第二十七話『ヒロインになどなれぬ少女の伸ばした手』
一方、
「はぁ……はぁ……」
杏の見上げた校舎内。その一教室では、戦闘が繰り広げられていた。
いや。戦闘と言うには、展開があまりにも一方的か。
片や、全身の至る所から血を流し、立っていることすら不思議に思えてくるほど傷だらけとなった少年、黒衣。
片や、その姿をニヤついた顔で舌舐めずりをする灰色狼。
ただの高校生と狼。武器も何も持たないただの人間と、おそらく多くの人間をその牙の餌食としてきたであろう獣とでは、持って生まれた力も経験値も、何もかもが違いすぎる。たとえ相手が【妖精】でなかったとしても、人間が狼に勝つのは困難を極める。
誰がどう見ても、勝敗は始まる前から決している。
「へへ……。おい兄ちゃん。なかなかキツそうだが、もう限界か?」
「そっちこそ、さっきからヨダレ垂らし過ぎじゃねえの? 腹でも減ってんのか?」
「減らず口は相変わらずみたいだな、兄ちゃん」
狼の挑発に、黒衣は景気よく返事を返す。
だが黒衣の限界は傍から見ても明らかだ。
「そんだけ元気ならまだまだ遊べそうだなぁ。じゃ、コイツはどうだ?」
と――、突然正面にいたはずの狼の姿が掻き消える。
だが黒衣はそれに驚くことなく、咄嗟に手元の椅子を引っ掴み構え――、
ッガイン――
何かが椅子へとぶつかり、粉々に壊れてしまう。
「へへ……。よく受けたな。じゃあこれは?」
姿なき狼の声を聞いた刹那、左方向で机が破砕する。
黒衣がそちらを向くと、今度は右の机が。次は正面の。次は左。そして右。左。正面、左、右、そして――。
「くっ――」
黒衣は咄嗟に倒れ込むように正面へ跳ぶが、
「遅い」
「がっ――」
右脇腹に強い衝撃を覚え、体制を崩して倒れ込む。
「惜しかったな。勘はいいようだが、所詮は人間レベル。俺たちの動きには遠く及ばねぇ」
「ぐ……ぅ……」
体が動かない。近くに立っているはずの狼の声が遠くに聞こえる。
傷は浅い。急所の近くを掠れてはいるが、傷自体は大したことはない。今すぐ死ぬことはないだろう。
だが如何せん、血を流しすぎた。傷一つ一つは大したことはないが、もう既に何十カ所とやられている。これでは生殺しも同然だ。
いや、おそらく相手はそれを狙っている。相手は狼だ。その気になれば人間の一人や二人、簡単に食い殺すことができるだろう。だがそうしない。一撃で屠れる力を持ちながら、この狼はそれをしてはこない。つまり、弄んでいるのだ。
「感謝するんだなぁ小僧。オレぁ他の狼どもと違ってグルメだからなぁ。くそ不味い人間の肉なんか食わねぇんだよ。もし相手が他のバカどもだったらお前、とっくにお陀仏だぞ?」
へらへらと、楽しそうに狼は饒舌ぶる。
「だがな。いつまでもそんなところで寝っ転がってると、つい魔が差して後ろのあの女食っちまうぞ?」
言われてビクリと身を震わす八重を、黒衣は感じる。
「う……、ぐ……」
「お、なんだ立つのか? へへ、なかなか根性あるじゃねぇか小僧」
「八重には……、手を、出すな……!」
立ち上がる。だが、それだけだ。体を起き上がらせるだけで服には血が滲み、ポタポタと赤い雫を垂れ流す。通常ならば、既に立ち上がれる状態ではない。
「もう……、もうやめてくださいクロ! それ以上したら、クロが、クロが死んじゃう……」
八重が必死に訴えるも、黒衣は退こうとしない。
「わたしのことは、もういいですから。お願いだから、もう立ち上がらないでください。お願いだから、もう傷つかないで……」
まるで祈るかのように、八重は胸の前で手を握りすめ訴える。
「だ、そうだが?」
「……それは、無理な相談だ、八重」
黒衣は振り向きもせず、ただ静かに口を開く。
「お前は言ったな、八重。お前の願いは、俺と、紗雪の三人で、また一緒に過ごすことだって」
「……」
