老人と私

  屋内はそんなに広いわけじゃない、戦々恐々の暇でもう主人の横顔を伺えました、なんと彼との距離は壁一枚だけ。彼は私に一目を置くだけで作業に戻した。物語は続くはずだった、でも主人から一言もない。私はもう、怒られて、謝罪し、懇願こんがんし、プレゼントを献上けんじょうする準備ができた、頭の中で何度もシミュレーションでもした。なのに怒って来ない?どうしたらよいのか分からない…私は年上の男性に苦手です、性格の変な殿方は尚更だ。


「こんにちは、ハリド・イヴァン・ヴァリド先生ですか?ご本人か否かをさて置き、私の心からの詫びを受け取って欲しい」


  私はコミュニケーションを試みた。私の言葉はきっとぼろだらけだ、苦手ですもの。でも彼は答えなければならない、私はもう時間が無いんだ、一刻も早く卒業そつぎょうし祖国を救いたい。


「……」

「きっと怒ったのですね、このような招かれざる客に対し怒る理由は幾千幾万。でも聞いて欲しい、私は紛れもなくわざとあなたに会いに来たの、私のプレゼントを見て欲しい。私は貧しい人じゃありません、柔らかいパンを食べられます。このプレゼントのため全ての財産を使いました、ぜひ見て欲しい」

「馬鹿め!怒るだと?なんのためだ?ここはわしの屋敷だと思うか?数年前勝手に乗り込んで、勝手に耕作、厠、勉強するだけだ。毎日自分に怒るとでも言うのか?主人なんざ勝手に帰ればいい、わしは何時でも出て行く、門は人の出入りのためあるものだろうが!」


  彼の目は鈴のように見開いて、乱暴な怒鳴りはまるで青空の霹靂へきれき。もう覚悟を決めたと思いながら、初陣で敗れた。


「…おっしゃった通りです。でもプレゼントは確かに私の財産、私の気持ち」

「それがどうした、わしに見せたいものはさっさと出せ。でないと失せろ、仕事の邪魔だ」

「すみません、どうかお目にかかってください」


  ボロボロのリュークの中に隠れていたプレゼントは極上の匠人しょうじんが築き上げた自然地図。地図の上にお城が居て、テンプルが居て、アーチが居て、マウントオリーブが居て、石の家が居て…どれも生き生きとして、全ての財産を使ってもおかしくない。


「これは神の城の縮図しゅくず、いつか貴方様がここに暮らしますように」

「わははははは…愚、愚の骨頂!」

「!?」

「何が神の城だ、自分の故郷こきょうも分からないのか?馬鹿もん」

「故郷?でも私の故郷は…」

「どこだ?森の向こうの穴か?あんなくそったれの場所は人の故郷だと?猿の故郷ぐらいだな」

「でも!洞窟の中に私たちのご先祖様を祀られています、彼らはサルじゃないですよ?」

「ふん、確かに、だが大差はない。妻と子さえも守れない軟弱者の群れ、話にならん」

「…神の城、私の種族しゅぞくの故郷。伝説は本当なんですね…」

「ふん、無知な奴め、自分の血縁けつえんについて何も知らん、片腹痛いわ」

「ごめんなさい、先生、でも今の急務きゅうむは洞窟を守ることです。私たちは何度も前線ぜんせんを後退させ、もう後はありません。東の人は獣と一緒に寝て、ラクダの血、毛と乳を混ぜた煮物にものを腹の足しにする。私は神業ではない奇跡を学んで、仲間を守なければなりません!先生は私の知恵、私の預言者!どうか断らないで!」

「阿呆、何を焦っておる。君の名前はとっくに君の父が決めた、教えるとも。さっさと寝ろ、食べたいなら自分で作れ。土産は受け取る、出ていた時は連れてけ」

「はい。ではこれで失礼します、食べ物は要りません、床を貸してくれだけて十分です」

「ふん、なら失せろ。わしは目が悪い、動きが鈍い、さっさと失せろ」


  老人は変な金属器とワイヤーを使って、茶碗に向けて何らかの作業をしている。私、とても気になりますが余計な質問は出来ません。私はもう何度も老人を怒らせた、これ以上出過ぎた真似まねを控えるべき…もう寝よう、時間を早送りしよう、私は一刻も早く老人の仕事を理解する必要がある。



  翌日、私はいつも通りの時間で目覚めた。これは人の習慣によるもの、体はまだ全然疲れていて、昨日森の中の濃い死の気配はまだドキドキさせる。起きた後すぐプレゼントの地図を確認した、姿が見当たりません、もう受け取ったそうです。安心しました…老人と水を探し始めた。


  井はすぐ小屋の隣にある、昨日から既に気づいたことです。偶然なのか、老人は井の傍で水を汲んでいる。怪しいなのか、老人は井の縄を引っ張っていませんのに、バケツは次から次へと自動的に上がっていく、老人はバケツを取って、隣の巨大なたるへ水を注いてからバケツを戻す。たるは巨人の胴体どうたいを誇る、私たちが酒を作るものと同じサイズ。


  足元の泉水はとても清らかて、私は両手で水を汲んで、顔を洗います。畑からミントの葉二枚摘んで、齧る、口臭を治す。戻った時、老人はまだ水を汲んでいます、そんなに大きなたるを満たすには容易ではない。私は清潔せいけつに洗った眼球がんきゅうを使ってよく観察した、老人は時々傍のハンドルを回転したことがあった、ハンドルは歯車と繋がって、歯車の先は、水車?水車はこの辺りに普通にいないものですが、私は水車のことを知ってます。私は何度も一人で遠い場所に旅したことがありますから、色んなものを見たことがあります。でも私が知っているものはもっと多い、それは父が教えてくれたおかげ。父は船とともに海を出て、本当の遠い場所へ行きます。彼は言いました、己がたどり着けない場所は世界の果てとカナンだけ。


  私はもう準備万端ばんたん、老人の後ろ3メートル辺り接近し、話しかける勇気はなかった。彼は厳しすぎる、私はこのような男性を苦手なんです、彼の注意を引き起こすまで待つしかないんです。私は知っていた、とっくに自分は気づかれたことを、ここで起こったすべてのことを老人から逃れない。老人はもうここで5年以上生活したに違いない、でないと畑はこれ程の規模は及びません。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る