僕は使えない
「千年さんは、僕の能力が何なのか知っているの?」
「ううん、知らない。先輩も分からないって言ってた。普通の能力なら、大体の感じは解るらしいんだけど、三好君の能力はなぜか解らないって」
やっぱり、僕の能力は普通じゃないってことか、そう……普通じゃない。こんなのは能力じゃない。
「ねぇ三好君!一緒にお兄ちゃんを捜して!お兄ちゃん……危ない所にいるらしくて、ただの能力者の私じゃ捜せない」
「警察に届けてないの?僕なんかに頼むより警察に行った方がいいんじゃないかな?」
「……ごめん、これは私のワガママ。お兄ちゃんね、帰ってこないけど時々連絡が来るの、……絶対警察には行くなって、大丈夫だからって……お兄ちゃん、きっと脅されて……!」
泣き出しそうな千年さんの表情に、どうしたらいいのか分からなくなる。
僕は超能力者だ。その超能力を頼って僕に近付いたのだろう。だけど、僕は能力を使いたくない。使えばまた大事なものを失いそうで……。
僕は無力だ。僕は……使えない。能力も、僕自身も……。
「僕は……能力は使えない」
千年さんは黙ったままだ。
「ごめん……」
「……ぃ……おね…がい……助けて……能力使わなくて……いいから……一緒に……きて……」
「―――!?」
違う!千年さんは超能力だけを頼ってきたんじゃない!
一人じゃ寂しくて、不安で、孤独で、怖くて、泣きそうで、押し潰されそうで……頼ったんだ!
僕は、なんて思い違いをしていたんだ……!
「分かった。一緒に捜そう、お兄さん」
「三好君っ……ぁりが……とう……!」
こうして僕の激動のゴールデンウィークが始まった。
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