第97.5話 解説その⑤

〈注意事項〉

 本編ではないので読み飛ばして構いません。


【舞台解説】

西海岸フォーターフロント

 アシーレマ王国の西側の大陸の海岸線に位置する街の総称。

 王都のある東海岸と違い、比較的歴史も浅く、ヒューマン以外の他種族も多い、リベラルな風土が特色。特に、魔女狩りの歴史から西へ西へと旅して来たエルフ族が多いのが特徴的。



■霧の港『オクシークナーフ』(Ocsicnarf)


 夏には霧にすっぽりと包まれる、カモメが飛び交う漁師町。

 その昔、チェス愛好家であった領主が地形を無視して、チェス盤の様に町を開発した為、非常に坂道が多い事で有名。今では、この坂道もオクシー名物となっている。霧と坂道によって視界が悪くなる事から、この町の馬車は皆、赤く塗装されている。

 北のエルテス、南のセレナ=ソルの中間に位置する土地柄、両者を中継する中間地点として発達し、ここで船を乗り継ぐ行商人も多く、船旅の憩いの地になっている。

 シーフードが美味しい事でも有名で、船乗り達の胃袋を満たす為、『ピアの波止場』では、多くの海鮮料理店が軒を連ねる。中でもクラムチャウダーはオクシーの一番の名物で、くりぬいたパンに入れて提供する『ボーディン・カフェ』のクラムチャウダーは地元民にも愛される一品。ピアの波止場や浅瀬付近ではアシカ達が昼寝する姿もオクシーならではの風景。


 ぶどうの森『ノジェーロの森』がすぐ北にある事から、ワインを扱う店も多く、ノジェーロ産ワインの最大手『ノジェーラ・アルキューラ』もここにある。

 また、西海岸最大のスミスギルド『フォグ商会』があり、腕ききのブラックスミス達によって架けられた『フィッシャーマンズ・ブリッジ』はオクシーを象徴する様な真っ赤な橋で、アルキューラのあるバレル島へと繋がっている。


 海路の要所として発展したオクシーは、実は大都会クロイウェンに次いで、両替商が盛んで、金貨取引やしちを担っていた『フォグ商会』が銀行業務を運営している。その為、フォーターフロントでは小切手での取引が珍しくない。

 オクシーから離れた沖合いに『囚人島』と呼ばれる、かのグリフォン戦争で悪名高いレーベリオン侯が幽閉された事でも有名な『監獄島ザルタクラ』があるので、南部の獅子侯ファンはひっそりと巡礼に行くのだとか……。

 近年では、世にも珍しき食べるチョコレート、チョコレートキャンディを生み出した『ショコラティエ』と名乗るチョコレート職人の魔女『ココ・イレダリー』のチョコレート工房を訪れる貴族も増えつつあり、イレダリーチョコのお土産は密かに注目を集めている。

 アイロ=フィアークからすぐ西の海辺にある。




■天使の港『セレナ=ソル』(Selegna Sol)


 代々クジャクハーピーの領主が治める西海岸最大の貿易都市。

 多種族混合で人口も王国内ではクロイウェンに次いで多い大都会で、温暖な気候の為、西海岸最大のリゾート地になっており、夏には海水浴も楽しまれる。

 華やかでお洒落好きなセレブ達が好んで移住してくる事も多く、海に近い通称『豪邸通り』はセレブ達の邸宅が並んでいる。

 王国最初の時計台がある事でも有名で、天使のごときハーピー達の彫刻で飾られた『クイーンズ・ベル』は、華やかな街に似つかわしい一際高音の鐘の音が鳴り響く。

 海から内陸へ進むと『ひいらぎの丘』と呼ばれる領主の住む森があり、領民達から『バースデーキャンドル城』の愛称で親しまれている領主の居城『グリフィス城』はその名の通り、丘をケーキに見立てた三本のろうそくの塔からなる城でセレナの名物にもなっている。

 ハーピー達が多く住む事もあり、ナジール文化が色濃い街で、現在では珍しくナジール通貨での取引も当たり前の様に行われているので、初めての旅行客には驚かれる事もしばしば。


1ビジュー=20ジェム


100プードル硬貨=1ビジュー

1ビジュー銅貨=20ジェム

5ビジュー銀貨=100ジェム

10ビジュー銀貨=200ジェム

20ビジュー金貨=400ジェム

100ビジュー金貨=2000ジェム


 お洒落なハーピー達の為、この街にはヘアーサロン、ネイルサロンだけでなく、フェザーサロンも多く、出張スタイリスト達が今日も忙しく飛び回っている事だろう。


 オクシークナーフから南にあり陸路より海路で行く方が速い(勿論、空路が最短で、オクシーからセレナまでは直線距離にして300ミロメトロン)。



■ぶどうの森『ノジェーロ』(Nogero)


 昔ながらのエルフ達が暮らす森。

 小さなエルフの集落があるだけで、あとはぶどう畑が広がる森で、マナの流れの強い地域(竜脈)の為、妖精達にとっては暮らしやすい土地。


 ここで採れるぶどうは特に魔力を浴びて、非常に美味しいと昔から言われており、ノジェーロ産ぶどうから造るワインはノジェーラ・ワインと呼ばれ、近年ではワインのお陰でノジェーロの名前は有名になった。


 代々『守護妖精』と呼ばれる妖精ピクシーが森の繁栄の為に、森の真ん中の『アニムスの木』と名付けられた聖なる御神木で祈りを捧げている。


 ここに住むエルフ族は特に精霊信仰に厚く、未だに古い慣習が続けられており、余所者には厳しい。


 また、箒作りの匠『バレィ家』を中心としたブルームクラフター達の聖地とも言える場所で、箒にこだわるエルフの魔女達の中にはわざわざノジェーロまで箒作りを依頼に来るの者も多い。


 オクシークナーフのすぐ北に位置し、エルテスまでの通り道。



■最後の町 『エルテス』(Elttaes)


