第2章
緋色 赤菜
以前までの僕は、能力のこともあり、周りにバリアを張り、必要以上に近寄らず、必要以上に近付かせず! 敵を作らず適度な関係を保つ!といった感じで、どこか怯えて生活していた。
秘密は大きければ大きい程自分に圧し掛かる。でも…
嘘つきは変わらないけど、前よりは楽になったかも。
「祐、途中まで一緒に帰ろ」
原因はこの子、千年 音羽だ。
激動のゴールデンウィークを共に戦った僕達は「え?何?付き合ってんの?」と言われるほど仲良くなっていた。
付き合ってはいません。僕達友達。
「うん、でも家まで送るよ」
「ええ! いいって! ちゃんと帰れるよ」
「ガラの悪い3年生達に絡まれてたのは、どこの誰ですか?」
「ぁぅ…」
うむ、昨日の事である。
下校中に公園の前で音羽を発見したのだが、3年の先輩3名に絡まれていたのだ。
先輩3名に囲まれ半泣き状態の上「ヘイキミ暇? 可愛いね。俺達と遊ばない?」と絡まれ「ノ、ノーサンキュー、アイアム、ゴーホーム」となぜか意味不明なカタコト英語でお返事していた。
(ヤバッ! なんとかしなきゃ!)
”受けたり触れた能力を超能力として使う”それが僕の超能力。能力者相手なら音羽を助ける事は容易だろう。しかし僕は他人の能力がないと無能力者と同じだ。先輩方が能力でなく暴力で攻撃してきたらマズイ!
「ぁあ? いいから来いって!」
(本格的にヤバイ! ええい! なるようになれ!)
飛び出して行こうとしたその時。
そこにグラサンにスキンヘッドの超怖いオジサンが通りかかった。
(これだ…!)
ひとまずオジサンを追い越して音羽のもとへ!
「お、お姉ちゃーん!」
だぁあああああ! 咄嗟の事だったからお姉ちゃんの設定にしちゃったぁああああ! 僕弟になっちゃったぁああああああ!!
「お、お姉ちゃん! お父さんが映画見に行こうってさー! さぁ早く! 早く行こう! お願いだから!」
チラッとオジサンの方を見て「これ僕達のお父さんです(嘘)」アピール。
「え? 祐? お父さん…?」
混乱する音羽。
「いいから話合わせて!」
「お、おい……ヤバくね?」
先輩方が動揺している間に僕は小声で理解を求める。そしてすかさず手を握り脱出!
その後は何事もなく家まで音羽を送り届けました。
「昨日の今日だし、二人で居れば大丈夫だろうからさ」
「うん、分かった。お、お姉…ぷっクスクス…お姉ちゃんと一緒に…クスクス…帰ろうね~」
超笑い我慢してるじゃん! なんか、思い出したら恥ずかしくなってきた!
「祐の容姿なら弟じゃなくて妹でもアリかもね!」
「んなわけありません。だぁああああああもう! ホラ! 早く帰ろう!」
「うん!」
なんか前にも笑われた事があったような気がする…。
まぁ、いいか…いいんだ、いいんだ…。
そんなこんなで会話をしながら…昨日、音羽が絡まれていた公園まで来た。
先輩方は居ないみたい…良かったぁ~。
「祐、なんか音楽が聞こえる」
耳を澄ますと、公園の方からアップテンポな音楽が聞こえてくる。
「なんだろう…?」
「行ってみよ!」
「うわぁ! ちょ…!」
音羽が僕の手を握って走り出す。
公園の中では女の子が一人、ダンスを踊っていた。
「あれ、赤菜ちゃんだ!」
「…ほんとだ」
緋色
音羽と仲が良く、僕も音羽繋がりで、最近は少しだけ会話する。物怖じしない性格なのだろう。音羽と仲良くなる前にも何度か気さくに話しかけてきてくれていた。当時の僕は周りにバリアを張り、必要以上に近寄らず、必要以上に近付かせず生活していたから緋色さんから見て僕はあまり印象が良くないだろう。
練習をしている彼女の赤く少しだけ長い髪がダンスに合わせて激しく揺れている。
「ワン・ツー…ここでターン…! あれ!? 三好に音羽じゃん!」
ターンの途中で僕達に気付いたようだ、ダンスを止めて手を振る。
「やぁ、緋色さん。邪魔しちゃった?」
「いや全然! 人の目気にしながら外で練習なんてしないさ」
「赤菜ちゃんダンスカッコイイーー!!」
「ヘヘヘ! おーよしよしよし!」
目をキラキラ輝かせて緋色さんの胸に飛び込む音羽。
犬を相手にしているみたいだ。音羽の頭をナデナデ。
「ちょうど良かった。暇だろ? アタシのダンス見て行ってくれよ」
「うん! 赤菜ちゃんのダンス見る!」
「いいの?」
「おう! 感じたままでいいから、感想くれ」
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