荒事は任せろひいおじいちゃん
「起きたか桃花」
そうだった、そういや私の名前桃花だった。誰だろこのイケオジ、知らないなぁ。
あ、そうだった、ひいおじいちゃんだった。
「ここはどこ……、何やら騒がしい」
「とりあえず一服しようとしたところ、火がなくてな。そこの兄ちゃんたちに頼んだところ、刃物を突きつけられた。どうやらここで生きていくには多少の荒事には慣れる必要がありそうだ」
ひいおじいちゃんが顎でくいっと目線を誘導した先には、ひいおじいちゃんの一発を顎に食らったであろう若者がだらんだらんにのびていた。
というか、頼む相手もおかしい気がする、見るからに荒くれ者のような格好をしてる兄ちゃんに煙草の火をせがんだのかこのイケオジは。
結果、喧嘩をふっかけられて、この有様とな。
相手も自業自得ではあるけども、ひいおじいちゃんも頼む相手くらい考えようよ。
「このまま煙草に火をつけられないってのも不便だな……。男ってのは心休まる何かがないと落ち着いていられない生き物なんだが」
「だからって荒事起こすのだけはやめてねひいおじいちゃん」
私はがっしりとした体格……、筋肉のかたまりと化したひいおじいちゃんの背中をパンパンと叩くと、周りの状況がどうなっているのか見渡した。
見た感じ酒屋。目の前で倒れている荒くれ者のような人がたちが顔を真っ赤にして馬鹿騒ぎしている。
これだけ騒いでいたらひいおじいちゃんがぶん殴ってもそこまで目立たないわけだ。
ある意味助かったけど、次からはこうはいかない……。銃弾で致命傷を負うほどのダメージを受けても何度でも立ち上がった戦闘狂だったって逸話を何回聞いたことか、歳をとったひいおじいちゃんは落ち着いていたけど、若さを取り戻したひいおじいちゃんが何をしでかすかなんてわかったもんじゃない。
兎に角、今はひいおじいちゃんをこの場から離れさせるのが最優先。
こんな酒臭いところに長時間いたら私の方がギブアップしてしまう。
だが、振り返るともうそこにひいおじいちゃんの姿はなかった。
……気づけばカウンターにいる女店員に話しかけているようで、いや、勝手にナンパしてんじゃねぇよ色男。
私は無言でひいおじいちゃんの腕を両手で掴むと、そのままずるずると外まで連行した。
「全く、ひいおじいちゃんに嫉妬か桃花」
「んなわけないからッ!」
ハードボイルドひいおじいちゃんと異世界転移 ちきん @chicken
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