ハードボイルドひいおじいちゃんと異世界転移
ちきん
さよならひいおじいちゃんさよなら私
「大好きなおじいちゃんが亡くなった……。もう立ち直れない死ぬ」
これが、私の最期の言葉だった。
いやまさかね、まさか自分まで死ぬなんて思ってなかったよ。死ぬほど辛いって比喩だったんだから、実際に死のうなんて思ってなかったよ。
でも、この数秒後、昔から弱かった心臓のせいで。心臓発作で心肺停止。
病院に救急搬送されるも手遅れの状態、私自身も幽体離脱してこりゃもう助からねぇわ状態。
現世に未練しかないのも辛いけど、私からするとひいおじいちゃんについて行けるってこともあったからそこまで寂しいというわけじゃなかった。
いや、家族には申し訳ない、いや本当にまじで。
もう親の顔見たくないもん、地獄を見させられてるような表情してるもん、そりゃそうだわ。一日に身内2人も亡くなるとか病むわな。
今からでも冗談だよーんて起き上がりたいけど、どうやら私の身体にはもう戻れないようで……。
上の方にひいおじいちゃんが見える。どことなく呆れてるような顔をしている気が。たしか、ひいおじいちゃんは戦争中最も活躍した軍人と讃えられていた。
計り知れない生命力で何度も立ち上がったサイボーグだとかなんとか、病弱な私とは正反対である。
上の方で「はよ戻れ!!」と慌てて叫んでいるように見えるひいおじいちゃん。
だけどごめんね、もう戻れないとこまで来ちゃったらしい。
私とひいおじいちゃんはそのままふわぁーっと綿菓子が風で宙に浮かんでいくように天まで昇っていった。
のぼりにのぼって雲の上まできた! というところで身体はゆっくりと静止、目の前にいる白髪のすごい、お髭もじゃもじゃなお爺さんに向かって私は深く頭を下げて謝った。
「ごめんなさいひいおじいちゃん! 私、死んじゃったみたい……」
「いや、儂神様……、ひいおじいちゃんこっち」
たしかに、私のひいおじいちゃんはこんなに髭もじゃもじゃではなかった。
私は神様に合わせてひいおじいちゃんに目線を向ける。
だが、そこにいたひいおじいちゃんはまるで私の知っているひいおじいちゃんではなく、ハードボイルドなイケオジへと変貌してしまっていた。
「いや誰ですかこのイケオジ」
「……歳を重ねるとな、自分の望んだ年齢へと姿を変えられるようになる。俺の全盛期を選んだみたんだが、懐かしい感覚だ」
どこから取り出したのか、煙草を一本取り出し、副流煙を辺りに撒き散らす。
銘柄はメビウスか、見た感じ新しいな? 握ったまま死んだのかなひいじいちゃん。
あまりの変貌ぶりに神様の方がついていけてない、口をあんぐり開けてしまっている。
「ここからなんだか楽しそうな匂いがするんだが……、こいつはなんだ神様とやら」
「ひいおじいちゃん!? 勝手に神様の私物漁っちゃダメだから!!何やってんの!!」
もう神様の方がひいおじいちゃんについていけていない……、あたふたしているのが目に見えてわかる。
そして、神様の返答を聞く間も無く、その怪しげな地球儀に顔を突っ込まないでひいおじいちゃん!
……と、私がひいおじいちゃんを止めようとしたところ。
怪しげな地球儀は急に急回転しながら発光し、あっという間にイケオジと化したひいおじいちゃんを吸い込んでしまった。
嵐が過ぎ去ったかのような現場に取り残される神様と私。
「とりあえず、これを授けるから……、この世界がめちゃくちゃになる前に貴方があれを止めてくれ……頼む……」
こうして私は銃器の強制製造の能力を手に入れた。
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