ん
「コラッ! 人様を指差さないの! ……息子が失礼を致しまして申し訳ございません」
男の子を注意してから母親らしき女性が二人に頭を下げた。
「お気になさらないでください。それよりも『写真』って……?」
頼子は彼女に頭を上げてもらい、『写真』について訊ねてみた。
「実はこの家の下見の際に『写真』を一枚見つけまして。小学校の入学式のお写真なのですが……そこに写っていた男の子がそちらの方とよく似てらしたのでついこの子が……」
その話に二人は顔を見合わせた。
「……こっちも事情話した方がよくないか?」
「そうね……実はこの家の前の住人なんです。私たちも失礼を承知でどんな方に気に入って頂けたのか見てみたくて……」
「そうだったんですね。不動産屋さんにも言いそびれてしまいましてそのまま保管しているんです、少しお待ち頂いても宜しいですか?」
「折角だから上がって頂こうじゃないか。
うん! 父親らしき男性の言葉にエマと同じ名前の少年は素直に頷き、二人は流されるまま旧自宅にお邪魔する運びなった。そこは沖野家が居た頃とは雲泥の差の綺麗さで、通されたリビングも綺麗に片付けられている。
「お兄ちゃん、お名前は?」
「沖野エマ、そう言えばさっき……」
「うん、ボク
そんな話をしていると母親が飲み物を出してくれ、父親が封筒を持ってリビングに集まった。
「下見の日にこれを拾ったんです、中をご確認頂けますか?」
男性はエマの向かいのソファに座り、封筒をエマに差し出した。エマはそれを受け取り、言われた通り封筒を開けて写真を取り出した。
「……俺です、間違いありません」
それはエマと蕪木が一緒に写った小学校入学式の写真だった。母は体調不良が祟って入院中、父はいつまで経っても支度せず、しびれを切らして一人で学校に向かおうとしていたエマの為に蕪木が保護者として参列してくれたのだった。
「良かったです、無事にお返し出来て。お嫌でなければまたお立ち寄りくださいね」
「えっ? 宜しいんですか?」
「うん! 今度一緒に遊んでね!」
エマ少年は同じ名前に縁を感じているのかすっかりエマに懐いている。それにほだされた二人もつい約束を受けてしまい、お互いの連絡先を交換して家族交流を始めることとなった。
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