「それはな、俺の願いでもあるんだ。俺も、お前と紗雪と、また昔みたいにバカやって、時々大人に怒られて、それでもまた笑ってバカやらかす。そんななんでもない時間に、俺も戻りたいんだ」
「クロ……」
「そこには誰が欠けてもダメなんだ。紗雪が欠けても、お前が欠けても、もちろん俺が欠けても、な。だから俺はここで諦めるわけにはいかない。お前でも俺でも、どっちが欠けてもダメなんだ。もしそのどちらかが欠けたら、その時点で俺の願いはもう二度と叶わない」
言って黒衣は再び拳を握る。
「あ~~イヤだね。人間のそういう面倒なとこはホント虫唾が走るね。ごちゃごちゃとあれだこれだと理由を付けてよ。まどろっこしいったらあちゃしない。シンプルに行こう! お前はオレに殺される。後ろの女もオレに殺される。何をどうしたって、変わりゃあしねぇ事実だ。そうだろ?」
「ああ、そうかもな」
気分良さげに宣う狼の弁舌を、黒衣は意外にも肯定する。
「お、なんだ。お前も話がわかって――」
「でもな、そんなことは、今は関係ないんだ」
「なに?」
「そんなこと、些細な問題でしかない。なんてったって、俺はコイツを守るんだ。事実が何だって、事実がどうだって、それだけは曲げられない。俺が立っている限り、それだけは絶対に変わらないんだ」
にっ、と血の滴る顔で、黒衣は笑う。
はっきりと。にこやかに。
「そうかい。じゃ、もういいわ――」
と――、狼は再び消え、
「死ね」
黒衣の首元に、飛びかかる。
「ぐっ……」
だがその動きは黒衣にとってもう何度も目にした挙動。流石にそう易々と食らいは――、
「おっと。避けるのは結構だが、気をつけろよ。その先は――」
不意に、黒衣は足下を見失う。
「――奈落の底だ」
「っ――――」
「ク――」
八重が名前を呼ぶ前に、黒衣の体は奈落へと呑み込まれていく。
「クロ!」
慌てて八重が駆け寄るが、覗き込んだ奈落に黒衣の姿はなく、ぽっかりと空いた闇が広がるばかり。
「クロ……、クローーーー!」
「あーあー、やっちまったなぁ。オレぁ注意したんだがなぁ」
嘯くその言葉に、八重はキッと睨み付ける。
「おいおい、そう睨むなよ。別にオレの所為じゃねぇだろう。あの小僧が勝手に落ちたんだろうが、違うか? そうだろう?」
「……けて」
「あぁ? なんだって?」
「クロを……、助けて!」
「はぁぁ?」
「まだ、まだ今なら間に合うかもしれない! だからお願いします。クロを、助けて……」
「おいおい。マジかよ、この嬢ちゃん」
「アナタはあの子の仲間なんでしょ! だったらお願い! クロを助けてください。お願い……」
頭を下げて懇願してくる八重に、狼はポリポリと鼻先をかいて視線を背ける。
「なぁお嬢ちゃん。あの小僧の言ってたこと、覚えてないのか?」
狼にそう言われ、八重はさっき黒衣が言っていたことを思い出す。
「それは……何かの間違いで……。あの子が私を裏切るなんてそんなこと、あるはずが……。で、でも、もしそれが本当だったとしても、どうかクロだけは……、クロを助けてくれませんか。私はどうなっても構いませんから、どうか、お願い、します……」
「……はぁ。人間ってやつはホント面倒なヤツらばかりだ。お嬢ちゃんが犠牲になる代わりに、あの小僧を救えって?」
「はい。それで、どうか……」
八重は狼に向かって頭を下げる。ただ一途に救いを求める目の前の少女に、狼は困ったように目頭を下げる。
「はぁ……。そうまで言われちゃあ、オレも黙っちゃいられねぇなぁ」
肉食動物には似つかわしくないため息交じりの声で、狼はそんなことを言う。
「じゃ、じゃあ助けてくれ――」
ト――
「だが、そりゃ無理だ」
「え」
その感覚が浮遊感であるということに、八重は遅れ馳せながら気が付く。
