タンスの角に小指ぶつけたら覚醒しました。
小さな巨神兵(S.G)
TKBK(Tansunokado Koyubi Butsukete Kakusei)
必ず、かの邪知暴虐の
タケルには経営は解らぬ。
だがしかし、いくら何でも週120時間連続労働はやり過ぎだと思った。
せめていったん家に帰らせてくれよと思った。
だがタケルには反逆をする勇気がなかった。
また、一人暮らしであるので話し相手もいなかった。
そのため一人酒を飲んで壁(材質:モルタル)に話しかけるほかになかった。
そうである、タケルはあわれなヒトである。
タケルは昔から数々の災難にあってきた。
二歳の時に当時の自宅が火事で全焼したのを皮切りに、交通事故や親の破産、落雷の直撃など、考えうる全ての災難を経験してきた。
とりわけひどかったのは、十三歳の時であろう。
「しょっかあ」と名乗る謎の組織にさらわれ、肉体改造をされたのだ。
そして世界征服のための兵士として使われそうになったが、肉体改造で与えられたはずの特殊能力が顕現しなかったため、失敗作とみなされ解放されたのである。
中には、そんな様々な災難の中でも生き抜いてきたのだからある意味幸運じゃないかと言う人間もいたが、タケルからしてみれば幸運な人とはそれすなわち災害にそもそも巻き込まれない人間のことだろうと思うのであった。
その日も彼は一人、壁に過去の恨みをぶつける、虚しい晩酌を続けていた。
「畜生、あのくそ専務め。いつかぶっ殺してやりてえ……。」
その日は、長らく進めていた巨大プロジェクトが専務のミスで失敗した後であったので、いつもよりも速いペースで酒が進んでいた。
当然それに比例したペースで酔っていくのであった。
「ういい…。くっそガキ共があ…おれをぉ…なめやがって……。」
ついでに、近所のクソガキたちが彼の家のポストに犬の糞を入れたということもあったので、恨みの力をもってして、これといったつまみも無しにビール(500ml)十缶をたちまちの内に空にした。
世の中にはこれ位飲んでも全く酔わないという酒豪もいるらしいが、残念ながらタケルは酒豪ではない。
むしろ酒には弱い方の人間であった。
というわけで、それはもう大変な酔い様だった。
そろそろ時間も遅くなっただろうと思い時計を見てみるものの、その針がひん曲がって見え、どの文字を指しているのかわからないほどであった。
「そろそろねるかうぃいあえwちお………」
タケルはろれつの回らない口で、寝るという旨の独り言を言うと布団を敷くべく押入れのほうに向かおうとした。
がしかし、足元がふらつき立つこともままならない。
「なんや回っとるなわすぁvg」
視界が回転する中、タケルはカンだけを頼りにふすまのほうに歩いていく。
泥酔しているとはいえここはタケルの都(六畳)である、一応どこに何があるかの感覚くらいはわかっている。
がしかし、彼は泥酔していた。
「のわあああっ!」
平衡感覚が狂った状態で無理に立とうとしたため、思いっきりこけ―――――、
――――タンスの角に、脚の小指を強打した。
「いがあああああああっ!!!!!」
タケルの悲鳴が六畳間に響き渡り――――――――
どおおおおおおおおおおおん、と音がして、六畳間の天井がぶち抜かれた。
*
「えっ………?」
季節は冬。都会の明るい夜でもオリオン座だけはきれいに輝いて――――じゃない。
「なんなんだこれは――――――――――――――――――――っ!!!!!!」
俺の背中から、セカンドインパクト時のアダ○みたいな、オレンジ色に発光する羽が生えてきていたのだ。
ええええええええええええええええええええええええっ!!??である。
なんでこのタイミングで覚醒しちゃってんの!?
唐突過ぎない!?劇的かよ!ビフォーアフターかよ!
ほっぺをつねったら痛い。どうやら夢ではないようだ。夢ではないなら……これは今、現実に起きていることなのかっ!?
どう考えても物理的におかしいのに!?
だがしかし、
「ま、そんなこともあるか。」
そこはさすが現代っ子、すぐに受け入れる。……伊達に異世界転生系のラノベとか読んでないんすよ。そこらへんはすぐに順応できるんすよ。
さーて、
「課長殺しに行こーーーーーーーっと!」
俺は翼を広げ、夜の大空へと飛び立って―――――――――
*
某国:某軍隊:某基地。
「レーダーに反応あり!識別信号不明!未詳機です!」
「なにいっ!?ただちにスクランブル発進だ!」
「了解。ブラボーツー、こちらCP。○○市上空に不明機あり。直ちに発進!」
「了解、発進します。」
かくして、夜空に一機の戦闘機が飛び立った。
数分後、無事に目標を撃墜し戦闘機が舞い戻ってくるのだが、それはまた別のお話。
タンスの角に小指ぶつけたら覚醒しました。 小さな巨神兵(S.G) @little
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