 魔女狩りから逃れたエルフ達が最後にたどり着いたとされている町。実際に飛び地である『アクス=アラ』が王国領に編入されるまでは最も西に位置した、最後の西の土地だった。


 町という割には実際は村で領主は存在せずエルフの村長だけがいる。王国内で一番エルフの多く住む町で、町の至るところに『ウィッカ』と呼ばれる五芒星のおまじないが吊るされている。


 織物が盛んで『エルテス織り』と呼ばれる反物が特産品。中でも布に魔法の銀の糸で魔法を織り込む魔法の仕立屋マジックテーラーと呼ばれる、魔女織工の本場とも言える土地で、有名ブランド『アルカナ・ウィーバー』の『アルカナクローク』は競技の世界で、『漆黒のエポニーヌ』と言う名ジョッキーが流行らせた事で知られている。


 また大陸本土最北西と言う土地柄、飛び地である『アクス=アラ』へはここから船で行くか、北の『エルパム皇国』の山越えをするかのどちらかなので、『辺境への道』とも呼ばれる。


 エルフの最後の町として栄えた場所だが、近年では他種族の移住者も増え、ノジェーロよりは開かれたエルフ地域となっておりドワーフの住人も僅かに存在し、スケートブレードと雪山登り用の道具を専門に取り扱ってる、工房『アイゼンワーカース』が生み出すアイゼンブレードはスケーターならば誰もが知ってる、老舗のブレードブランドになっている。



【登場人物紹介】

 本編では語り尽くせなかった、キャラクター達の設定が載ってあるよ!



~霧の港『オクシークナーフ』~


●ミトラー・スクーパ(24)

スペリング:Metra Skoupa

略称・愛称:ミト、暴走女、配達屋

『通り名』:『とんがり帽子のミト』

      『霧の港オクシーの赤い宅急便』

種族/性別:エルフ/女性

誕生年 月:アシーレマ暦996年 葡萄月グラペエール

サイン/潜在素:天秤宮♎/風のエレメント

職業:箒職人 兼 酒屋配達員

所属:王国一のワイナリー『アルキューラ』配達員

出身:ぶどうの森『ノジェーロ』

身長:150

髪の色:プラチナブロンド(外ハネボブ)

瞳の色:フォレストグリーン

きき腕:右きき

他特徴:顔は童顔で左目を囲む星形の紫色のタトゥーがある

一人称:ボク

性格:ENTP(陽気なムードメーカー)

長所:義理固く、意外に真面目

短所:すぐ値切る。スピード飛行中は乱暴な口調になる

口癖:ニシシと笑う

信条:『迅速、丁寧、おまけに可愛い』がモットー

趣味:お洒落、特にネイルアート

特技:人の顔と名前を覚える事

好物:シナモンチュロス、甘いもの全般

苦手:カラス、リトス様

憧れ:『箒星のメル』(おとぎ話の人物)

所持アイテム:愛箒『星屑のヴィヴァーチェ』

トレードマーク:ピンク色のとんがり帽子

        星形のイヤリングとタトゥー


 箒職人ブルームクラフター。だけでは食べていけないのでワインの配達を副業にしている。大きなピンク色のとんがり帽子がトレードマークで、通称『とんがり帽子のミト』。

 西海岸最大のワイナリー『ノジェーラ・アルキューラ』の最速配達員。アルキューラとは配達毎に報酬を支払って貰っている云わば専属業務委託契約の様な関係。

 愛箒『星屑ほしくずのヴィヴァーチェ』も霧の港らしく真っ赤に塗られていて、傘の柄のようにぐるりと曲がった箒の持ち手の先にはバイクの様なハンドルがついてる。この赤い箒に乗る姿から『霧の港オクシーの赤い宅急便』とも呼ばれる。


 嵐便を使う時は、空石ターコイズを嵌めた星形ウィッカのイヤリングを箒の柄の先のハンドルにぶら下げる。

 ちなみに、空石を使用したヴィヴァーチェの最大速度は我々の単位に直すと時速150㎞に届く。


『迅速、丁寧、おまけに可愛い』がモットー(だがエナメルに言わせれば『迅速、適当、おまけに滅茶苦茶』らしい)。

 この時、順に、『迅速』右人差し指(外向き45度の角度)、『丁寧』左人差し指(外向き45度の角度)、『可愛い』と最後は両指(それぞれ内向き45度の角度)を同時にほっぺにつけてキメる。


 作中では、キメ顔の時に語尾に☆マークが付く。


《ミトの詠唱一覧》


★風集めの魔法★『ラ・シルフィード』

「天にまします我らが精霊よ。願わくば御名おんなあがめさせ給え。御心みこころの天に成るが如く、我にもなさせ給え。我らに風の恵みを今日も与え給え。『ラ・シルフィード』!」


★浮遊魔法★『アイル』

「風の精霊シルフに問う。汝の力は空を舞う。風よ、はためけよ! ゆらりゆらりと移ろえよ! ふわりふわりと、纏え、衣となりて! 漂え、もっと自由に! もっと大胆に! 我らを導き、大地の呪縛を引きちぎれ! 風の第一楽章。解き放て! 『アイル』!」


★飛翔魔法★『ウォラーレ』

「風の精霊シルフに届け。奏でる風は愉快なメロディー! 歌え空に、響け雲に、鳴らせどこまでも! 天よ、地よ、傾聴せよ! 演目は、逆巻さかまく嵐の競奏曲コンチェルト! 風の第二楽章。巻き起これ! 『ウォラーレ』!」


★高速飛行魔法★『フーガ』

「風の精霊シルフに命ず。風よ集えよ、我が元に。大気の波動をかき集め、己が力を示して荒れ狂え! 汝が刻むはつむじ風。虚空を裂いて舞い踊れ。さすれば、我らは風となり、嵐となりて、天空に、この身を委ねん! さあ、盛り上げていこう! もっと劇的に! 演目は、猛き乱気流の狂詩曲ラプソディー。風の第三楽章。吹きすさべ! 『フーガ』!」