そして直前に聞こえたのが体を押された音だということにも、自分は本当に裏切られていたということにも。
八重は少しずつ遠のく狼の笑みを見ながら、ようやっと気が付いた。
「ぅ……」
目頭が熱くなる。
悲しいのでも、苦しいのでもない。
ただただ、悔しい。
あんなものを一瞬でも信じたことが。クロを助けてくれと願ったことが。とてつもなく悔しかった。
そしてそれ以上に、やはり自分には何もできないのだと気付かされたことが、どうしようもなく悔しかった。
自然と、涙が溢れてくる。
もう、自分を助けてくれる人は誰もいない。
自分が泣いてると助けに来てくれた少年も、そっと慰めてくれた優しい少女も。
今はもう、誰も、いない。
「……クロ」
それでも、叫ばずにはいられない。
もう届かないとわかっていても、その名を叫ばずにはいられなかった。
「クロ……、クロ!!」
「八重っ!」
*
そこは真っ暗な深淵だった。
目に見える光など何もなく、自分の心臓の音すらも聞こえない。自己の存在すらもあやふやとなる、完全なる無の空間。
そんな浮遊感すらも感じない空間を、俺はただ一人落ちていた。
だが頭の中にあるのは恐怖ではなく、以前言われたあること。
杏は言った。魔法とは、奇跡そのものだと。
アリスは言った。魔法とは、人の願いの形だと。
奇跡は、既に見た。
俺の死をなかったことにした、時間の巻き戻し。
あれが魔法だと言うのなら、あれは俺の願いの形ということになるのだろう。
では俺の願いとは?
死にたくない? 生きたい?
違う。俺の願いは、あの日からずっと一つだ。
妹を――紗雪を取り戻したい。
だが違った。俺の得た魔法は、そんなわかりやすいものじゃなかった。
だったら、俺の魔法ってのは――願いってのは、一体……。
『わたしの願いは、不思議を見つけることだ』
ああ。それを聞いたとき、俺はあいつをとてもスゴいと思った。
堂々とそんな願いを口に出来るアイツを、俺は素直に尊敬した。
と同時に、羨ましくも思った。
それは、昔俺が抱いたもの。
あの頃の俺が抱いていたはずの感情だ。
そして、あの世界に置いてきてしまったもの。
『もしお前に未練があるというのなら、願え』
未練。ああそうさ。未練なら、ある。
紗雪を――大切な妹を失ってしまったこと。
だけど違う。本当は、そうじゃない。
本当に後悔しているのは、あの頃を――もう二度と戻れないあの頃を失ってしまったことだ。
紗雪が俺の背中を引っ張りながらついてきて、隣で八重が半べそかいていて。
そんな当たり前だったあの頃を失ってしまったことが、何よりも、俺は――、
それだけが、悔しいんだ。
だから――、
「八重っ!!」
「……クロ!」
だから――、だから俺はもう、二度と失わない。
あの頃に戻れないって言うのなら、
「もう二度と、失わせない!」
俺の魔法はそのための――全てを過去にしないための魔法なのだから。
*
狼は驚愕に目を剥く。
目の前の光景に、あり得ないものを見たからだ。
人間は非力だ。ただ数が多いだけで、力も速さも牙の鋭さも、何もかも狼には敵わない。
人間は狼の前に恐怖し、ただ震えていればいい。
なのに、
(何が、起きた)
人間は非力だ。俺たちを前にして、何も抗うことができない。
なのに、
「何故、お前がそこにいる……、小僧ぉおおおお!!!!」
驚愕の光景に、眼を、牙を、本当を剥き出しにし、狼は叫ぶ。
目の前に現れたのは、確かに先ほど奈落へと落ちたはずの人間。
人間は後から落とした女もその腕に抱えて、静かなる空間に佇んでいる。
「く、クロ。もう大丈夫ですから、その……」
「ん、ああ」
頬を赤く染めて呟く八重に、黒衣はそっと――まるで割れ物を扱うように――八重の細い足を地面へ誘う。
「クロ……その、私――」
「何をした……」
八重の言葉を遮って、狼は唸る。
