ゴールデンウィーク3日目

「話は明日。皆揃ってからにしよう。今日はゆっくり休んで」


と城戸先輩に言われ、僕達はしぶしぶ家に帰った。


そしてゴールデンウィーク3日目を迎えることとなった。


場所は千年さんのアパート。お兄さんが帰ってこないので、少し寂しくなったと言っていた。


「まずは私達から、事情を説明しなくちゃね」


そう言って東雲先輩はコホンと1つ咳払いをした。


「あなたたちが昨日出会ったのは、“バジリスク”。東能力学区の闇を統べている超大物よ」


「あんな…僕達と変わらない歳の子がですか?」


「ええ、そうさせているのは彼女の能力ね。魔眼・邪眼・蛇眼……。その目を見た者を殺すと言われているわ」


「目を見ただけで殺す!?」


昨日の事を思い出す。バジリスク…目を見ただけで死を与えるヘビの化け物。彼女の眼光に動けなくなったのを今でも体が覚えている。


「ただの噂よ。目に関する能力なのは間違いなさそうだけど…」


「で、バジリスクが追っている問題と、僕達が追っている問題が同じになっちゃたわけさ。情報もバジリスクが操作してたんだろうね、外に漏れないようにさ」


「その問題の中心にいるのが…お兄ちゃん……」


この一件、かなりきな臭いと思っていたが、東能力学区の闇が絡んでいるなんて、結構とんでもないな。


「まず、私達が掴んだ情報からの推測を話すわ。バジリスクが追っているのは慎也さん。しかも相当キレてる。何をやったかは知らないけど、バジリスクを怒らせる程の何かをやってしまった」


「そして妹の音羽ちゃんに電話した。でも、疑問が残るんだよなぁ~。どうして「警察に行くな」なんて言うんだろう? これじゃあまるで……」


「お兄ちゃんが、何か犯罪を犯した……」


千年さんは俯きながら言った。導かれる答えは残酷だった。


「千年さん駄目だ! ネガティブな方向に考えちゃ駄目! まだそうと決まった訳じゃないんだ。お兄さんを信じよう」


昨日から千年さんはずっと苦しんでいる。バジリスクは千年さんを人質に慎也さんを炙り出そうとした。そして導かれた推測は残酷なものだ。もうたくさんだ!


彼女が苦しむ姿をもう見たくない! 彼女には何も失ってほしくない! 失うって事は、穴が開くんだ。そして劈くような痛みと亀裂が走り、バラバラに壊してしまう。


跡形もなく……。


「こうなったら直接会うしかない! バジリスクよりも先に慎也さんを見つけて、話を聞いて僕達で守ろう! 慎也さんを救えるのは僕達だけだ!」


「ちょっと三好君、落ち着きなって! 相手はバジリスクだ。僕達には手札がない。そんな状況で先に見つけるなんて不可能だ」


確かにその通りだ。僕達とバジリスクは昨日、同じ場所で会った。


しかも、彼女の方が早く廃ビルに着いていた。


僕達は数手遅れている。それどころか手札がない。このままでは差を広げられて、どうしようもなくなる!


考えろ…何か…決定的な何か…大逆転のカード……。


静かな部屋に電話が鳴った。千年さんの携帯端末だ。


着信画面には“お兄ちゃん”と映し出されていた。

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