第5話

 私には、遠い昔の話になる。鴨原にいた田中君は、店を開いて宗教の世話になってしまい辞めてしまったとも聞くし、焼肉屋の富士吉は、マスターが亡くなり、長男は生活保護を受けながら精神病院へ入っていると聞く。

隣の口うるさい婆ちゃんは、寝込んでいると聞き、藤田家の投手は九十一歳で死に、新宮家では婆さんが死んだと聞く。


 昨年は、一夫さんが六十一歳で亡くなり、功収さんは、七十二歳で亡くなり、今年入居した関さんは、

「俺は酒を飲まない。周り中の友人が酒の為に何人亡くなったかわからない。」と言っていた。

 彼は心臓と肺が悪い。禁煙しようと思っているがなかなか止められないと聞く。うちの嫁もタバコの量を増やしている様子だ。

それに比べ、知行はタバコもやらず酒やビールも飲まない。彼は本当の苦しみがやってきた時、私のように酒や女を求めず生きていけるのか不安である。

 幸穂と志歩は、真面目に生きて行っている様子である。


 あのきつい嫁さんは、今度は弟が言うように実母の面倒を見るようになるだろう。

彼女が最後に私に言った言葉は、「私の父のように、お父さんも無色で年齢を重ねていくんだろうか。」である。


 私は、父と連れ合いに、最悪の行き方しかできなかった。

私は私で、インターネットの仕事をS君という二十七歳の若者に任せている。


 「あー、あー、私の人生はなんて不幸なものであるのであろう。」「もっと喧嘩をしていけばよかった。」

その言葉が、嫁の最後の言葉になってしまった。血液がB型の人間である。


嫁の前につきあっていた女人は、「私は、B型の人間とは一切付き合おうと思わない」と言っていた。

知行は、自分がB型で、嫁との会話で「どうせB型人間が性格が悪いんだから!」と言っていた。


 私の嫁は、父親と喧嘩ばかりしていた。

その上、己の実家の嫁さんを嫌っていた。

「嫁さんは、サラ金の借りを返さない。」と言って、私の客のKさんのその嫁さんの借金調査を頼んでいた。

 しかし、思ったより借金がないとわかると失望していた。

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