俺のスペック2

「私の勇者様になってください」


「なぜ二回言った?」


「前話から跨いでますから」


「いや、俺をそこまで評価してくれて嬉しいし、君みたいな子に好きになってもらえて発狂寸前ではあるけど」


「けど、なんですか?」


「君は勇者候補の中から婚約者を選ばないといけないんだろう?なんでもないどこの馬の骨とも分からない俺を好きになったところで、なんの解決にもならないんじゃない?」


「いえ、父はこうも言っていました。『もし、君の想い人が他にいるのならば、その者と一緒になってもかまわない』」


「あぁ、なら、俺がその場だけでも恋人のフリをすればいいわけか」


「フリ、ですか......」


「い、いまのところはね!まだ、お互いのことよく知らないし」


「そ、そうですね。すみません、気が早くて」


「いいって。あれ?でも、王女様が好きな人と一緒になったら、魔王を倒す勇者は誰になるんだ?」


「実は、父の話には続きがありまして『その場合、君の相手には試練を受け、勇者適性を測る。適性があるようなら、魔王を倒す勇者として旅立ってもらおうじゃないか』」


「お断りだ‼」


「なんでですか?」


「俺凡人!not勇者!」


「大丈夫です!キド様なら!」


「なんで⁉君、俺のこと過大評価し過ぎだよ!」


「過大評価ではありません。理由は後で説明します。もう夜なので」


「え?」


見ると、窓の外は真っ暗だ。もともとこっちが何時だったのかは知らないが、もといた世界では夕方だったから、多分同じくらいだろう。


「今日は寝て、明日また考えましょう。この部屋に勝手に入ってくる人はいないので、今夜はここに泊まってください」


「分かった。じゃあお言葉に甘えさせてもらうよ」


「はい、それからその......」


「ん?」


「着替えたいので、後ろを向いていただけると......」


「あ、そうか!そうだよな!悪い」


俺が後ろを向いて数分後


「もう大丈夫です」


振り向くと、そこにはピンクの可愛い寝間着姿のユリエルがいた。

またドキッとした。

ベッドやその他の家具の多くもピンクだし、ユリエルはピンクが好きなのかもしれない。


「それでは寝ますので......」


「あぁ、おやすみ」


「フフ...おやすみなさい」


「?」


「いえ、新婚のようで幸せだなと」


そういうのやめて、恥ずかしいから。


「私はベッドを使いますが、どうします?」


どうしますって、そっちがベッドは当たり前だし、俺は床にでも。


「このベッドは大きいので、もう一人くらいなら入れますよ?」


「床にします!」


「キド様は真面目な方ですね。冗談ですよ。床とは言わずに、ソファを使ってください」


「分かった」


ソファに横たわると、精神疲労が結構あったのか、すぐに眠気が襲ってきた。

これで目が覚めたら俺の部屋で、実は夢だった。とかなら楽だけど、ユリエルのことを考えると、夢でなくてもいい気もする。


そんなことを考えているうちに、俺は眠りに落ちた。

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