★風乗りの魔法★『フルクトゥアト』

「風の精霊シルフと共に。我らは雲。どこまでも、流れる自由よ、あるがままに! ただよう自由の名の元に! 共に奏でよう、自由の調べを! 演目は、流れる雲の小夜曲セレナーデ。風の最終楽章、たゆたえ! 『フルクトゥアト』!」


★再飛行の魔法★(即興オリジナル魔法)

「風の精霊シルフに捧げるよ! ボクの力の全てを! ボク達の情熱を! 風よ蘇れ、凪を切り裂け! 持てるマナの限り――弾けて混ざれ! 演目は、魂の交響曲シンフォニー。風の追加演奏アンコール。吹き返せ! 『リ・ウォラーレ』!」



●アイズウェイン・アルカマリン(38)

スペリング:Eiswein Arcamarine

略称・愛称:アイズ様

種族/性別:エルフ/女性

誕生年 月:アシーレマ暦991年 木苺月ブランブロール

サイン/潜在素:巨蟹宮♋/水のエレメント

職業:ワイナリーオーナー、当主代理

所属:ワイン酒造『ノジェーラ・アルキューラ』

出身:ぶどうの森『ノジェーロ』

身長:167

髪の色:アリスブルー

瞳の色:ターコイズブルー

きき腕:右きき

他特徴:鋭い目付きの三白眼

    髪は落着いた夜会巻(前髪は片目隠れ)

一人称:私

性格:ISTJ(生真面目な努力家)

長所:伝統と格式を重んずる歴史の守護者

短所:同上

趣味:チェス

特技:ききワイン

好物:スモークサーモンとチーズのベーグルサンド

苦手:行儀の悪い者


 西海岸ウォーターフロント最大のワイナリー『ノジェーラ・アルキューラ』の女社長。元はぶどうの森『ノジェーロ』のワイン造りの家柄だったアルカマリン家の一人娘で幼い頃からワインに触れてきたワイン愛好家。ノジェーロ産ぶどうワイン『ノジェーラワイン』をこの国に広く広めようとオクシーで事業を始め成功した実業家。


 社名のアルキューラとはアルカマリンの祖先で『悪酔い吹雪ドランク・ブリザード』と呼ばれたワイン好きの伝説の氷の酔いどれ魔女からとっている。


 アルカマリン家は元々ノジェーロのぶどう農家の中でも歴史の古い蔵元で、魔女の名門貴族『六家ろっか』の一つで、多くの魔女達をかくまってきた伝統と、エルフの女達だけで構成された蔵職人――魔女のワイン造りの宗家とも言える存在でぶどう作りからワイン造りまでを一貫して行っているワイナリー。嘘か誠か、アルキューラのワインは『魔女の魔法で美味しくなっている』のだとか……。現在では、ワイン好きのエルフ達にも愛され、ノジェーロ産ワインは王家や貴族にも瞬く間に広まり西海岸を中心に広く愛飲されている。


●キュヴェ・フォーティファイド(45)

スペリング:Cuvee Fortified

略称・愛称:キュー

種族/性別:エルフ/女性

誕生年 月:アシーレマ暦975年 白雪月スノウォース

サイン/潜在素:磨羯宮♑/土のエレメント

職業:ワイン会社経理担当

所属:ワイン酒造『ノジェーラ・アルキューラ』

出身:魅惑の町『エファトナ』

身長:171

髪の色:マットブラウン

瞳の色:ダークネイビー

他特徴:眼鏡を掛けている

一人称:私、わたくし

性格:ESFJ(思いやりにあふれた社交的な人)

口癖:おや、まあ!

 キューはエルフだが魔法使いではない。若い頃、アルキューラに拾って貰った恩義から同社の経理とアルカマリン家のメイド長の様な役目に尽くしている。おっとりした性格がアイズとは正反対の為、社長のアイズに面と向かって言えない事をキューに相談するのが、アルキューラに働く女蔵職人、蔵人くらんど達のいいクッション係になっている。酒は強くないが面倒見はいいおばさん。

 お金に関してはアイズ以上に厳しく、アルキューラの最速便ミトを使う事に関してはどちらかというと否定的な立場をとってはいるが、強引なミトやどんぶり勘定なアイズにいつも押し負けてしまう。本来はアルキューラの財布を預かる頼れる金庫番。



~天使の港『セレナ=ソル』~


●グリーフィッキ・ド・ピーフォル侯爵(12)

スペリング:Glyptiki De Peafowl

略称・愛称:グリフィー、グリー

『二つ名』:『生きた彫刻』『天使の調べ』

種族/性別:ハーピー(孔雀型白変種)/男性

誕生年 月:アシーレマ暦1008年 薄氷月アイセオース

サイン/潜在素:宝瓶宮♒/風のエレメント

職業:『セレナ=ソル』領主

爵位:侯爵

出身:天使の港『セレナ=ソル』

身長:124

髪の色:白

羽の色:白

瞳の色:灰色

きき腕:右きき

他特徴:脚まで長く美しい繊細な羽

一人称:僕

性格:INFP(愛情深い理想主義者)

長所:思い遣りが強く勤勉

短所:引っ込み思案

趣味:夜空を見つめて空想に耽る事

特技:歌(至上のボーイソプラノ)

好物:サーモンのレモンバターソースのムニエル

苦手:後見人である叔母と二人の姉の催す夜会

尊敬する人:父様

幼年期の体験:幼くして海外の貴族学校で過ごす

所持アイテム:両親の形見のセレナイトのペンダント


 若きセレナの領主。絶世の美ハーピーの末裔。非常に珍しい真っ白な孔雀のハーピーで、幼い頃は女の子に間違われた程の美少年。その白く美しい姿から『息する彫刻』『生きた彫刻』と称賛される程。(グリーフィッキとは彫刻という意味)


