第四章 容疑者!?

16:美彩とのひととき

「ねぇねぇ、この服、楓花に似合うんじゃない?」

 美彩が手に取った洋服はフリフリの着いたピンク色の服。

「えー私はもっとカジュアルな大人っぽい方が似合うと思うけど」

「……」

「ねぇどうして無言!もしもし美彩さん聞こえていますか?」

「あ、ごめんごめん。なんか幻聴が聞こえて」

「そうなの?それは病院に行ったほうが……って違うでしょ!」


 美彩とはいつもこんな会話で笑っている。

 大体いじられるのは私と相場決まっているのが謎だけど。

 土曜の昼下がり、美彩と少し離れた町まで買い物に来ていた。

 この辺りでは一番大きな町でなんとデパートまであるのだ。

 それは行くしかないでしょ!


 というノリで二人で来てみたのはいいんだけど、私みたいな庶民の高校生がデパートで買い物など出来る筈などないことを思い知らせた。

 どうして出来ないかと言うと、価格設定がおかしい気がする。

 とにかく高い。初めは桁を間違えて印字しているだけだと本気で思った。

 こっそり美彩に

「桁間違えてる?」

 なんて声を掛けたら、

「え?間違っていないよ。これが普通だと思うよ」

 なんて言われてショックを隠し切れなかった。


 そんな私の様子に気付いてくれた美彩がデパートを出て、比較的安い店に連れて行ってくれた。

 庶民の私でもなんとか手が出せるほどの店。

 その後は雑貨屋さんなどの店を堪能した。


 少し疲れが見え始めたのでカフェに入った。

 とてもお洒落なカフェで、テラスから見えるガーデニングがとても癒された。

 私は紅茶とシフォンケーキを頼み、美彩は紅茶とパンケーキを頼んで、二人で食べ比べなどをした。


「ところで、あれからどう?」

「あれからどう?」

「近藤さんの事件の事」

「あ、あれからは何も音沙汰がないよ」

「そうなんだ……」

 パンケーキにフォークを刺しながら美彩は言った。

「気になる?」

「うん。あそこまで聞いちゃうと気になっちゃうよ」

「そうだよね」

 私は紅茶を一口飲んで、

「それなら、南部さんに電話してみようか?」

 スマートフォンを鞄から取り出そうとした。


「でも、迷惑かも知れないし……」

「あの人たちに迷惑とか無いと思うよ。いつも私が迷惑しているのに付きまとうし」

 笑いながら言うと、

「何それ?」

 美彩も笑顔で返す。

「どうする?」

「うーん……もし聞いて迷惑そうなら止めよう」

「分かった」


 私はスマートフォンを取り出し、南部さんに電話を掛けた。

 しばらく呼び出し音が鳴る。

「はい。どうしたの?」

「あ、南部さん、今大丈夫ですか?」

「ああ、いいよ」

「この間の近藤さんのパソコンの件どうなりました?」

「それね、今、ちょうど見ている所」

「そうなんですか……」

 私も若干気になる。

「楓花ちゃんも見るかい?」

「いいんですか?」

「もちろんだよ」

 願ってもいない提案だった。

 私は美彩に視線を向けて

「あの……美彩も一緒でもいいですか?」

「美彩ちゃん?」

「はい」

「別に構わないよ」

 南部さんは美彩も良いと言ってくれた。


 何て刑事らしからぬ人なんだろうと思った。

 自分で頼んでおいてなんだけど、普通は民間人に見せて良い情報ではない気がする。

「それじゃ、署まで来てもらえるかな?」

「はい。分かりました」

 そう言って電話を切った。

「美彩、今から近藤さんのパソコンを見に来ても良いって」

「本当!ありがとう」

 とても嬉しそうに美彩は喜んだ。

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