伊藤愛夏さんの「SWEET DAYS」

伊藤愛夏さんの「SWEET DAYS」

https://kakuyomu.jp/works/1177354054885520552

ロックが好きな若い女の子がサンフランシスコに90日ほど滞在するお話です。


あまり小説っぽさを感じないというか、劇的なことは起こらずただ異国の地で少し過ごした、というお話です。

主人公はサンフランシスコに発つ前に失恋をしているのですが、失ったものが物語の中で特に解決を見ないのが独特で、確かに現実の旅とはこういうものだなと思いました。

文章は淡々としていますが無味乾燥というわけではなく、比喩などもわざとらしくなく効果的に使われていて心地よく読めます。名前のある登場人物が多いのですが、それぞれ物語の役割を背負っておらず、主人公の旅にたまたまそのとき居合わせた人、という感じで名前が出てきてもさらっとそのまま読み進めることができるし、人物の多さが現実味を感じさせるので私はこのままでもいいのではないかなと思いました。

本当に主人公と旅をしているような読み心地のお話です。


さらっとしていて読んでいるときは心地いいのですが、個人的な好みとしては少しさらっとしすぎているのかな、と感じました。読んでいて思い入れる要素が少ないというか。

こういう主人公の心情の変化などに特にスポットを当てない書き方をするなら、小さな出来事や土地のことや食べ物など、そこに実際あったもの、主人公が見たものをもう少し書き込んだほうが読者に思い入れる余地が生まれるのかな、と思いました。

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