科学精神症候群

Dr.ペルパー

預言者を探す

  私が郊外の道に進む時はもう夕方に近づいていく。空気はあっという間に静まり返ったが、汗は未だ離れていない。背中から肌寒い感触が伝わってきて、とても嫌な感じです。だから足を速めて前へ急ぐ。これは決して頭のいい選択しではない、葉の隙間から零した光は衰弱で、狭い道を何となく見える程度しか照らす、太陽が沈む後の私は帰り道をつくことが出来ないでしょう。


  ここは巨大な木が群れて、空を遮った森だ。凶悪な野獣が住む可能性は十分ある、森で野宿のじゅくした旅人は命を落としかねない。今になっても、私はまだ強く信じている、必ず彼を見つけることを…国と縁を切った一人の怪人。私がまだ十歳、初めて父を会った時から、怪人と不思議な縁を結んでいたと思う。私は、前へ進む、落書き同様の地図を握りしめて。


  この地図はぞんざいに見えたのですが、描いた人は私の命を使って信じてもよい人です。辺境の修道院に住むシスターサンプリスは30年の人生に一度も嘘をつくことがありません、都市の住人も彼女の名前を知っている。これは彼女がよそ者の私のため、羽のないペンで描いた地図です。


  それだけじゃない、初めてこの森に足を入れた時から私は彼の存在を確信した。だって今まで私の祖国にこれ程の森が存在することは全然知らなかった、木はこんなにも古くて、蔓が木の幹を覆う、太い枝は錆がまだらで、あるいは朽ち果てた、木の根は地面から浮上し半メートル程まで高くて、岩のごとく硬くて、私の手元の金属器きんぞくきはまるで歯が立たない。


  私はずっと信じています、地図の上この×でマーキングした場所はきっと人類の一席がいた、人が住める桃園郷とうげんきょうが居た。この森を来たばかりの私はそんなにはしゃいでのに、今は四肢ししが冷たくて、目に見えない死の恐怖を傾いて、凍る。もし何らかの信念が支えてくれないのなら、私は続けません。でも私はもう死のことを考え始めた、私の体は朽ち果て、醜いワームの餌になる、獣は心置きなく私の頭をかみ砕く。


  ……テンプルマウンテンのふもとに埋葬することが出来ない、これは許さない罪だ、エロヒム家族の一員として。でも私は親不孝ではありません、父の亡骸なきがらも今海の何処に漂っていた、首と体それぞれ。私はこの目で見た、お爺さんが白い石を使って家系図かけいずから父の名前を消した、辛い思い出だった。私は父を尊敬します、彼は偉い人でした。


  ようやく、道は尽きた……もしかして最後の祈りを開始してもよいかもしれません、私は祈りの背後のものを確かめるためここへ来たのですが、最後は祈りの中散っていくしかできない、実に残念なことです。ただし、ここは私の約束の場所じゃない、こんなにも暗くて、汚い土、どこでもあるイチジクの木さえもない。私は崖の傍で生えた蔓に沿ってもっと広い場所を探す、たとえ足が滑って深淵に落ちて粉々になっても、ここより幾万倍ましに違いない!


  蔓はその立派な靭性じんせいを持って私の体をちゃんと支えてくれた、私はゆっくりと下へ進み、この先はシダーがあることを祈って、私の死者の名前をシダーの木版もくはんの上に刻んで、尊厳そんげんを残す。


  神よ!蔓の先はなんと泉水と広い空があった?太陽はまだ沈んでいなかったんだ。泉の傍に巨大な足跡あしあとがいる、怪物女の可能性を除けば、これは男の足跡に違いない。私は水分を補充した後足跡を訪ねて再び前へ進む。太陽が完全にいなくなるまでまだ少しだけ時間がある、私はほんの少しだけの体力を残し死の直前の祈りに捧げれば十分です。ここは豊かじゃないが、清らかな泉水と卵円形の石、河辺かわべに色鮮やかな花と草、無数のクチナシの木。私は自分の死者の名前をこの土の上に描いて、母の許しを得ることができる。


  だが違った、泉水はただ森と新天地のホライゾンにしかなかった!何分も歩いてないうちにラベンダーを見つけた!ローズマリーもいる!私は急に一枝を折ってその沁みとおる香りを飲む、分かれてからまだ半日も立たない私の故郷の匂い。とても考え辛いことに、先の森はなんとローズマリーの欠片も見えないとは。私はもう祖国に帰った!


  ……地図はもう必要とされていない、私は人の力で作り上げた畑の前に来た。ハーブたちは栽培さいばいされています、名前を知ると知らないハーブたくさん。でも知らない種類は東の国のハーブだけは知っています、私はまだそこまで無知じゃない。私は食糧しょくりょう、屋敷、とシダーを見つけた。


  太陽はもう去った。このままあの小屋を突入し、馬の骨ともわからない奴に見なされ、泊りたいという願いも断れた可能性が十分ある。私は一握りのパセリを洗って、齧った、口の中の匂いをそこまで気持ち悪いしたくない、でも容姿への気遣いは顧みず、分厚い木の扉を鳴らした。


  ……とん、とん、とん。総計三十回の叩く、ボリュームも上げてみたものの、なんの応答はなかった。


  私はとうとうドアを押し開け、勝手に部屋の中に入った。これ程図々しい行為はただ生存本能の指図さしず?私は死ぬほどに屋根の下に夜を過ごしたいと?自分は自分自身に恥かしくて断腸だんちょうの思いを残す!門の中の人は何時でもクロスボウを使って私を射殺できる。初めてだ、父の名前はもう族譜ぞくふの上に載っていないことに対し嬉しくさえと思った、でないとこの瞬間私が彼の名前に恥をかかせた。


  外の蔓の暴虐ぼうぎゃくと正反対に、屋内は綺麗すぎて汚れの声さえ聞こえない、そして真昼まひるのように明るい?私は頭を回転かいてんし自分の繊細せんさいな影と夕闇の空を確認した、太陽は既に落ちたが、屋内は白昼はくちゅう。ここは怪人の流浪地、人々は彼の神業ではない自然の摂理せつりを違反する行為に恐れて、誰も彼の顔を見たくない。私は真実を確かめるために来た、自然の摂理を抗う行為を学んで、祖国を救う。


  私はリズミカルな足音を残し、主人の注意を起こしたい、私の目的地のない彷徨ほうこうを終わらせて欲しい。猫の好奇心を押さえ、床以外の全てを触れないように小心者で、ここの主人を怒らせることを怖くて、外に一夜過ごすことを怖くてたまらなかった。私は主人に会った瞬間用意したプレゼントを持ち出し、彼の歓心かんしんを買わねばならない。私の時間は少ない、次のパスオーバーの前に帰れなければ!

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