27:手紙の解読

それから間もなくして二通目の手紙が届いた。

二通目も一通目と同じ薄い水色の便箋封筒で綺麗な字で『立花楓花様』と書かれていた。

私は便箋を取り出し読み始めた。


『最愛なる立花楓花様

 約束通りに二通目の手紙を書いたよ。

前の手紙はどうだっただろうか?

僕の愛が伝わったのなら良いんだけど。

それと僕の事を気付いてくれていると嬉しいな。

さてさっそくだけど今回も君の為に詩を作ったんだ。

二つ目の詩さ。


『好きな言葉が知りたい

君に送る言葉を

母なる大地と

大きな愛を

ほぼ手中に収めるために

会えない日々が

とても辛い

会いたい気持ち

叶えたい

恋焦がれる

この気持ち

だから君に告げよう』


どうだろうか?

僕が君を想うあまりに出来上がった詩だよ。

この気持ちを君は受け取ってくれるだろうか?

君の永遠の恋人より』


……またも意味不明……

一体何が言いたいのか……

この詩のところに意味が隠されているのだろうと思うが……皆目見当も付かなかった……

私は詩の部分だけ何度も読み返したがさっぱり分からなかった。

一人で考えるのも限界があると感じた私は、美彩にこの手紙を見てもらう事にした。

美彩に電話すると、美彩はすぐに来てくれると事だった。

しばらくして美彩が来てくれた。


美彩はもう慣れた感じで私の家に上がり込む。

美彩に手紙を渡し見てもらった。

美彩は手紙を読みながら怪訝そうな表情になる。

「また、良く分からないね……」

一通り読み終えた美彩の第一声。

「そうなのよ……この人、一体何がしたいのかさっぱりなのよね……」

こうなってくるともはや悪戯なのではないかという疑問が湧いてくる。


「それで、南部さんに相談してみる?」

「ううん。たぶんこの間と同じだと思うので止めておくわ」

美彩の提案を断る形になってしまった。

「そうね。それにしても一体誰がこんな手紙を……」


手紙はパソコンやワープロで印字した文字ではなく、綺麗な筆跡の手書きだった。

おそらくこの手紙には差出人の指紋がべったりとついていると思う。

正直、指紋採取をして貰いたいくらいだが……

しかし、事件になっていない案件で指紋採取など行って貰えないだろう。

はっきり言ってお手上げ状態だったので、それ以上考えることを放棄することにした。

「美彩、紅茶飲む?」

なるべく明るい表情で美彩に聞くと

「うん。ありがとう」

美彩は嬉しそうに返事をした。

しばらくの間は美彩とお茶を楽しんだ。

学校の事や、美彩の習い事の話で盛り上がった。


数日後、あの手紙が再び届いた。

またもや意味不明な内容で、私と美彩を悩ませるだけだった。

その後も何通か届いて、その後はピタリと手紙が届かなくなっていた。


私と美彩は改めて手紙の解読を試みようとした。

「ごめんね……」

このような気持ちの悪い手紙を美彩に見せてしまって申し訳ない気持ちになる。

「何言っているの?いまさら」

美彩は笑いながら答えて、手紙に目を落とす。

私も全部の手紙を再度読み直してみる。

気になるのがやはり、詩と呼ばれる部分だ。


1通目は

『いつも君の事を想っている

 綿飴のような表情

白い肌は美しく

ロマンチックな気持ちにさせてくれる

二人でいることを夢見ている

海や山に一緒に行こう

風を感じて二人で踊ろう』


2通目は

『好きな言葉が知りたい

君に送る言葉を

母なる大地と

大きな愛を

ほぼ手中に収めるために

会えない日々が

とても辛い

会いたい気持ち

叶えたい

恋焦がれる

この気持ち

だから君に告げよう』


3通目

『素敵な君に

 この身を捧げたい

君の望みを

僕は叶えたい

それは僕の喜び

その想いは

愛や恋では語れない

君を包む

その心が

 虚ろになっても

愛している

僕たちは

信じあい

ロマンチックな夜は

全部

一つになるために

君を抱きしめよう』


4通目

『君と私は

 共に旅に出る

美しい世界を

二人は手に入れる

美しい未来が

見つかった時

君の手に

眩しいくらいの輝きが

留まることを知らずに輝き続ける』


5通目

『僕らの始まりを

 君は信じるだろうか

神の国に祝福されて

君は安心すると良いよ

だってこの世界は

僕らの全てを

敬うべきなのだから

全ての天使が

幸せを運んでくれる』


全部で5通届いた手紙の詩をまじまじと読む。

ところどころ気になる点がある。

段落の区切りや統一性の無いところがある。


例えば、差出人の一人称が『僕』だったり『私』だったりと違って書かれている。

他にも『僕たち』と『僕ら』。


あと3通目の段落の区切りが気になる。

『愛や恋では語れない』と一行で書かれていると思ったら、

『君を包む』

『その心が』

『虚ろになっても』

『愛している』

のように4行にわけて書かれていたりする。

普通なら、『君を包む、その心が虚ろになっても愛している』と一行で書きそうなものなのだが……


全体的に何かつぎはぎしたような詩になっている。

しかし、この詩に何か意味があるような気がする。


美彩もこの詩に何か意味があると感じたらしく、詩の内容を声に出しながら読んでいるのだが……

『君を抱きしめよう』みたいな恥ずかしい文章も惜しげもなく読むものだから、少し照れてしまう。

そんな美彩を見つめ、詩に視線を戻した。


私は詩の部分だけをノートに書き写した。

一言一句間違えないように。

書き終えた詩を見ながら、暗号文を解読するかのように色々と試してみる。

例えば、後ろから読んでみたり、各行の一つ目を読んでみたりと……


そして、いとも簡単に暗号が解けた。

この手紙は明らかに私宛に出された手紙だ。

しかも、私の旧姓を知っている人物。

『立花楓花』ではなく『』の名前がはっきりと書かれていた。

それに、自分の名前などどうでもいいほどの衝撃的な事が書かれている。

私は自然と震えていたのであろう。


「楓花?大丈夫?」

美彩の声にビクっと反応した。

「あ、うん……」

「どうしたの?」

美彩は心配そうな表情で問いかける。

「え……えっと、この手紙の内容が分かったの……」

自分の声のトーンが少し低い気がした。

「え?本当?」

「うん……」

美彩は一瞬、嬉しそうな表情になるが、私が怯えるように震えているのを知って、不安そうな表情になる。

「だ、大丈夫?」

「うん……」

「少し休憩しよう」

美彩の提案に、無言で頷いた。

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