 白孔雀はめでたい存在でグリーの生誕を祝い、領民達(主にセレブハーピー達)は『ひいらぎの丘』に彼の為の城を建てる。

 グリーの三歳の時に完成した三本の塔の城はグリフィーの城『グリフィス城』と呼ばれ、もっぱら通称『バースデーキャンドル城』として街の皆に愛され、新領主城となった。

 幼い頃から非常に賢くセレナや周辺の家庭教師では役不足だったのと、貴族としての品も備わった気性も手伝って6歳の時に『帝国ノーテ・カレッジ』に遊学し(アシーレマ王国侯爵家というコネと本人の優秀性による特例)、10歳にして史上最年少の生徒総監に就く程の優等生(ノーテ・カレッジは普通13~18歳の貴族子弟が通う学校)。カレッジ入学当初から聖歌隊に入り、類い稀なボーイソプラノの持ち主でその真っ白なハーピーが歌う姿から『天使の歌声』と称されていた。


 10歳の時、両親(父アクワレル、母シュヴァレ)が事故で亡くなり急遽帰郷し、爵位を受け継ぐ事となる。実質的な執務はオールドミス(未婚の婦人)の叔母(アテーリエ・ド・ピーフォル)が後見人として取り仕切っており、15歳の成人を迎えるまではグリーはお飾りの様な存在とも言える状態。


 後見人である叔母アテーリエは派手好きで散財家の為、グリー自身、叔母の事をあまり好きになれないでいるが、二人の姉(長女モデーレと次女クレール)は引っ込み思案なグリーと違い社交的で叔母との関係も良好の為、グリーは肩身の狭い思いでいる。

(実際、叔母や姉達から意地悪をされてる訳ではなく、大人しく聡明なグリーが三人のセレブ趣向の女達に付き合うのが苦手なだけである)

 グリーのボーイソプラノを叔母も姉達も自慢に思っており、三人の女達はむしろ彼をアイドルの様に可愛がり、また見せびらかしたがっている。グリーの誕生日を『天使達の集い』と銘打ち、セレブハーピー達の夜会に仕立てたのはこの三人の女達。


 そんなグリーも今年の夜会で12歳。そろそろ声変わりの年齢だ。「今年こそ、あの至上のボーイソプラノも聞き納めかもしれない」と近年の領民達の惜しむ声も少なくない。



 芸術的な美しき孔雀の家系『ド・ピーフォル家』の名前の由来はそれぞれ

〈グリーフィッキ:彫刻〉

〈アクワレル:水彩画〉

〈シュヴァレ:画架〉

〈アテーリエ:アトリエ〉

〈モデーレ:モデル〉

〈クレール:絵の具〉

となっている。(厳密にシュヴァレは孔雀種ではないが……)


●アルバトロス・ロイヤーテ(32)

スペリング:Albatross Loyaute

略称・愛称:アルバート、アルバ

種族/性別:ハーピー(アホウドリ種)/男性

職業・所属:セレナ=ソル『ド・ピーフォル家』執事

出身:戸惑いの森『リトルベア』

身長:186

髪の色:クリーム色(ぱっと見、白に見える)

羽の色:根本の白と黒の羽先のグラデーション

瞳の色:マロン

一人称:私

性格:本音をあまり口にしない一途なタイプ

口癖:「ご立派です」(グリーに対して)

 元はグリーの母親シュヴァレの従兄弟にあたり、彼女の初恋の相手。しかし、同性愛者であるアルバは彼女に応えられず、申し訳ない想いでいた。(ちなみに、男女ともに美しい容姿のハーピー族に同性愛者が多いのは珍しい事ではない)

 罪滅ぼしの想いからシュヴァレを追ってド・ピーフォル家に仕えるが、美しき虹色の羽の孔雀の領主アクワレルに一目惚れしてしまう。シュヴァレへの贖罪の念とアクワレルへの秘めた想いから領主夫妻に尽くしてきたが、二人は事故で帰らぬ人となる。

 二人の忘れ形見であるグリーには、親の様な愛情と、年々と想い人(グリーの父)に似ていくグリーに対して複雑な心境で見守っている。時に優しく、時に厳しく、グリーを一人前の侯爵家の男子にするべく、叔母や姉達のセレブ趣向にも目を光らせている。グリーにとっては兄の様な心許せる良き理解者でもある。



〈セレナ=ソル『ド・ピーフォル家』直属夜間警邏けいら隊『夜の騎士ナイトナイツ』〉

●ゴーツァッカー・ナイトホーク(40)

スペリング:Goatsucker Night'hawk

略称・愛称:ゴート隊長、ゴッちゃん

『二つ名』:緋い目の夜の番人

種族/性別:ハーピー(夜鷹種)/男性

誕生年 月:アシーレマ暦980年 初芽月バダール

サイン/潜在素:白羊宮♈/火のエレメント

職業:『ド・ピーフォル家』衛兵

所属:ナイトナイツ隊長

出身:最後の羽街『スネイルロウン』のスラム街

身長:179

髪の色:アッシュブラウン

羽の色:アッシュブラウン

瞳の色:緋色

きき腕:右きき

他特徴:ボサボサの髪と大きな目のクマ

一人称:俺

性格:INFJ(信念を持った理想家)

長所:義理に厚く、人に尽くす

短所:言葉使いが乱暴(感情表現が不器用)

趣味:特に趣味を持っていない事を本人は気にしている

特技:夜でも遠くの影が見える

好物:シュリンプクレオール

苦手:明らかに好意を寄せてくる女性


 セレナの侯爵家の夜の警備隊、夜行性の鳥種のハーピー達で構成されたナイトナイツの隊長。夜鷹のハーピー。夜間任務の為、昼間は寝ているが、意外と繊細な性格ですぐにちょっとした物音で起きてしまうのが悩みの種。その為、万年寝不足で目に大きなクマがついている。

