ゆ
『クソジジイッ!』
エマは鍵を壊された自室に飛び込んだが、視界に入った状況に足が竦む。
『何だよこれ……』
エマの体から血の気が失われていく。これから夏に差し掛かるというのに寒気が襲ってくる。立っていることすら耐えられなくなり、ぺたんとその場に座り込んでしまう。
我ながら情けねぇな……
頭の中ではそんな自分を嘲笑っていた。しかし心の中では恐怖心が支配し、体はガタガタと震えている。
どうすればいい?
とにかく我に返ろうと必死に思考を呼び覚まそうとあれこれ考えようとするも、後が続かず視界までぼんやりと霞んでくる。
何かしなきゃ!
そうして考えた末に取った行動は、手にしていたスナック菓子を食べてビールを飲むことだった。
それだけ考えてしてることがこれかよ?
腰の立たないエマは、目の前の光景と自身のチキンっぷりにただただ笑うことしか出来なかった。頭はそこそこ冷静でいられるのに行動が全く伴っていない。そんな自分が情けなく今度は涙が溢れてきた。
ったくどんだけ情緒不安定なんだよ俺……
エマは部屋の中を凝視してビールを飲む。
それにしたって夫婦揃ってこんなかよ……?
エマの瞳に映る二つの黒い影、いつの間に準備していたのか部屋の天井に吊るされている二つの紐にぶら下がっている二つの体。それが両親であることは瞬時に判断出来た、本来であれば警察と救急を呼んで何らかの処置をしてもらうことだ。
救急搬送されたところで助からねぇだろうけどな
視界が霞む中残りのビールを飲み切ったエマ。
そろそろ何とかしねぇとな……
そう思って体に力を込めても立ち上がることが出来ない。すると下の玄関が開く音が聞こえてきた。
『ごめんください、一聖です』
『……さん?』
エマは蕪木の声に安堵した。甘えには違いないが今はどうやっても体が動かない。
『おじ……さん……』
エマは再び溢れてくる涙を拭おうともせず蕪木を呼び続ける。本人は叫んでいるつもりなのだが、腹に力が入らず囁き程度の声しか出せなかった。
『おじさん……!』
『エマっ!』
やっと届いた……
朦朧とする意識の中蕪木の足音が段々と近付いてくる。
『エマっ!』
二階に上がってきた蕪木は虚ろな甥っ子ノ姿に驚きの表情を見せた。
『
その問いにエマは部屋の中の物体を指差し、へらっと笑って意識を失った。
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