではなく、私の親しい同期に(コロコロ)…… 18、クリティカルだよー!

GM:電話をしたら、エントゲーゲンは今いません。同期曰く、「あの人いつもいない。忙しいみたい。エリートはやっぱ違うよね」

シシリー:おっかしいわね。本来ならネフィリム討伐班の我々の方が、オーダー犯罪対策班より忙しいはずでしょ。「なんであの先輩いつもいないの? 意味わかんない」

GM(同期):「小細工に忙しいんじゃない? 噂だけど、ネフィリムを誘導してオーダーのあぶり出しに使ってるとか。本末転倒よね」

シシリー:「そんなことできるの?」

GM:「知らない。噂だもの。だけど、根も葉もない噂にしても、あの人が相当嫌われてるってことは確かね」

シシリー:「そっか、ありがと」ガチャン。

時吉:「どうだった?」

シシリー:「エントゲーゲン先輩はぁー、ネフィリムを誘導してまでオーダーを確保しているという噂が立っているらしいわぁー」

時吉:「ネフィリムの誘導なんかできるのか?」

シシリー:「発生さえしてしまえばできるんじゃない? 要は追い込み漁と一緒でしょ」

時吉:「判断するには情報が足らんな」

シシリー:「行ってみればわかることよ。彼女がまたネフィリムと戦っていて、そこに怪しげな影がいたらクロ」

GM:では先程の現場まで戻りますか?

シシリー:その前に、本部に連絡して、「先程ネフィリムを討伐した地点にて、再びネフィリムが発生したという通報を受けたため、現在急行中です」と一報だけ入れて車を出します。

時吉:「そんな通報はあったのか?」

シシリー:「いいえ。でもたぶん発生してるわよ」

GM:では、あなたの連絡とすれ違うようにして、無線に連絡が入ります。「まだ現場にいるか?」

シシリー:「今向かっているところです」

GM:「同じ場所にまたネフィリムが出現したとのことだ。キミたちは殲滅したはずだよな?」

シシリー:「その通報は誰からありましたか?」

GM:「匿名の通報だ」

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