 ナイトナイツの隊の中では、男らしい頼れる性格で皆に慕われており、目付きこそ悪いが意外といい人なのが、また一段と彼の株を上げている。

 リトスとはスラム街時代からの幼なじみで戦友の様な関係で、互いに『リト』『ゴッちゃん』と呼び合う間柄。

 作中では、うっかりパルザが口を滑らしかけたが、彼は同性愛者で、リトスには友情以上の感情を抱いていた。

 しかし、元々美少年だったリトスが年々と『女らしさ』に磨きをかけるのに対して複雑な想いでいる(リトスの女性化はゴートにとっては喜ばしくない為)。

 リトスもリトスで昔から女心でゴートを慕っている。つまり、リトスは女性としてゴートを愛し、ゴートは男性だったリトスを愛している……両者の想いは交わる事なく、『お互いに片想い』の様な妙な関係になっている。ちなみにリトスより背の低い事を本人は結構気にしている。



●ハーン・ダウル(51)Horne Dowl

 ナイトナイツの古株。眼鏡の中年見張り兵。ミミズクのハーピー。隊の中ではゴートとは一番付き合いが古くプライベートでもよく一緒に飲む中。ぽっこりおなかがチャーミング。最近生まれた孫をよく自慢するのが、ゴートとしては聞き飽きた話だと隊の中ではお馴染みの話題。作者の中でのイメージCVは完全に茶風林さん。


●パルザーナ・ファスカ(23)Porzana Fusca

 ナイトナイツの紅一点、ヒクイナのハーピー。通称パルザ。赤い髪が目印。生真面目な性格で隊の中では、規律に一番うるさいのが隊の皆の悩みの種。新米のゾーティーの教育係を押し付けられている。


●ゾーティー・アデューマ(19)Zoother Adauma

 ナイトナイツの新米門番。トラツグミのハーピー。縞模様の羽根が目印。隊の中では一番若く、よくパルザの使いパシリをさせられているが本人は喜んでいる様子。



〈ネイルサロン『ピンクの涙』〉

●エナメル・フラマン(29)

スペリング:Enamel Flaman

略称・愛称:エナ

種族/性別:ハーピー(フラミンゴ種)/女性

職業:ネイルアーティスト

所属:『ピンクの涙』店長

出身:天使の港『セレナ=ソル』

身長:173

髪の色:ピンク

羽の色:ピンク

瞳の色:バイオレット

他特徴:長~いフラミンゴの足(水掻きがある)

一人称:あたし

性格:ENFP(好奇心旺盛で情熱家)

長所:夢の為には突き進む信念の持ち主

短所:水鳥種である事をコンプレックスにしている

趣味:ネイルのアイデアをスケッチする事

特技:片足立ちで上げた足で器用に物を掴む事

好物:海藻のサラダ、タコのカルパッチョ

口癖:わお!

 ネイルアーティストのフラミンゴのハーピー。フラミンゴらしく片足で立つのが得意で、上げた片足で器用に物を掴み、足と両手という独特のスタイルでネイルアートをするカリスマネイルアーティスト。水鳥種のシンボルである水掻きにコンプレックスを持っており、それをバネに足のお洒落に情熱を注いできた努力の人。ネイルに『涙模様』を入れるのは、自身のルーツである悔し涙を忘れないようにと始めたのがきっかけ。今では悔し涙ではなく嬉し涙になっているんじゃないかと、ミトに言われているがまんざらでもない様子。屋号の『ピンクの涙』はフラミンゴである彼女の涙入りのネイルアートが由来なのは言うまでもない。

 現在ではこの涙型が「可愛い」とウケているのは嬉しい誤算でもある。



〈『陽気な宝石屋JJ(Jolly Jeweler)』〉

●リトス・ユーウェル(40)

スぺリング:Lithos Juweel

略称・愛称:リトさん、リトちん、リッちゃん

『通り名』:『漆黒の美の亡者』

種族/性別:ハーピー(カラス種)/MTFオネエ

誕生年 月:アシーレマ暦980年 桜花月セラスサール

サイン/潜在素:金牛宮♉/土のエレメント

職業:宝石商人

所属:『陽気な宝石屋JJ』社長ボス

出身:最後の羽街『スネイルロウン』のスラム街

身長:186

髪の色:黒

羽の色:黒

瞳の色:青紫

きき腕:右きき

他特徴:女性にしか見えない(しかも美人!)

一人称:アタシ

性格:ENTP(創造性豊かな多芸屋)

長所:人懐っこいがさっぱりしてる

短所:毒舌家、たまに下品、怒ると怖い

口癖:「うっさい!」

   「羽はハーピーオンナの命よ」

趣味:美容、宝石蒐集

特技:舌を使ったチェリーのへた結び

好物:ベニエとエスプレッソ、ワインとチーズ

嫌いな物:醜い女、頭の悪い女

幼年期の体験:貧困コンプレックス


 陽気な宝石屋JJの創業者にして社長のカラスのハーピー。

 天使の港にいるセレブハーピー達の中でもかなりの有名人で、執拗に美を求めるその姿に『漆黒の美の亡者』とさえ呼ばれている、セレナのハーピーを体現したお手本の様なハーピー。


 その実は、男性の身体に女性の心の持ち主であるトランスジェンダー(MtF)で、元々の美少年に磨きをかけ、今では女性にしか見えない美貌の持ち主である。ただし背が高い事を可愛くないと言う理由で本人は気にしている。


 ゴートと同じくスネイルロウンのスラム育ちで貧乏である事に強いコンプレックスを抱いていた。やがて、一つの宝石(自身の瞳と同じ色の宝石『アメジスト』)との出会いから一念発起し、宝石商人としてのしあがっていく。


 トランスジェンダーである事、カラスである事、スラム育ちである事、全てのコンプレックスをバネに強い信念で突き進み、全てを笑い飛ばすという意味の『陽気な宝石屋』(Jolly Jeweler)JJを立ち上げる。


 まだ駆け出しの宝石商の頃にジルドに出会い、無二の親友となる。ジルドと意気投合したのは『貴族共からお金を巻き上げてやろう同盟』の為。(ジルドは祖先の仇である北の貴族への復讐の為、リトスは貧乏コンプレックスからの金持ち貴族への復讐の為。ちなみにこれは若き日の二人の合言葉であり。現在では、二人ともそれほど、貴族相手の商売に固執してはいない)