「魔法も使えないただの人間が、あの奈落の底に落ちて生きていられるはずがない。小僧、お前一体どんなトリックを……」
「つまらないことを聞くんだな。魔法を使えない人間が助かったんなら、それは魔法を使えたからだろうが」
吐き出すような狼の問いに、黒衣は淡々と答えを返す。
「馬鹿な……。人間が――人間如きが、あのお方の境地に達したとでも言うのか……」
「何ごちゃごちゃわけわかんねぇこと言ってんだよ」
黒衣は知らない。【魔法】という奇跡の意味を。奇跡に到達するという境地の域を。多くの【妖精】はその境地に至ることがないという事実を。
「お前が、お前如きが……」
「八重、ここで待っててくれ」
そう言って、黒衣は八重の腰から手を離す。
「クロ」
「大丈夫だ。すぐ、済ませる――」
黒衣が眼前の狼に視線を向けた瞬間、狼の姿が無に消える。
刹那、狼の姿が次に現れたのは――黒衣の首元。
さきほどまで生傷ばかりを与えていた狼だが、今度は生物の絶対的な急所である喉元を狙ってきただの。
「っ――――」
だが、狼の牙は紅に染まることはなかった。
そこにあったはずの黒衣の首根はなく、代わりに重い一撃が狼の横っ面を襲う。
「ぐ、おっ……!?」
衝撃を受け体ごと地面を跳ねるが、持ち前の身体能力でなんとか体勢を立て直す。
自身が飛び込んだその場所にあったのは、今し方その首元へと食らいつかんとした人間の、その拳。
(なんだ、何をされた……?)
いや、何をされたのかは理解できる。
自分が吹き飛ばされたその場所にその人間の拳があるのだ。どんな馬鹿な狼だろうと、その拳が自分を吹き飛ばしたのだと理解できる。
だがそうじゃない。狼が理解できないのはそういうことではない。
通常、犬や狼は人間に比べて視力が低い。犬や狼の視力は人間で言うところのゼロコンマ三程度しかなく、遠くの物はほとんど認識することができないのだ。
だがそれは静止視力に限った話だ。動く物に対して――動体視力ならば、犬は人間のそれを遙かに凌ぐ。まして狩猟に特化した狼ならば、その差は歴然。
そしてこの灰色狼は【妖精】だ。この世界に存在する犬や狼とは比べるまでもない。
まして自身が高速で移動するこの灰色狼に、見えないものなど既に存在しない。
だというのに、
(何も、見えなかった……)
狼の牙は黒衣の首元を確実に捉えていた。
戦闘経験の豊富な狼がその目測を誤るわけがない。
にも関わらず、目の前の人間はそれを回避し、あまつさえ自分に拳を一発お見舞いしてきた。
まるで、最初からそこに拳があったかのように。
まるで、狼自身が自ら人間の拳へ飛び込んだかのように。
その一撃は狼にとって不自然極まりないものだった。
「……何をしやがった」
「……何も」
呻る狼に、黒衣はただ短く答える。
「ただ、願っただけだ」
「なにぃ?」
「そうあるように、俺が願っただけだ」
「……
怒りに牙を剥き出す狼は、何を思ったのか突如、
「ワォーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッン」
天井高くに向かって、遠く吠える。
途端、異変は起こる。
黒衣を囲むように灰色の氷霧が発生し、五つの影を形作る。
氷細工のように白く濁ったその影は、灰色狼の形を象った氷像。
だが、それはただの氷像には非ず。氷像は形成された途端動き出し、黒衣の周りを円を描くように歩き出す。
計六体の狼が、黒衣を取り囲む。
これが灰色狼の持つ魔法『
『茨の魔女』手ずから与えられた、灰色狼にのみ許された魔法だ。
「人間如きにこの魔法を見せたんだ。さっさと死んでもらうぞ」
黒衣を取り囲む狼のうち、その一体が呟く。
その顔に他の五体との違いはなく、一見しても見分けはつかない。
そして狼の顔にはさきほどまでの嘲笑うような笑みもない。油断も、慢心も、奢りは何もないことが見て取れる。
