ゴールデンウィーク3日目④
僕は超能力を使った。二度と使わないと思っていた禁忌の力を使った。
後悔は無い。音羽を守れた。それだけで充分だ。
もう彼女とは会えないだろうけど、僕はまた、超能力者の落ちこぼれになるよ……無能力者として、生きていくよ。
音羽の目が覚めたら、全部話そう。そして…それが最後だ……。
「……ん…」
私は夢を見ている…?
「気がついた?」
「……ここは? お兄ちゃん…は?」
「病院だよ。大丈夫、慎也さんは、僕がなんとかする」
あぁ、三好君なら安心だ…。
「僕はね、超能力者なんだ。“受けたり触ったりした能力を超能力として使うことが出来る”それが僕の能力。才能を喰う呪い」
三好君の超能力……凄い能力だね。
「最後に、僕の一番冴えたやり方で、きっと慎也さんを助けるから、だから……安心して寝てていいからね」
私は目を閉じる。ゆっくりと…。
「おやすみ……さようなら」
聞こえたその言葉にハッとして目を覚ました。
ここは…病院? もう、朝だ…三好君は!?
病室を見渡しても、彼は……どこにもいない……。
「さて、慎也さんが目を覚ますまでは待機だ。お別れも言ったし、これで…良かったんだよね」
音羽が再び眠ったのを確認した僕は、夜の病院の廊下を歩いている。
僕は、過去の過ちを繰り返してはならない。
僕の能力は“能力を超能力として使う”という恐ろしくチートじみた能力。
僕がいるだけでどんな能力も使い、どんな能力も超能力にしてしまう、そして能力者の意味を奪う。
能力はその人の才能を昇華させ、発現させたもの。
僕の能力は他人の才能を他人以上に使いこなしてしまう。
才能を喰う呪い…。
「このまま音羽と一緒にいたら、また失ってしまう。もうあんな思いは嫌だ。これが正解。僕は一人で、無能力者でなくちゃいけない」
外の空気を吸うため、病院を出て門の辺りまで来た所で、何やら悪寒を感じた。
「お前には借りができた」
スッと門の陰から現れたは漆黒の少女。
「バジリスク!」
「その名を知っていたか、まぁいい」
「一体何の用?」
「言ったろう、借りができた。奴が食っていた薬物、あれは“パワー”と呼ばれるものだ。取引の際には形状なんかを誤魔化す為、1本2本と数えられる。最近私のシマで馬鹿が売り捌いているらしくてな、慎也に目を付けたが、奴は実験材料にされた哀れなモルモットだったわけだ」
「実験…材料…」
「下っ端に振り回されたのが癪だが、お前達のお陰で手間が省けた。一応礼を言っておく」
「悪党の仁義か?」
「ハッハッハ! 確かに私は悪党だ。だが正義はある! 私のシマで私の正義に反した者は許さない。薬物なんて腐ったものを持ち込みやがったクソ野郎には、私が制裁を加える! お前達はもう手を引け、ここからは私の戦争だ」
そう言ってコートを翻し、彼女は闇へと消えていった。
まだ終わってない…この街に巣食う未知の薬物。その大元…。
慎也さんは、その一端に過ぎなかったのか…。
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