 本編でも触れているが、アルキューラの大口のセレブ顧客であり、ワイン愛好家。ジルドに負けず劣らずの酒豪であり、酔うと更に口汚くなるが、誰も彼――いや彼女を止められはしない……。


 その昔、まだ宝石の街『オハディー』に本店を構えていた頃に若きアズアズフィーフィと出会い、その時に彼女に宝石の目利きの手解きを施している為、アズアズフィーフィにとってリトスは宝石の師匠となっている。

 母性本能が強く可愛い物好きで、元々の貴族嫌いにも関わらずグレイマンだけ特別扱いで『にゃんこ伯爵』と呼んでマスコットの様に愛でており、初対面のアンちゃんに会った際も、その可愛いさに思わず抱きつくなど見境がない。


 現在では『陽気な宝石屋JJ』は王国内でも最大の宝石商であり、貴族の顧客も根強く、信頼と実績の強いブランドになっている。


 セレナに来た際、古くて打ち捨てられていた灯台に一目惚れしたのは、一重に、セレブの街『セレナ=ソル』を一望の下に見下せるからであるが、海の端の潮風の所為で、羽の手入れが面倒になってしまってる事に、若干後悔している。ちなみに丘の上のグリフィス城だけは見下ろせないが、それは別に構わないらしい。



 尚、JJの社員の名前は皆ジュエリーが由来になっている。

〈リトス・ユーウェル:宝石〉

〈ブークレ・ドレイユ:イヤリング〉

〈オーベル・アルファン:ピアス〉

〈ナクラス・コーラル:首飾り〉

〈アルミラ・ブラキレ:腕輪〉

〈ジャオジュオ・コルカール:足輪〉



●ブークレ・ドレイユ(57)

スペリング:Boucle Doreille

略称・愛称:婦人

『二つ名』:褒め殺しのドレイユ婦人

種族/性別:ヒューマン/女性

職業:宝石店販売員

所属:『陽気な宝石屋JJ』本店勤務

出身:天使の港『セレナ=ソル』

身長:153

髪の色:ライトブラウン

瞳の色:ブルーアッシュ

一人称:わたくし

性格:ナチュラルに褒め上手

趣味:料理(但し美味しくない。何でもパイの包み焼きにする)

特技:服のコーディネート

好物:ベシャメルソースさえかかっていればパイ料理全部好き

口癖:あらあら

 元はセレナに移転した際に訪れた客だったのをリトスが販売員として雇った上品な婦人。その昔、没落してしまった貴族の元お嬢様で、親の遺産だけで生活していたお洒落好きで自由な未婚の生粋のセレナ婦人。

 彼女を雇った理由は、生まれ持った上品で華やかな雰囲気に惹かれたのがきっかけで、宝石に詳しいだけでなく、セレナのセレブ達の気風を知り尽くしている婦人である事が最大の理由で、貴族やセレブ相手にも気後れする事なく、天性の褒め上手で客をその気にさせる商売上手から、売り上げが見事に上がった。

 店の利益よりも、お客の肌や瞳の色に合わせて宝石をセレクトするセンスが好評で、今やセレナのJJにはなくてはならない人物でもあり、社長のリトスも、婦人のセンスには一目置いており、コーディネートに迷った時にはいつも彼女に相談している程である。



●オーベル・アルファン(22)

スペリング:Oorbel Erhuan

種族/性別:ヒューマン/男性

職業:馬車の馭者

所属:『陽気な宝石屋JJ』本店勤務

出身:小さき庭の港 『エスレッジ・ウェン』

身長:175

髪の色:黒

瞳の色:ブルー

他特徴:似合わない口髭を生やしている

一人称:俺

性格:深く考え込まずひょうきんな一面の持ち主でかなりタフ

趣味:ギャンブル

特技:交渉事

好物:食にこだわりはないが煙草だけは手離せない


 元々は東海岸のエスレッジの貴族、男爵家のどら息子。次男の為、爵位はないのでオーベル自身は貴族ではないが、若い頃、厳格な父に無理やりに貴族学校に入れられた。父とは反りが合わなかったので、家から離れて寮生活の学校時代は自由気ままに過ごしていた。

 どちらかと言えば、勉強が出来るタイプではなく、むしろ不良少年だったが、妙に機転が利くずる賢い性格で、教師の目を盗んで、フットボールの賭けの胴元をやったりと、この頃から商才があった。学生時代は乗馬の成績だけは優秀で、馬の世話も好きだったので、現在の馭者の仕事は気に入っている。

 エスレッジに戻るも定職に就かずふらふらしてたが、とある質屋で出会ったリトスに見初められて付き従う様になる。最初は貴族学校時代の人脈が使えると踏んでいたリトスだが、後にオーベルの交渉術に惚れ込み、側に置く様になる。ボスであるリトスの悪口を叩く輩にはつい手を上げてしまう荒々しさも見せるが、根っこはかなりいいやつで、そこもリトスのお気に入りの点である。



●ナクラス・コーラル(21)

スペリング:Necklace Collar

略称・愛称:ナクちゃん

種族/性別:ヒューマン/男性

職業:宝石行商人

所属:『陽気な宝石屋JJ』内陸東エリアの行商担当

出身:酪農の村『ミルクウォーク』

身長:157

髪の色:マロンブラウン

瞳の色:ブラウン

他特徴:童顔、いつも寝癖がついている(これがまた可愛い)

一人称:僕

性格:大人しく礼儀正しく生真面目

趣味:旅先で色んな風景を眺める事

特技:道や人の名前を覚える事

   本人は意識していないが、人に好かれる事

好物:ポテトサラダ、実家の父さんの手作りのチーズ


 元々は内陸北東部の田舎村『ミルクウォーク』の酪農家の息子。実家のチーズや牛乳を田舎から馬車で内陸最大の街、行商都市『オガシーク』まで売りに来てた所を、リトスに捕まったのがきっかけ。童顔で可愛い顔立ちのナクラスから気まぐれでチーズを買うついでにナクラス本人を買うと冗談のつもりで言ったが、真面目な彼は本気にしてついて来てしまう。それを機に彼を気に入ったリトスは馬車を使った行商人として使い始める。当のナクラス自身は実家の両親に仕送りさえ出来ればいいと考えていた。


