阿瀬みちさんの「She said...」
阿瀬みちさんの「She said...」
https://kakuyomu.jp/works/1177354054885576381
暴力をふるう女性と付き合っている男の人の話。
一回外でスマホで読んでから「猟奇的なキスを私にして」を聞きながらもう一度読みました。
とても短い話ですけど文章がとても読みやすいし情景もわかりやすい。
特に「しらたき」が原因で彼女が暴力をふるい始めるエピソードがとてもいいと思いました。いかにもそういうことはありそうな理不尽さがよく伝わってきます。
ただこの話、実のところ全体的にどう読んでいいのかがよくわかりませんでした。「ぼく」は暴力をふるわれている割にはかなり平静に感じます。「暴力」を前に出すような書き方をしている割には、主人公が暴力をどう捉えているのかがよく見えない。「ぼく」という人物がそこにいるのは理解できても、顔が見えてこない。読者が彼に思い入れるには少し材料が足りない気がします。あとキャラクターの設定と文体が少し不釣り合いなように感じます。自動車整備をする人っぽくない独白の仕方に見えますが、このギャップは意図したものなのか。
また彼女の人格も暴力をふるっていること以外にはよくわからない存在です。ラスト、その状況でパートナーにフジロックに行くのを許すというのはかなり寛容なタイプに見えてしまい、そのよくわからなさが意図したものなのかどうかがよくわからない。
物事について読者に考えさせずさらさらっと流すならもっと特定の出来事に焦点を当てていないふりをして、何かに焦点を当ててものを書くならもっと踏み込む、ほうがいいのかなと個人的には思います。
それと
>ついでに古池さんの「私にとって短編小説とは」的なお話もお聞かせ願えると嬉しいです!
ということですが、実はそれもよくわからない……。短編小説とは分量が少ない小説のことであって、それによって何を実現するかはそれぞれの書き手にゆだねられていると思っている。だから正解なんかないのだ。
ただ書き手としての私は中学生ぐらいのときに読んだ「小説は天帝に捧げる果物、一行でも腐っていてはならない」という言葉のインパクトからまだ自分を解放できないので、意味がない描写は一言も入れたくない。そう思っていますね……。
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