超能力者の噂
こんな噂がある。
能力者の中でも最も貴重で上級種に位置するのが超能力者。日本でたった10人しかおらず、その存在自体が貴重である。そんな超能力者の中に、たった一人、落ちこぼれの超能力者がいる。
「ってただの噂じゃん!そもそも超能力者ってだけで充分過ぎる位スゴイのに、落ちこぼれって矛盾するから!」
あれだ、よくある怪談話と同じだ。赤いスカートだかの女の子が窓の外に居て、その子に殺されちゃうんだけど、この話を聞いた人にも、赤いスカートの女の子が現れて殺されちゃうって話。聞いたら殺されちゃうってのにどうやって話を広めるんだろう?そもそも最初の人からどう伝わったの?なんて矛盾が残る。
「行き詰っちゃったな~」
私は今、パソコンからネットで“超能力者の落ちこぼれ”の噂について調べている。何か目的があるのかというわけではないのだけど、興味本位でここ数日間ネットの様々なサイトや書き込みを見て調べている。しかし……。
「どこも同じことしか書いてないよーーー!」
どんな能力だとか、どの学区にいるのかとか、性別すら分からないんだもん。
ネットで探すことを諦めた私は、そのままパソコンの電源を切った。そこにちょうど電話がかかってきた。お兄ちゃんからだ。
「もしもし、お兄ちゃんどうしたの?」
「すまん音羽、今日連れん家泊まることになったから、帰れないんだ」
「うん、わかった。……うん、大丈夫。ちゃんと鍵かけてるよ。……うん、はーい」
お兄ちゃん今日帰ってこないのか……最近多いんだよな~、一人で生活するにはちょっと広い部屋だから、なんか寂しくなっちゃうな。
まぁ大学生なら仕方ないか、色々先輩たちと見聞を広めているのでしょう。そうでしょう。……あ、そうだ!
「先輩だ!先輩に聞いてみよう!」
携帯端末のアドレス帳から
東雲先輩は、学校は違うが1つ学年が上の高校3年生の先輩で、先輩でもあるが、私のお姉ちゃんみたいな存在だ。
「あら音羽ちゃん。珍しいわね電話なんて」
「東雲先輩!こんにちは!……あれ?夕方だからこんばんわ?」
「ふふ、どっちも正解だと思うわよ。で、どうしたの?」
「実はですね、ある噂を調べていまして……」
東雲先輩に超能力者の落ちこぼれの噂の事を話し、調べているのだけど行き詰ってしまった旨を伝えた。
「あー、それならロックが調べてたわ。すぐそこに居るから、聞いてみるわね。ロック、前に調べてた噂話で知ってること教えて欲しいんだけど……」
端末の向こうで東雲先輩が相槌を打っている。短くありがとというと、私に知ってることを話してくれた。
「どうも音羽ちゃんが住んでる東能力学区に居て、“能力が無い超能力”を持ってるらしいわ」
「ええ!この学区内にいるんですか!?あと、分からないのはその、“能力が無い超能力”って一体なんですか?」
「私が思うに、“能力が無い超能力”つまり超能力者なのに能力が無い。超能力者と確定はしているけど、実力不足もしくは覚醒不足で能力が使えない。だから落ちこぼれと言われてるんじゃないかしら?」
「なるほど、つまり超能力者としての素質を持ちながら、まだそこまで能力が発現していない人というわけですね」
「そういうこと!でもこれも違う気がするのよね~単なる勘だけど……うん、やっぱりさっきの無し!……あ、ごめんね音羽ちゃん、先生が呼んでるみたいなの、行かなくっちゃ」
「いえ!長々とすみません。ありがとうございました!失礼します」
東雲先輩は電話を切る前に、「もし噂の超能力者を見つけて友達になったら是非紹介してね」と言って電話を切った。
「さーって!進展もあったし!晩御飯作らなきゃ!あ、でも私の分だけでいいのか……もー、お兄ちゃんのバーカ、帰ってくるなら今のうちだぞー」
なんて言ってもしょうがないか……。
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