弄ぶためでも、喰らうためでもない。
殺すための――息の根を止めるための業なのだと、黒衣は静かに感じ取る。
そして音もなく、六体の狼は同時に消える。
その全てが同時に、だが全方位をカバーする必殺のタイミングで、黒衣の喉元へ食らいつく。
見えるはずもない。見えたとしても、対応など到底不可能。そのこぶしがいくら速かろうと、たとえ六本の腕を持っていたとしても、狼のその動きを見切れはしない。
まさに必殺。格好や見栄えを意識した派手な技ではなく、相手を必ず殺すという意思を込めた不可避の一撃。
そして一撃にして六つの牙が、黒衣を襲う。
だが――、
「関係ない」
その唇の動きを見て、狼は感じる。
既に、そこにはいない――、と。
一――正面。
二――左後方下側。
三――同タイミングで右後方。
四――右斜め前
五――左側面。
一つ一つを相手していては手遅れだ。
これは不可避の技。決して逃れることのできない絶対包囲網。
ならば、全部全てを、同時に叩けば良いだけのこと。
氷の分身体。その全てが打ち砕かされたのだと、狼は感じる。
そんなことはありえない。
どのような方法を用いたとしても、全てを対処することなど、出来はしないのだ。
ならば、この人間は――。
「小僧、お前まさか――」
六――それら全てを囮とした、死角からの一撃。
すなわち、上――。
「うぉおおおおおおおお――――――――」
露わになった本体に、黒衣は一撃を叩き込む。
だがそれではまだ足りない。
【妖精】一人倒すのに、まだそれでは足りない。
力も、速さも。
力が足りぬと言うのなら、より多くの数で、ねじ伏せればいい。
速さが足りぬと言うのなら、より速い『時』で、叩き込めばいい。
あとはそれを、願うだけ。
そうすれば、本の一瞬。須臾にすら満たぬ瞬息の時間だけ、自由が生まれる。
一撃を与えた事実を残して、もう一度、相手を殴る時間ができる。
すなわち、時間が巻き戻る。
あとはそれを、繰り返すだけ。
この灰色狼を――【妖精】を倒しきるまで、ただひたすらに。
一撃で足りないのなら二撃を。二撃で足りないのなら三撃を。三撃で足りないのなら四撃を。より多くを、この一瞬に、一発でも多くの一撃を――。俺の限界まで。いいや。俺の限界を超えても。
まだだ。まだ足りない。まだ。まだ。まだ。まだ。まだ、まだ、まだ、まだ、まだ、まだ、まだ、まだ、まだ、まだ、まだ、まだ、まだ、まだ、まだ、まだ、まだ、まだ、まだ、まだ、まだ、まだ、まだ、まだ、まだ、まだ、まだ、まだ、まだ、まだ、まだ、まだ、まだ、まだ、まだ、まだ、まだ、まだ、まだ、まだ、まだ、まだ、まだ、まだ、まだ、まだ、まだ、まだ、まだ、まだ、まだ、まだ、まだ、まだ、まだ、まだ、まだ、まだ、まだ、まだ、まだ、まだ、まだ、まだ、まだ、まだ、まだ、まだ、まだ、まだ、まだ、まだ、まだ、まだ、まだ、まだ、まだ、まだ、まだ、まだ、まだ、まだ、まだ、まだ、まだ、まだ、まだ、まだ、まだ、まだ、まだ、まだ、まだ、まだ、まだ、まだ、……いいや、もっとだ――――!!
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお――『
傍から見れば、それはただの一撃打ち込んだだけの拳。
だがそれは、一撃にあらず。
僅かな時を惜しみ掻き集め、一つの時に収束させた一撃。
あったはずの百の一撃をなかったことにせず、全てを浴びせる力技。
その全てを一瞬という時間に浴びせられ、灰色狼は断末魔さえもかき消され霧散する。
「……このオレが、人間、如きにぃぃいいいいい……」
その言葉を最後に、狼の姿は完全に世界から消滅する。
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