ゴールデンウィーク1日目
待ち合わせたのは昨日と同じ公園。昼の12時にそこに集まることになっている。千年さんとは連絡先を交換した。その夜かかってきた電話では、話に出てきた先輩2人も一緒に来ることになっているそうだ。
気を付けなければいけないのは、僕の正体をあっさり見破った先輩。
これ以上は知られたくない。ましてやこの能力がどんな能力なのかということは絶対に知られてはならない。知られたくはない。
公園に到着した。昨日もいたクレープ屋さんや散歩する人、座っている人、近くのコンビニで買ったのであろう弁当を食べている人……千年さんは……まだいない。ちなみに待ち合わせの時間10分前。
「まだ時間あるし、目に付く場所で待っていよう」
そういえば、昨日座っていたベンチが空いている。あそこなら分かるだろう。
ベンチに座り、暇潰しに携帯端末でゲームでもしようかとポケットに手を入れようとした時だった。
「こんにちは。待ち合わせですか?」
女の人の声。僕の目の前には見るからに上品な女性が微笑み、立っていたいた。落ち着きのある美しい声と容姿。年齢は上だと思う。高校3年くらいかな。
「ええ、そうなんです。友達と待ち合わせしてまして、えっと…もうすぐ来ると思うんですけど……」
なんか緊張する……!大人な雰囲気があるし、上品だし、美人だし、あと…Fくらい…かな? じゃなくて! いやホラ、そこまで大きい女性を間近で見たことなんてないから…ハハハ…。
「あら? 顔が赤いわ。今日は例年より暑いと聞きました。そのせいでしょうか? お水をお持ちしますね」
「いや! 大丈夫です! ホント、だいじょぶデスカラ!」
パニックです!熱暴走中!処理落ち寸前!
「三代目~、セクハラはあまり良くないと思いますよ~」
携帯端末を横目で弄りながら、少し背の低い男の子が歩いてきた。
「セクハラじゃないわよ! ロック! あ、お水持ってない?」
「持ってませんよ、あとお水必要ないです。強いて言うなら三代目がエッチぃからイケナイんです。いい加減自覚してください」
「エッチぃ!? どーゆう意味!? 私ったらそういう服を着ているのかしら? それとも何かそういう発言を? はしたないですわーーー!」
「いや、雰囲気です。そんなことより、彼が困ってますから……って聞いてないや……え~っと、はじめまして、音羽ちゃんの先輩の
「ど、どうも、
「そうよ、私は
最後だけスゴイ強調してきた! エロいと言われたり思われたりするのが嫌なんだろうな~、気をつけよう。
「それにしても、なぜ僕が分かったんですか?」
城戸先輩は、「音羽ちゃんの先輩の……」と自己紹介した。僕のことを知っているから言えることだ。
「それは僕の能力だね。解り易く言えば“コレ”」
と指差すのは携帯端末。
「出来るのは検索と通信くらいだけどね~、キミに検索をかけると、キミの情報を調べられる。通ってる学校、出席番号、机の位置、能力も…ね。通信っていうのはテレパシーさ、端末に連絡することも出来るけど、直接の方が面倒じゃないからテレパシーってことになるかな~」
「でも、僕の能力は解らないんですよね?」
「う~ん、それなんだよね~。検索かければ一発で能力階級とどんな能力かっていうのは、ある程度解るんだけどさ、キミの場合は、モヤがかかってる感じ。そう、能力として認識されてないって感じ?」
僕は僕の能力を能力として認めていない。それが幸いしたのか。
なんにせよ、知られたくないことはまだある。
「あと、セキュリティ堅い情報は調べられないし、あまり僕のこと怖がらなくてもいいからね~」
なるほど、秘密はあくまで秘密。というわけか…たしかに、その能力で何でも知れるのなら、パスワードの設定なんて無意味だ。
「あ! 音羽ちゃんだ! おーい! ココだよー!」
東雲先輩が手を振る。その先には走ってコッチに向かってくる千年さんの姿があった。
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