ライフゲーマー

音月 凛

第1話 ikasama

少し前に梅の花が咲き始めたなと思えば、もう既に桜の時期になってしまった。時が流れるのは速く、そして時に残酷である。

『…彼の容態からして…』

『…そんな…まさか…』

『…だったでしょう…』



あれ



…俺なんで生きてんだろう。



「はっ!」

目が覚めると俺は家のベッドで寝ていた。今日は夢を見た気がする。正直に言ってあまり覚えていないが、いい夢とは

いえない。

「寝不足かなぁ…」

カレンダーを見ると3月24日、土曜日だ。時計も見ると午前9時、一体何時間寝ただろうか。

「やべぇ!部活遅刻する!…」

もう1回カレンダーをチラリ。今日は休み。

「良かったマジで」

という事は1日フリーという訳だ。久しぶりに出掛けようか、それとも家でゆっくりするか、そんなような事が頭をよぎる。何気ない日常。休みってなんて幸せなんだろう。

「まだ9時だしもう一眠りするか」

布団をかぶる。暖かい布団がまた眠気を呼び起こす。

…ストン


意識が落ちた。


目が覚めると当たり前のように自分のベッド。時計を見ると9時。あれ、おかしい。さっき9時に寝て、起きたら9時。…勘違いかもしれない。もう寝るのはよして出掛けようと思い、スマホと財布に手を伸ばし、パパっと着替えて自転車にまたがる。外に出ると気持ち良い追い風で、スイスイと自転車が進む。心地よい。やはり外に出てきて良かった。スイスイ飛ばしていく。

プツン

何かが切れた。気にせず飛ばしていく。

交差点が近付き、ブレーキを握る。

「効かないっ!」

切れたのはブレーキのワイヤーだった。物凄い速度で交差点へ突っ込んでいく。


死ぬ前に一瞬見えると言われている走馬灯。親の顔、好きな人の顔、色々な事が浮かぶ。あぁ、死んでしまうのか。自分でも分かってしまう。そしてそれがとても辛いし怖い。そして…

鈍い音と共に意識が落ちた。


「…うっ…」


『…事故の衝撃や…』

何かが聞こえる

『…彼の容態からして…』

『…そんな…まさか…』

母の声。

『即死だったでしょう』


この浮遊感。


覚えてる。


あの時、


あの浮遊感。



…死んだのか…

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ライフゲーマー 音月 凛 @rapido0516

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