 根っからの好青年で誰に対しても礼儀正しく、素直で素朴な田舎少年の彼は、可愛い童顔もあいまって、たちまち貴族の夫人達のお気に入りとなり、北東部の貴族への商売が成功する。勿論、これはナクラスの魅力を見出だしていたリトスの思惑通りであるが、ナクラス本人はその事に全く気付いておらず、むしろ気弱で軟弱な性格を変えたいとすら考えている。リトスからはもっぱら『ナクちゃん』と可愛いがられているが、オーベルの様にタフな交渉が出来ればといつも悩んでいる。



〈『テセラ時計店』〉

●モントル・オルロージュ(55)

スペリング:Montre Orloge

略称・愛称:モンティ

『二つ名』:タワーマン、時計

種族/性別:ヒューマン/男性

職業/所属:時計技師/『テセラ時計店』

出身:エスナーフ=レグザ王国、王都スィラプ

身長:181

髪の色:ダークブラウン

瞳の色:ヘーゼル

他特徴:色気のあるあごひげが特徴、ダンディでハンサム

一人称:私

性格:INFJ(信念を持った理想家)

趣味:ゆっくりと煎れるコーヒーの音を聞く事のが毎朝の楽しみ

特技:料理(エスナの郷土料理)

好物:焼きたてのバゲット


 セレナ=ソルの名物時計職人。アイロに居るテスの父親。

 海の向こうエスナーフ=レグザ王国から妻と共に亡命して来た人物で病弱な妻エギーユの為、セレナに故郷の様な時計台を作ろうと一から時計作りを独学で始め、この国に最初の時計台を作り、後に帝国から来た有名な時計技師トーマス・ハイジェンスに従事し、彼と共に『トム・アンド・モンティ時計店』(後に『テセラ時計店』に改名)を始め、貴族達に懐中時計を広めた。

 セレナの時計台『クイーンズ・ベル』を常に見守っており、『時計守り』だとか『タワーマン』の愛称で慕われている。

 妻が亡くなってからも妻との思い出の時計台をずっと見守り、彼女の忘れ形見であるテスを男手一つで育て上げる家庭的な一面も合わせ持つ一途で優しい紳士。

 ジルドから想いを寄せられている事に最近、気付き始めてはいるが、彼自身、ジルドに応えられる存在に値しないと決めつけているので、むしろ気付かない素振りを続けている。

 因みに、亡き妻エギーユ(Aiguille)の愛称も『ジル』だった為、ジルドの「ジルとお呼び下さい」は毎回心臓に悪いらしい。



●ククルス・カルチェル(17)

スペリング:Cuculus Carcier

略称・愛称:ククルー

『二つ名』:タワーマンJr. タワーバードマン

種族/性別:ハーピー(カッコウ種)/男性

職業/所属:時計技師見習い/テセラ時計店

出身:天使の港『セレナ=ソル』

身長:166

髪の色:ブルーアッシュ

羽の色:ダークグレー

瞳の色:イエロー

他特徴:足が対趾足たいしそく(指が前後に2本ずつある)になっている。(鳥類の足の指は通常前3本と後1本だが、カッコウの足の指は木の枝に止まりやすい足の形状)

一人称:俺

性格:そそっかしいあわてんぼう。人懐っこい。

趣味:『クイーンズ・ベル』での作業中に景色を眺める事

特技:両手両足を使った作業

好物:チーズとトマトのバゲットサンドイッチ

口癖:な? な?


 テセラ時計店の前身『トム・アンド・モンティ時計店』が今の一等地に移る前、隣に年老いた祖父と暮らしていた少年。母親は元は留守がちな娼婦で、父親は不明。母は早くに結核で他界し、おじいさんが育てていた。

 ククルーの祖父カルノス・カルチェルは、まだセレナに来たばかりのモントル夫婦にとても親切にしてくれた隣人で、カルノスじいさんは病弱なエギーユの良き話し相手をしてくれていた。フルートの奏者でもあった隣人のカルノスじいさんの笛の音を毎朝聞くのが当時の夫婦の楽しみでもあった。カルノスが亡くなってからも逞しい少年ククルーは一人で煙突掃除夫などして暮らしていたが、カルノスへの恩義からモントルはククルーを弟子として雇い始める(妻エギーユが生きていたらきっとそうしろと言ったから。と)。幼くして天涯孤独となったククルーだが、テスとは姉弟の様に育ち、時計技師としても腕を磨いていく。


 ククルーが未だに住み込みではなく、元居た家に一人住み続けるのは、勿論、大好きだったおじいちゃんとの思い出を守る為である。

 カッコウ種による対趾足たいしそくという変わった足の持ち主で、手先だけでなく足まで器用で、両手両足を使った精密作業が行える類い稀な時計技師に成長している。

 テスがアイロへ嫁いでからは、タワーマンJr.として街の皆からも可愛いがられており、時計台界隈の住人達の人気者にもなっている。



●ジルド・プレイト(42)

スペリング:Gild Plate

略称・愛称:ジル

『二つ名』:『高貴な金ノーブル・ゴールド

種族/性別:ヒューマン/女性

誕生年 月:アシーレマ暦978年 夕霧月ミステール

サイン/潜在素:天蠍宮♏/水のエレメント

職業:装飾屋、金細工職人オルフェーヴル、元錬金術師

所属:『ストーン商会』→現在は『テセラ時計店』装飾職人

称号:『ロイヤル・グレート・スミス』

出身:情熱の街『エイグロージュ』

身長:175

髪の色:ブロンド

瞳の色:ライトブラウン

きき腕:左きき

他特徴:髪は巻き毛、右に小さな泣きぼくろ

一人称:ワタシ、ワタクシ

性格:ENTP(創造性豊かな情熱家)

