episode4

 朝の5時半につくるに水着で起こされた俺は、とりあえず制服を着て台所へ向かう。言い忘れていたが、俺達の親は大学の講師としてフランスで働いている……。ちなみに両親共にだ。なんでそんなハイスペックな親から残念な俺と、もっと残念なつくるが生みだされたのかよく分からないがまあいい。そんな訳だから家事全般は俺が請け負っている、ちなみにつくるの作る飯は食ったことがないし、つくるが洗濯やアイロンがけをしている所も見たことがない。(めんどくさがりだからな、あいつ……。)

 てなわけで俺は眠い目を擦りながら台所へと向かっている……って、えええ?!

 まてまて幻覚だ、ありえん、ありえんぞ!我が妹がいっちょまえに調理をしているなんて!!しかも水着の上からエプロンというめっちゃ変な格好で!!

「ど、どうしたつくる!とうとう頭がおかしくなったのか?!俺の治癒魔法ヒーリング・マジックをかけてあげようか!?」

「なーに言ってるのさおにーちゃん、私だってたまには調理くらいするよー。」

「たまにはって、お前、今まで調理した事あるっけ……?」

「おかーさんがフランス行く前に一緒にクッキー作ったことあるもん……。」

 いやいやいや、親がフランス行く前って……、

「……、お母さんフランス行ったのいつだっけ?」

「…………、私が5歳の時。」

 そんな昔だったか……、てことは俺が8歳か……。あ、母親がそれくらい昔にフランスへ行ったあとは父親に育ててもらっていた。そして、俺が中2の終わりに差し掛かって高校受験を意識し始めた頃に、俺とつくるがもう2人でも当分は生活できると思ったらしく、父親もフランスへ行った。金は父と母からの仕送りで、家事はさっきも言った通り俺がこなしていた為、特に不便はなかった。

「そ、それで?なんでまた急に調理なんかしてるんだ?」

「べ、別にいいじゃん!とりあえず早く食べて!冷めちゃうよ!!」

 食卓を見るといろいろな料理が所狭しと並んでいた。

「って、多くね?こんなに沢山いつ作ったんだ?」

「えー?さっきだよ?」

 ……、こいつはもしかしたら凄い才能を秘めているのかもしれない、さっきの水着事件から今まで15分くらいしか経っていない、なのに我が妹はこんなに沢山の料理を作っている、しかも8歳の時以来だから約10年ぶりくらいの調理だった事だろう。あ、あれか、もしかしてめっちゃ不味いのか……、

「って、ウマっ!なんだこれ!!」

「隠し味っていうの?そんな感じのをいろいろ入れてみたからねー。」

 つくるは超ドヤ顔だ、でも確かにこれはドヤ顔に値するかもしれない、めっちゃウマい。15分で作ったとは到底思えないクオリティだ。

「お前、料理人になったらどうだ……?」

「えへぇ、パティシエで良ければ考えとくよ!それよりおにーちゃん、早く食べて!一週間ぶりの学校遅れちゃうよ!!」

「つくるの作った料理ゆっくり食べたいわぁ。」

「学校に遅れたらどーすんのさ!!」

「そう焦んなって、瞬間移動ワープを使ったら一瞬なんだからさ……ククッ。」

「いいからはよ学校行け。」

「あ、無視ですか……。分かりました、早く食べます……。」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

我が世での戯け事 如月紅🌙*.。 @Prominence

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