惚れた

怪しい人を見つけたら、すぐに逃げるか通報しましょう。

このある意味常識とも言える言葉を聞いたとき、俺はこう思った。


いや、あからさまに怪しい人に遭遇することって、人生にそうあります?


じゃあ、自分の部屋のベッドに潜り込んでいる男は?怪しいですね。

ではその男とは?俺です。

怪しい人に遭遇することより、怪しい人になる方が、確率的に難しいかもしれない。


さて、そんな絶賛怪しい人中の俺に遭遇した女の子はというと。


「はぁ~」


不審者に対しての反応としてはおかしいぞ?

普通なら、叫ぶとか、叫んで助けを求めるとか、ゴミを見る目で顔面パンチとかだろう?


「えっと......」


「はぁ~」


「ちょっといいですか!」


「あ、はい!」


「ここがどこか訊いても?」


「私の匂いが染み付いたベッドです」


「本当にすみません。すぐに出ます」


『ベッドから出ました』


「そうじゃなくて、もっと広い場所で......そうだ、さっき姫って呼ばれていたけど、ここはお城か何かですか?」


「聞いていたのですか。はい、ここはアルファ王国の王城です。そして私は、この国の第二王女、ユリエルといいます」


「アルファ王国、聞いたことないな。ヨーロッパ辺りかな。でも言葉が通じるし.........ん、待てよ?」


「どうしたんですか?」


「目覚めたら別の場所、聞いたことのない国、なのに言葉は通じる......これはもしかして」


「?」


「異世界転移ではないか!」


「はい?」


「ラノベのお決まりパターンだ!よっしゃーついに俺が!退屈な人生よサラバ!」


「あの~」


「なんですか?」


「お名前をお伺いしてもよろしいですか?」


「えっと、木戸きどです」


「キド様ですね」


「いや、名前は...まぁキドでいいです」


奇しくもゲームアバターと同じ名前。というか、最悪な出会いかたした人に様付けとは、お姫様だけあって育ちがいいんだな。

すごい美少女だし。


「キド様、お願いがあります」


「え?」


「一目惚れいたしました。どうか私をお嫁さんにしてください」


「はい⁉」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る