長所:楽天家、美人

短所:わがまま、生活能力が低い、人の好き嫌いが激しい

趣味:編み物、真実の愛を探す事

特技:家事は駄目だが編み物は好き

好物:苺、クッキー、アボカド

   あと『アンちゃんの手料理』なら何でも

苦手:医者、怖い話

トレードマーク:金の薔薇のシルクハット


 アンちゃんの金メッキの師匠、ジルド先生。見ただけでいい匂いがすると言っていいくらいの美人ヒューマン。

 通称『高貴な金ノーブル・ゴールド』の異名を持つ天才金細工職人オルフェーヴルで、金メッキを貼らせれば右に出る者はなく、貴族に人気の『金箔銀ヴェルメイユ』を貼れる王国唯一の職人。

 元々は、金貨鋳造で有名な名門プレイト家の錬金術師だったが、金の配合率を自在にあやつり、天性のセンスによって生み出された金細工が貴族に広まり、錬金術師としてより、金細工職人(特にアクセサリー)として名を轟かせる事となる。

 自称、芸術家アーティストと豪語する程、細工技術に精通しており、象嵌ぞうがん(宝石などの他の材質を嵌め込む装飾)、截金きりかね(糸の様に細い金箔を模様の様に貼る装飾)、線細工(細長い金や銀で模様を作る装飾)に金メッキと、彫金以外の細工技術の全てをアンちゃんに叩きこんだ張本人で、アンちゃんはジルドからドワーフにない美術センスを学んだ。


 元々は弟子をとるつもりもなく、アンちゃんの父親ヴィーラントに「僕の娘を育ててくれ」と頼まれた時は口説き文句と勘違いしてハンマーを投げつけたが、実際に直接出向いて来たアンちゃんを一目見た瞬間に、直感的に弟子にしようと感じ、それ以来、アンちゃんの事が大好きで、二年間の間、技術の伝授以外は、もっぱら家政婦の様な世話焼きの彼女に甘えっぱなしだった。


 酒好きでずぼらでわがままな性格だが、好みの男性の前では、猫を被り、だらしのない性格を必死で隠そうとする悪い癖があるが、直ぐに『メッキが剥がれる』、どうしようもなく恋愛下手な性格でもある。あと無駄に美意識とプライドが高い。


 仕事でセレナに来た際に、タワーマンであるモントルに一目惚れし、彼を追ってアイルダリフからわざわざ移住してテセラ時計店での懐中時計の金メッキ装飾を買って出た。


 その正体は長い歴史の中で王家の目を盗んでミスリル銀のレシピを受け継いできた『悪魔の錬金術師』ゼオ・フラスタの末裔であり、秘伝のレシピを先祖代々、守ってきた。



~ぶどうの森『ノジェーロの森』~


●ベイゼム・バレィ(29)

スペリング:Bazem Baley

略称・愛称:ベイちゃん、バズ

通称・異名:「疾風はやてのベイゼム」

種族/性別:エルフ/男性

誕生年 月:アシーレマ暦991年 若草月グラサール

サイン/潜在素:双児宮♊/風のエレメント

職業:箒職人ブルームクラフター

所属:ノジェーロの森に住んでいる

出身:不明(本人は知らないがエファトナ)

身長:178

髪の色:オレンジ

瞳の色:グリーン

きき腕:左きき

他特徴:首の後ろに三角形のアザがある

一人称:俺

性格:ESTP(今を楽しむ行動派)

長所:行動力が凄い

短所:落ち着きがない

趣味:走馬観戦、猛禽類と競走飛行する事

特技:草笛、どこでも寝れる事

好物:辛いエファトナ料理(特にタコス)

苦手:じっとする事、絨毯屋のいるエファトナ周辺

尊敬する人:親方

所持アイテム:愛箒『隼のイダテンマル』

幼年期:育ての親マイクワートの元で箒職人として腕を磨く


 再び登場! ベイゼム・バレィ!


 天才箒職人ブルームクラフター。『疾風はやてのベイゼム』と言えば箒乗りのエルフの間ではちょっとした有名人。


 一流の箒職人であればある程、『木』に精通しており、『木を診る』という事は『森を診れる』という事。森の状態を常に観察するのは箒職人達のまとめ役であるバレィ家の古くからの役回りになっており、その事からバレィ家は森の長老達になり代わり、ノジェーロの森の『守護妖精』との仲立ちとして大事なお役目を担っている。ベイゼムも幼い頃から養父マイクワートに連れられて『守護妖精』と交流してきている神官のような立場である。

 グレイマンからはアホのホウキ屋と呼ばれる程、お調子者でちょっと天然。どこか憎めない性格の彼だが、箒職人としても箒乗りとしても腕は超一流でアズアズフィーフィの特注箒を直せるのは王国中でもベイゼムだけ。

 箒に乗る事を「楽しい事」と捉えており、愛箒『はやぶさのイダテンマル』を友と呼び大空を駆けるのが生き甲斐。

 足の裏で(云わばサーフィンやスケボーの様に)箒に乗る独特で危険な操縦をするのも、アクロバティックな操縦技術も、並外れた風魔法の使い手であるからこその芸当で、急降下やダイビング着地も、彼なりの空の楽しみ方の一つである。

 元は捨て子だったが、実は生まれつき風の精霊の祝福を受けており、赤ん坊の頃からわずかながら風魔法が使えた才能の持ち主で、それを見抜いた親方マイクワートが喜んで養子にした程なのだとか。




 さてさて、次回から新章『大陸横断飛行編』では、この問題児、疾風のベイゼムが旅の相棒だ。


 アンちゃんとのコンビはどうなる事やら……。


 そして一流の箒乗りの実力とは一体どれほどなのか?


 物語はいよいよ、ミスリル銀の靴の依頼人、ヘックス様へと迫る!


 果たして、3日後の王都式典には、間に合うのか?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る