み
それからどれくらい時間が経ったのかは分からないが、意識を取り戻したエマは辺り一面真っ白な場所に一人寝っ転がっていた。
何処だここ?
エマはキョロキョロと頭を動かしたが誰がいる訳でも何がある訳でもない。
あぁ遂に死ねたか……
エマは安堵の表情で伸びをすると、子供の声で死んでないよ、と聞こえてきた。
何言ってやがんだ、どう考えてもここは現実世界じゃねぇだろうがよ
『うん、違うよ。でもあの世でもないからね』
先程の子供の声がエマの思考に会話として答えてくる。うっせぇなぁ、そう思って振り返ると自身にそっくりな子供がいつの間にか背後に立っていた。
「誰だお前?」
『僕の名前は“エマ”、普段は君の心の中にいるよ』
「あ"? お前何訳の分かんねぇこと言ってんだ? さっさとあの世に案内しろよ」
エマは苛ついた口調で子供を睨み付ける。しかし同じ顔をした子供は表情を変えずエマを見つめている。
『残念だけどそれは出来ないよ、だって君はまだ死んでいないから。それにここは俗に言う異世界とかじゃなくて君の夢の中なんだよ』
ファンタジーものでももう少しまともな台詞吐かせるぞ……エマは一つ大きなため息を吐く。
「お前ふざけてんのか?」
『ふざけてない、大真面目だよ。君が七年間心の殻に閉じこもってた間、僕が代わりに寿命を繋いでおいたから』
そうしないと僕の居場所が無かったからね。“エマ”はエマから視線を外さずにっこり笑いかけた。
『それは君も分かってた筈だよ、だって僕は君で君は僕だから』
ややこしいなそれ……
『それが事実なんだから仕方無いじゃない、他の表現法があるのなら教えてほしいくらいだよ』
「人の脳内に勝手に入り込むんじゃねぇ!」
『だから僕は君で君は……』
「もういい、それはさっき聞いた。俺が死ぬ方法は?」
『まだそんなこと言う気なの? そこまでして死にたいの?』
「あぁもうこんな世界ウンザリだ、お前が俺で俺がお前ならそれは分かってた筈だろ?」
エマはしたり顔でそう言い返してやる。
『まぁそうだね、君が戻らないのなら僕がこのまま君を“演じる”だけの話だから』
「だったらそれでいいや、どうせ死ねないなら好きにしてくれ」
エマは投げやりな口調でその場に寝転がる。“エマ”は傍まで歩み寄ってエマの姿を見下ろしている。
『それ、君の為に命を投げ出そうとしたおじさんの前で言える? 言っておくけど今かなり危ないよ』
“エマ”の一言でエマの表情が変わった。
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