ゴールデンウィーク2日目
昨日と同じフォーメーション。先輩達は知り合いをあたり、僕達は足で情報を探す。
時間は午後3時を回ったあたり。おかしい…こうも手掛かりが手に入らないなんて流石におかしい…。
「捜す場所を間違えてるのか? それとも…う~ん…」
「それとも?」
ひょこっと千年さんが顔を覗く。どうやら考え込んでしまっていたようだ。心配させちゃったかな?
「妙なんだよね~、先輩でさえ情報が入らない。千年さんにかかってきたっていうお兄さんからの連絡の内容。それに警察には行くなって念押しされたんだよね? どうもきな臭いなぁ」
「う~ん、2日か3日に1回は連絡が来るの。かけ直しても繋がらないんだけどね…」
「……とにかく場所を変えよう。これだけ聞き込みして手掛かりがないんだ、きっと他の場所に手掛かりがあるはずだ」
その後も、あちこちを歩き回って聞き込みを続けたけれど、これといって手掛かりを掴む事は出来なかった。
もしかしたら東能力学区には手掛かりは無いのかもしれない。明日は西か、それとも北か…他の学区になら手掛かりはあるのだろうか…?
(あーあー! マイクテス! 聞こえてる~?)
「にょわぁああああ!」
「―――!?!?」
突然頭の中に声が響いた。城戸先輩の能力だ。テレパシーを体験するのは初めてだ。とても不思議な感じだし、突然頭に声が響いたものだからビックリして変な声が出てしまった。
そんな僕の絶叫に驚いたのか、音羽は顔を引き攣らせたままフリーズしている。
(これから言う場所に行って欲しいんだけど、二人共今どこにいるの?)
(東能力学区のオバケビル前です)
一応、オバケビルとは文字通り、やたらでかいオバケみたいなビルである。目印として充分だ。
(OK~、じゃあ僕の言う通りに進んでいって!)
先輩に言われるがまま進んで行く。時間は午後7時。日は落ちて町は電飾が眩しい。しかし、ここは違う。
僕達は小汚い裏道を歩いている。むき出しの錆びたパイプ、埃っぽい壁、押しつぶされるんじゃないかと錯覚する狭い道、じめっと絡みつく空気…月明かりが怪しく照らす暗い裏路地は、能力だ科学だと言っているこの世の中でも「幽霊が出た」と誰かが言えばたちまちにここは心霊スポットとして名を馳せるだろう。
「ぅぅ~、怖くない…怖くなぃ…」
千年さんは僕の服を思いっきり掴んで離さない。こういう場所が苦手らしい。さっき僕がビックリした声にフリーズしてたくらいだから、相当な怖がりなのだろう。
そんな彼女が独りじゃ怖くて、寂しくて、押しつぶされそうで、どうしようもなくなって勇気を振り絞って僕を頼ってくれた。なら僕はその気持ちに何としてでも応えたい。もう一度強くそう決意した。
(ねぇ、今音羽ちゃんに能力繋いだらどうなるかな?)
(卒倒するか、僕の服を引きちぎるか、僕を思いっきり突き飛ばしてダッシュで逃げるかのどれかでしょうね…絶対にしないでくださいよ!)
(ハハハ、冗談だって、あぁ…その辺、ちょっと開けた場所に廃ビルがあると思うんだけど、どう?)
(ありますね、この中に?)
(そ、この中にいるはずだよ。音羽ちゃんのお兄さん。慎也さんがね)
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